夜 ネオン 渚

門前払 勝無

第1話 ビルの谷間に鳴る銃声

 空気には味があるー。


 好きな味の空気を放っている人に興味というスイッチで本能という機関部が行動という歯車を動かす。


 そして時が動き出すのである。


 透明に見えるモノも幾つもの層になることで本当の色に気付くー。


 花屋敷の見える交差点に女子高生が三人通行人にティッシュを配っている。俺はそれを煙草の煙を空に散らしながら見ている。彼女達は学校にも真面に行っていないのに制服を着ている。肌を焼いてカラフルなメイクをしてやたらと元気にティッシュを下町のオッサンおばちゃんに配り捲っている。


 金髪のシュシュをたくさん腕に巻いているのは“アニキ”の娘の渚でその他は渚の友人である。俺は使いパシリだからアニキの娘のバイトの護衛である。


 暑苦しい東京の夏はガリガリ君に限る。と、三人に差し入れをファミマに買いに行ったー。


 その夜であった。

 アニキが殺されたのである。

 殺したのは雇われた殺し屋らしいのだが珍しく女であるらしい。俺は世話になったアニキが死んでも悲しくは無かった。アニキはいつも言っていた。


“誰かが殺されたらなぁ時代のページがめくれただけだから、次のページを前のページよりも面白くしていけよ”


 俺は塞ぎ込んでいる渚の横で煙草を吸った。

「アタシにも煙草ちょうだい」

「いいっすよ」

俺は渚にキャメルを一本あげた。


 屋台船がユラユラと水面に揺れている。


続く

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