朝起きたら知らない男の部屋にいた。

 コンコンと叩かれる。


「てください。」


コンコンと叩かれる。


「起きてくださいイリーナさん。」


何も見えない。そう思っていると頭にかけられた布を取られる。


「すいません。布かけたままでした。」


目の前にレオンがいる。知らない部屋だ。


「あれ?なんで?なんでレオンがいるの?ここはどこ?なんで男の人の部屋に?」私は混乱する。


「イリーナさん、一番大事なところを寝たら忘れるのはどうかと思いますよ?」レオンは呆れながら言う。




「ほんとごめんなさい。寝起きは頭ぼーっとするの。ごめん。」色々と思い出した私は謝る。


「朝弱いんですね。こちらこそ失礼しました。」レオンも謝る。


「何も謝ることないのに。100%私が悪いから!」私は全力でフォローした。




「それなら、今日はなんの日か覚えてますか?」レオンは尋ねてくる。


「さっき恥ずかしいこと言っちゃって目が覚めたから大丈夫。ぺ…」


「違いますよ。前の下級パーティーの人たちと六層の謎の穴攻略会議がある日です。」


「脳に栄養が足りない。朝食を食べよう。奢るよ。」私は手招きをする。


「お金は火事で無くなったんでしょ?」


「そうだった。」


「早く朝食を食べましょう。」レオンは私を見て朝食の必要性を学んだようだ。




「それにしても、上級魔術をくらって家ごと4階建ての家ごと崩れて火事が起きてそれでも気づかず寝てるなんて、すごいですね。」朝食を食べながらレオンは驚く。半分引いている。


「鈍感ってわけじゃないの。スキルのおかげだから。」私は誤解を訂正する。


「え?イリーナさん、いつもあれで寝てるんですか?」レオンは顔を青くする。


「そうだけど?」


「え〜」


「マットレス買わなくてもいいから便利よ。私が何よりも固くなれば万物がマットレスになるの。」


「寝心地悪くないですかあれ?」


「いや、守られてる感があるから安心してぐっすりなの。まあ、自分で守ってるんだけどさ。」


「まあ、最強の寝床なのは間違い無いですね。」レオンは苦笑いする。




「なんか、イリーナさんって面白いですよね。最初に防御力9999のタンクって聞いた時どんないかつい人が来るんだろうと内心震えてたんですけど、実際会ってみると想像よりすごく小柄で可愛らしい人が出てきてびっくりしたんですよ。」話の流れでパーティー結成前の話になる。


「可愛らしい?言ってくれるね。」私は喜ぶ。


「本当ですよ。実際にはすごく優しくて頼りになって経験豊富で色々知ってて、違う職業の武器の選び方のアドバイスをくれたり武器にもなりますし。」最後は余計だが、ここまで褒められると嬉しい。


思わず頬が緩むが、そういえばこいつ私の脚を持って振り回すじゃないか。


でも、こういうときにベタ褒めで気分を良くさせてくる。


はっ、これはDVの手口なのでは?私はハッとする。しかし、しばらくそんなことを考えていると


「じゃあ、お金払ってきますね。」レオンはそう言って席を立った。


やっぱりこの子いい子だ。私は再確認した。

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