第2回 梶野式台詞


台詞の間に空行を入れるのが嫌いです。

のっけからすみません。

けれど、偽らざる本音です。


段落ごとに空行を入れるとかはいいんですよ。

梶野も場面転換や、軽い読みものではやります。

適度にメリハリがついて読みやすくなりますから。

この雑話も、そんな形式ですし。


でも、台詞ごとに空行入れるのは別問題です。

会話が間延びして、水で薄めたジュースのように感じます。

梶野的には、はっきりと害のある表現です。

ウェブ小説に慣れないせいかと思いましたが、もう二年いますからね。


ウェブ小説にはウェブ小説の表現がある。

メイン読者はスマホなので、空白を増やして読みやすくすべき。

その言い分はまあ、わかりますよ。


おっさんの梶野は、当たり前のように老眼です。

集中力もなくなり、ぎっちり詰まった文字に「うっ」とかなりがちです。

目に優しい文章が欲しいのは、むしろおっさん側ではないでしょうか。

それでも台詞の空行は許せない。

許容はできないけど、空白は欲しい。


こんなおっさんニーズから生まれたのが、「梶野式台詞」です。

やり方は簡単。以下のルールに従うだけです。


・台詞内で行をまたがない。一文一行。

・改行を多用して台詞をブロック状にする。

・どうしても入らない説明台詞などは、地の文に回す。


拙作「神風VS」より例を出しますと。


 「人外って、どういう意味ですか。

  人ならぬ妖怪や魔物が、本当に存在すると?」

 「うーん、そこはオレも半信半疑なんだがな。

  ただ、《人間以外》は見たことないが、《人間以上》は何度かある。

  畔が全員そうだからな。《半妖》程度はゴロゴロいる。

  思うに、人間離れした能力の持ち主が迫害され、行きつく場所だったんだろ。

  それが歴史の陰でひたすら《種の改良》を続け、現在に至ると」


みたいな感じ。


見ればわかりますが、この書き方は漫画の吹き出しに似ています。

漫画好きの梶野は、吹き出しに凝縮された台詞のパワーに注目していました。

パワーワードとか、思わず使いたくなる台詞ってありますよね。

厳しい文字数制限下だからこそ、あれらは生まれたのだと私は思います。

(長文の名台詞もありますけどね。ジョジョとか)


台詞はキャラの生命線なので、ここの改革は重要です。

ラノベの台詞は自然体というか、だらだらと長い傾向があります。

なので吹き出しをお手本に、きびきびと台詞を回せば、それが個性になる。

何よりすっきりと読みやすく、台詞を吟味するくせがつきます。


この吟味する習慣というのが、想像以上に効果大でして。

慣れるまで大変ですが、台詞以外でも応用が効くんですよ。

例えばこの創作論も、梶野式の応用でほぼ全文一行です。

梶野が文字数制限のお題が得意なのは、間違いなく梶野式のおかげです。


逆に梶野式の欠点ですが、まず文字サイズの変更に弱いですね。

行ギリギリの台詞が二行にまたがり、ぐちゃぐちゃになりがちです。

ある程度、余裕を持たせるのが理想ではあります。

あまりないケースだと思いたいですが。


もう一つは、書式の変化に弱いこと。

スマホで読む際や他サイトに転載する時など、行文字数に合わせた調整が必要になります。

あとは書籍化した時とか。

心配ない? それはそうかもw


ということで、梶野式台詞の紹介でした。

一年ほど前に発明して以降、梶野は全作品でこれを適用しています。

「神風VS」も梶野式ですが、後から直したので、抜けがあれば教えてください。


梶野式に特許はないので、使用はご自由にどうぞ。

新しい発見があるかもしれませんよ。


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