第13話 冬の洗礼

引っ越ししたのは秋だった、山里の秋は寒いと思った。

しかし、冬は予想を超えて寒かった。


冬になったある朝、リビングのテーブルの上のお茶が凍ってる、絶句した。

室内のお茶が凍るとは考えてもみなかった。

さっそく温度計を買ってきて家の中や外に置いてみる。

すると、外はマイナス10度になっている、室内もマイナス4度くらいになった、「ここはどこ、東北?」そんな事を思った。


幸か不幸かリビングは広い、買ってきた小さい石油ストーブでは全く暖まらない。

仕方なく、東京で使っていた電気ストーブもつけた。

それでも寒い、これでは電気代や灯油代がかかりすぎる、先が思いやられる。

さらに、お風呂のスイッチの表示が点滅している。

説明書を読むと、凍結防止のため浴槽に水を入れた状態で、定期的に点火し対流させる、それを寒い間は続けるようだ。

なので、これも灯油をそれなりに使う。しかし凍結して壊れるよりはましだろう、そう納得する。


たくさんの布団に包まって寝てもちっとも暖まらなかった。

考えてみると、広い冷蔵庫の冷凍室で生活しているような物だ、温めても冷蔵室になるだけ、おおむね冷蔵庫からは出られない生活だ。


そんなある日大量の雪が降った、家から出られなくなった、冷凍ストッカーにある物を食べて生きなければならない。

それに追い打ちをかけるように停電になった。電気ストーブが使えない。

しかもストッカーの冷凍食品は溶けてしまう。

仕方がないので、外に出て雪を掘り冷凍食品をうめて保存した。

そして数日が過ぎ、食料も尽きてきたころ除雪車が通り電気もついた、助かった。

田舎をなめてはいけない、つくずくそう思った。


それから天気が回復すると、ホームセンターへ行き畳とコタツを買ってくる。

2センチ程の薄い畳だが、一階の一番狭い部屋に敷き詰めカーペットを敷きコタツを置いた。

部屋を閉め切りコタツに入るとかなり暖かかった。

どうやら、冬の間はこのコタツのある部屋と日当たりのよい書斎で暮らすしかなさそうだ。


広い家も考えものだ、しかも安普請だからこんなことになっている。

家賃が安くて改造も好きにやっていい、そんな条件だったのが納得できた。

「改造してもいいよ」ではなくて「改造しないと大変だよ」どうやらそんな事だったようだ。

改造した、なんちゃって和室、のコタツの上にパソコンとミカン、それが冬の定番となった。


外を眺めると里山の雪景色はとても美しい。

ふとゴキブリが出ない事に気がついた。ゴキブリの住めない地域に私は暮らしているようだ。

「なるほど……………」納得!

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