25‡

 GPSを頼りにRがいると思われるネットカフェに足を運ぶと予感がしたのだろう。警戒するように出てきたRと目が合う。「ゲッ」と嫌そうな顔をし逃げていくも先回りしていたBが両手を広げ邪魔をする。


「奇遇ですね、Rさん。何処に行かれるのですか? ほら、私達ある意味“駒”ですから仲良くしましょうよ。ね?」


 同性愛でもなく単に人に引っ付くのが仕事の彼は嫌がるRを抱き締めると「アイツに比べたら怖くないよーだ」と舐められるBの姿に和也はゆっくり歩み寄る。Rの背を取り、静かに口を開く。


「”アイツ“とは誰のことだ?」


 静かかつ怒り混じりの声にRはゆっくり和也を見て固まる。口をパクパクさせるも言葉は出ず、BはビビるRにニコリと笑っては「また自警で煽ってるんですか? 誰をとは言いませんが一応“私達はコマ”なので居なくなられては困ります」と叱る言葉を発すると、どうやらRいわく“自警”ではないらしい。


「ゲームで煽られて腹立って、ネットカフェ調べてボコボコにしただけ。ついでに推しのイベントとグッズやってたり、買ってたりしたから……その」


 という、幼さゆえの言い訳に和也は溜め息をつく。”ゲームごときでか“と突っ込みたくなるもRはeスポーツが好きらしく度々参加しているとか。それぐらいは和也とBも理解していた。


「では、この汚い視線はどなたでして?」


 Bの言葉にRは無言。


「あーはいはい。これで確信持てました。コイツですね」


 Bは和也にチクるように指差すと「ギャーヤメてー」とBの指を折る勢いで逆にやる。「何してるんですかーおバカ!!」と突然始まるコントに和也は静かに溜息を吐いては「殺されたくなかったら話せ。さもなくば“」の一言でRは目に涙を浮かべては「ヤダヤダ!! 捨てられんのやだ!!」とごね始める。


「じゃあ、言え。このクソ」


 和也はスマホを取り出し警察署に通報するふりをして耳に当てるとRが早口言葉で言う。


「晒しを成敗してたら……なんかジブンの配慮不足だけど写真で場所把握されて追い回されてる状況で。さっき推しと写真撮ったの投稿したから余計に」


「変な輩に絡まれたってことか……。そいつらクズだったりするか?」


「えっあ……まぁ。SNS晒しでほざいてるぐらいかな。対してプレイヤースキルねぇーのにゲームやろなよ、的な。煽り常習犯かな」


「胸糞悪いな。ゲーム初めたら皆初心者。初めから上手いやつなんていないだろうに。あれか、表では何もできないけどクズが裏で堂々と雑魚に鬱憤晴らしてるヤツか。なるほど……なら、成敗したくなる」


「でしょでしょ。気持ち分かってくれるよね?」


「だからと言って仕返しみたいにやるのはな。まぁ、やりかねないのも分かるがこちらの関係もある。行動するなら考えて行動してくれ。というわけだ――B、悪いが先にクズの回収を頼む」


 和也の言葉にBは「仕事道具持ってくるんで。Fの所にクズ共誘ってくれます?」とロッカーのキーを指に絡め回しながらBが歩き出す。


「へっやだよ。せっかく巻いたのに」


「誰のせいで仕事詰まらせて遅れ取ってるんでしょうね?」とRの小さなワガママにBは釘を刺す。Bは和也とすれ違う間際「マジなの持っていくんで悪しからず」“半ギレ”な空気を漂わせる言葉に「火薬少なめに」と返すも無言で「では、十分後に」とBとはそこで別れた。


「あの……ジブン、怒らせた? あの変態……」


 Rが推しグッズで顔を隠しながら話しかけてくるも和也は軽く蹴りで返す。


「ごめんなさい、でも……許せなくて」


「お前の働き次第では処分を早める」


「やだ、それは絶対ヤダ!!」


「なら、呼べ。どうせSNS監視されてるなら【近くにいたら○○でサバゲーしよう】とかやって募集かければいいだろ。負けたら奢り付き、なんてな」


 和也は黙るRに目を向け、グッズを取り上げ続けて言う。


「こっちの要望に答えられなかったら――分かるよな? それが嫌なら動け、いいな」


「ふあーい」


 指でトントンッと画面を叩きながら呟くRを背中から覗くと表では楽しそうに写真付きで投稿していたが、ダイレクトメールを開放しているせいか名指しの人に特定で【煽り文】を送っていた。


「爆笑……なんだが」


「こう煽らないと来ないっしょ。頭硬いから」


「さぁ、どうだか。煽りで俺に引っかかったは誰だったかな。おかしい、近くにいるのに覚えてない」


 和也はRを軽く煽り歩き出すと「はぁ? なにそれ、おい、待て!! この……」と【とある関係】で口答えできないRを見て和也は嗤う。

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