薔薇の名前、ハロウィン THE END

 今日は映画を2本見た。


 基本的に1日に映画館で2本見ることは少ない(2本立てやオールナイトを除く)のだが、先日書いたように、今見なければならないものが異様に立て込んでいる。いずれも大作ではないので、何週もかけてダラダラ見ていると、最悪上映自体が終わってしまう可能性まである。背に腹は代えられない。


 1本めは『薔薇の名前』レストア版。1987年、ショーン・コネリー主演。以前DVDで見ているが劇場で見るのは初めてだ。

 14世紀の修道院が舞台で、老人が過去を回想するモノローグから始まるので、最初は「重厚な文芸作品なのかな?」とやや怯むのだが、開始5分でショーン・コネリーがある仕草を見せる。もぞもぞと落ち着きのない弟子に対して「自然の欲求に逆らうな。廊下を進んで右手に曲がり……そこが目指す場所だ」「でも先生、この修道院には初めて訪れたのでは?」「さっき修道士がそこに駆け込んで行くのを見た。出てきたときにはスッキリとした顔をしていた」


 シャーロック・ホームズ仕草だ!!!!


 そう、この映画、謎解きエンタメ作品なのだ。開始5分で映画の方向性を示してくれる親切設計。犬神家の一族パロディ(たぶん)もあるぞ。

 ショーン・コネリー演じるウィリアムはアリストテレスを信奉していて、とにかく知的好奇心が旺盛。その様を非常にチャーミングに演じていて、共感しつつもそのおかしみに笑ってしまう。大好きな作品だ。

 あまりスクリーンが大きい劇場ではなかったのが残念だが、劇場で見られてよかった。



 2本めは新作『ハロウィン THE END』。2018年版の『ハロウィン』、その続編『ハロウィン KILLS』に続く完結編だ。


 そもそも『ハロウィン』は1978年、ジョン・カーペンター監督、マスクをかぶった殺人鬼マイケル・マイヤース/ブギーマンの恐怖を描いた名作ホラー映画である。

 2018年に制作されたデヴィッド・ゴードン・グリーン監督版は1978年版の「正統な続編」で、1978年版の主人公ローリー(ジェイミー・リー・カーティス)とマイケルの40年後(まさに2018年)の対決を描いた。これが本当に面白い。殺人鬼系ホラーとしての怖さもしっかりありつつ、バトルものとしての面白さ、オリジナルにオマージュを捧げつつも進化させた演出など、完璧なホラー映画のひとつと言えると思う。

 最初から3部作という話は聞いており、2021年に「KILLS」が公開される。前作の翌日から始まるその話は、ブギーマンの恐怖よりも集団心理の恐ろしさみたいなところに比重を当てている、が、ストーリー的にはマイケルに始まりマイケルに終わるところがあるので、なんとなく中途半端な印象だ。マイケルの殺害方法(マイケルといえば包丁で一発サクッなのだが)も「あれ?」というところもあり、正直に言うと前作には遠く及ばない。中だるみといった印象があった。


 そして今回の「THE END」である。前回でだいぶテンションが下がっていたのであまり期待はしていなかった。1本めがとにかく面白かったので、その物語の結末をきちんと見届けよう、たとえ面白くなくても……という心づもりで劇場へ。


 見終わったときの、わたしの情緒はぐちゃぐちゃだった。

 いや……なんだろう? 名作、傑作! とは言えないと思う。しかし、面白くないかと言われるとそういうわけでもない。少なくともKILLSよりは遥かに面白い。1本めに比べるとエンタメとしては劣る。そしてKILLSに引き続いて、それ、「ハロウィン」としてどうなの? という部分もある。

 でも一方で、「マイケル・マイヤースに関わってしまったハドンフィールドの人間たちのドラマ」としてはかなり誠実だし、切り口としても、ただこれまでの反復にならないためにはそういう切り口はありだな、と思えた。これまでの「ハロウィン」の物語では語られなかった、でもその世界にしっかり向き合えば、確実に存在する人々の物語。

 そしてマイケルとローリーの行き着く先。終わってみれば、そう終わらせるしかないよな……と思う。スッキリはしない。スッキリする終わり方はローリーやハドンフィールドにはありえないんじゃないか。うーん……。

 やっぱり「どうなの?」という部分がかなり引っかかって、作品に対してノリノリで見ていたわけでもなかったのだが、終盤はなぜか感極まってしまいボロボロ泣いていた。別に泣くような展開ではない。自分でも「なんで?」と思いながら泣いている。なにこれ。どういう気持ちになればいいの?


 そもそも「ハロウィン」を「終わらす」という企画自体が無理があると言われればそれはそうなんだけど、「終わらす」ことを目的とする、という前提では最善を尽くしたのではないか、とも思う。

 う〜〜〜〜ん、何この気持ち? 本当にちょっと持て余しているので、早くみんなTHE END見てください。

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