第22話 日々これ精進

山の中に一人ポツンといると、とてつもなく寂しい。

満点の星空も、小川のせせらぎの音も、もちろんフクロウの鳴き声も。

都会の雑踏の中で生活していればこそ、星空を見て一人キャンプなんて思うのである。


その寂しさは、傷口をガーゼでこするような・・・声なき声が心から湧き出てくる寂しさだ。

だったら早く山暮らしをあきらめて、都会へ逃げかえれば良いと思う、しかしそれはしたくないのだ。


そんな日々の中で、かすかな抵抗を試みる。

そのひとつに料理があり、これは上手になると充実感が出てくる。

そして、美味しいと楽しいも付いてくる。

この充実感こそが寂しさから一時解放してくれる。


野菜やお肉などを買うと一人では食べきれない量になる事が多い。

そこで、同じ料理を何度も工夫して作ると少しづつは上達する。

そして上手くいくと美味しい思いができるし、充実感も得られ一石二鳥だ。

また、上手くいかないと、それはそれでめらめらと挑戦する意欲がわきあがってくる。


そんなこんなで寂しさから一時の開放を求めて料理をいそしむ。

そんなある日、ちょっとした体の異変があった。

足首が痛くなったり足がむずむずしたりなど違和感がした。

すぐにネットで調べてみると、どうやらプリン体なる物を取り過ぎているようだ。

成人病予備軍の私には追い打を掛けられた感じだ。


考えてみると、料理の上達や経済的な効果も考え、同じ素材の料理を何日も食べ続けていた。

貝柱や手羽先などを始めプリン体を多く含む食品を晩酌と一緒に毎日食べていたようだ。


「ううん、プリン体か!」今後改善しないとまずいな、そう思いながら寝た。

すると、夢にプリン体、いやプリン隊なる物が出て来た。

頭にプリンの形のヘルメットのようなものをかぶった軍隊が進軍ラッパの音とともにこちらへ向かって「ザッ、ザッ、ザッ」っと進軍して来た。

しかもサンダーバードのテーマ曲に乗って。


そして私を取り囲むと、「君の健康はすでにわが軍の手の中にある、おとなしく降参して成人病予備軍から肥満隊へと入隊しなさい」

決断を要求され私は汗をかいて目が覚めた。「ふう・・」

なんて訳の解らない夢だ、しかも適当なイメージを張り付けたいい加減な夢にあきれ果てた。


自分のボキャブラリーとイメージの貧困さが生んだ、限りなくダサい映像作品だ

この夢の話は恥ずかしくて決して人には言えない、そう思った。

しかし、実際問題として食生活の改善はしなければならなそうだ。

少しばかり料理が出来るようになった気がして得意になっていたようだ。


健康から考えるとあまりにも甘すぎた。

また、一から出直して食を構築しなければならないようだ。

寂しさは人を錆びさせ、健康を奪っていく物なんだと痛感する。

やはり日々精進するしかない。


仙人への道は果てしなく遠いのだ。

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