第17話 濃厚な近所付き合い

自宅から百メートル程離れた所に、おじいちゃんが住んでいる。

いつも大きな黒い犬を連れて散歩するので、必然的に一番話す相手となっている。しかし方言が強く話しの内容は三割程しか解らない。話しの半分以上が下ネタなので、解らなくても笑って対応している。しかしパワフルだ私には下ネタを言うほどの元気もなく、だからこそ落ちぶれてここまで来たのだ。


そのおじいちゃんの話だと、この地区は昔林業が盛んで良い材木が有ったらしく、一本木を売れば一カ月食べて行けたそうだ、


そして、養蚕も盛んだったようで、どのうちにも蔵がある。そんな豊かな所だったらしい、しかし時代は変わり若者は仕事を求め都会へと出て行き、高齢者の残る過疎地になってしまったようだ。

それでも三十所帯程住んでいる、殆ど七十歳以上の方々が住んでいる。

そんな中に引っ越してきた私は、落ちぶれてきた先で若手となってしまった、五十も半ばなのに。


地区の区長さんから、「今いくつだい」そう聞かれ「もう五十も半ばです」と答えたら、「何だ、まだ若造じゃないか」と言われた、それ以来、私はこの地区の使い走り的なポジションとなった。


集会や地区のお祭り等では率先して動かないといけない、しかも立ち位置を間違えると、なにをそんな偉そうな場所にいるんだと怒られる。しかも方言で話が解らず考えていると、さっさとやらないかと怒られる。


月に一度は集会があるので、その一週間程前からちょっと憂鬱ななったりもするが、悪い事ばかりでは無いので、多少の我慢は必要だろう、ただ良い加減になるにはとてつもなく時間がかかりそうだ。


それでも野菜や鹿の肉等色々ともらったりする、しかしお返しの方法が解らない。

そんなある日スーパーで煎餅や最中などの和菓子の詰め合わせが袋に入った商品を見つけた、私はこれだと思い数袋買って何か頂いた時のお返しとして渡している、そのほかはお茶のペットボトル等も買ってワンパターンにならないように努めている。


田舎の人間関係はなかなか難しい。

近所のおじいちゃんは犬の糞の始末などはしない、しかし困る人も殆どいない。

私の家の庭には良くその犬の来た痕跡が残っているが、文句など言えない。

現実と言うものはそんな物なのだと、自分に言い聞かせ納得する。


かなり時間が経った頃おじいちゃんの話が大分理解できるようになってきたが、

内容は聞いてはいけないような下ネタだった。

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