第14話「黄昏の王室」

「嗚呼、素晴らしい……何て素敵なんだ……!」


 黄昏時の美術室で、一人の少年がキャンパスに筆を走らせる。モデルは同じクラスの女生徒。普段あまり絡まない二人であるが、この日は違った。狂ったように笑いながら絵を描く彼に対して、少女は動揺する処か微動だにしない。


「………………」


 だって、もう死んでいるのだから。

 先ずは首を絞められたのか、少年の手形がくっきりと残っており、その上で天井からロープで吊るされている。死んで間もないらしく、死後硬直は起こっておらず、手足がダラリと垂れ下がり、目や舌が飛び出していた。おまけに屎尿まで漏れている。余程苦しかったのだろう。

 こんな有様の何処が美しいのか……それは少年にしか分からない。


「芸術は、絞殺ダァ!」


 だが、少年にとってこれは芸術に他ならないようだ。


「さて……それじゃあ、今日もお祈りしよう」


 そして、少年は祈る。居もしない神ではなく、自分だけの天使様に……。


「天使様、天使様、今日の供物をお受け取り下さい」

『有難く頂こうか』


 天使がそれに答え・・・・・・・・少女の遺体は・・・・・・忽然と消えた・・・・・・


 ◆◆◆◆◆◆


「………………」


 その日、説子せつこは珍しく登校していた。特に理由はない。何となくやって来て、何処となく教室に居る。ただそれだけである。猫だからね。


「……ねぇねぇ、聞いた? “天使様”の話」

「えー、何それー?」


 そんな彼女の耳に、クラスメイトの噂話が入ってくる。


「何かねぇ、美術室に一人で待ってると、天使様が現れて、楽園に連れてってくれるんだって。聞いた事無い?」

「知らなーい。私が聞いたのは、“美術室の殺人鬼”だよ。誰も居ない美術室で独りで居るような奴は、芸術作品・・・・にされちゃうんだってさ」

「何よ、その“切り裂きジャック”のパチモンみたいな奴。本人が聞いたら怒るんじゃない?」

「その本人が死んだって噂もあるよ?」

「うーん、何だかよく分からないわねー」


 統合すると、「美術室には“天使様”なる救世主と“殺人芸術家”という狂人が入り浸っているから、一人で行くなら気を付けろ」という事だろう。どっちなのかはっきりしろと言いたい。というか、存在自体が怪しい天使様ならまだしも、殺人鬼が常駐している事に違和感を持たないのが不思議だ。いい加減、慣れてしまったのかも。


「………………」


 ともかく、放置するには勿体無い話なのは確かである。早速里桜に報告するとしよう。


「えっ、嫌だよ、面倒臭い」

「おい」


 ……で、折角報連相を守ったのに、これである。死ねば良いのに。


「また変なゲームするんじゃねぇだろうな?」

「いーや、今日は無性にダラダラしたいから、唯それだけだ」

「言い訳ぐらいしろよ」

「嫌なこった、パンナコッタ~♪」

「腹立つぅ……」


 これは梃子でも動きそうにない。とは言え、わざわざ持って来たのだから、話さにゃ損々だろう。


「まぁ、とりあえずは聞けって。お前も無関係って訳でも無さそうだぞ?」

「あ~ん?」


 かくかくシ○ジカ、ぼくドラ○も~ん♪


「……なるほどね。そりゃまぁ、確かに無関係ではないわな」

「だろう?」

「それにしても、生きてたのか、殺人鬼あいつ

「本人かどうかは知らんけどな」

「絶対違うだろ」

「だろうな」


 あの殺人鬼はあくまで通りすがりの芸術家であり、一ヵ所に留まるような奴ではない。例え拠点を構えるにしろ、こんな辺鄙な田舎の学校にはしないだろう。


「――――――ただまぁ、私の成果に傷を付けられるような真似は許せんわな」


 しかし、里桜の重い腰を上げる理由には足るようだ。あくまで交戦したのはビバルディだが、元々依頼を受けたのは里桜であり、叩き潰された殺人鬼の末路も見た。それを模倣犯如きが穢すなんて、絶対に許せない。獲物を殺し損ねるなど、“屋上のリオ”の名が廃る。


「それにしても、天使様が楽園に連れて行ってくれるってのは、何なんだろうね?」


 と、腰を上げた所で、気になっていたもう一つの噂について、里桜が尋ねる。


「ああ、それについては上ってくる前に調べといたが……“首を括ると天国に連れてってくれる”らしいぜ?」

「何じゃそりゃ。意味分からん」

「異論は認める」


 自殺したらあの世に行くのは当然だろう。新手の自殺教唆集団サークルだろうか?


「妖怪かねぇ?」

「「縊鬼くびれおに」って奴は居るな」


 「縊鬼」。人を自殺に追い込む悪霊のような存在である。道行く人の心を惑わし、首を括らせようとする、質の悪い奴だ。元々は中国出身の妖怪であり、交易を介して日本に渡って来たとされる。その魔力は仙人ですら自力では抗えず、一度でも取り憑かれたが最後、確実に死へ至らしめるらしい。


「“死に至る病”……「絶望」って奴か」

「そうとも言うな」

「でも、死ぬのを強制するのって、普通に他殺じゃね?」

「それを言っちゃあ、お終いよ」


 一応、知らぬ間に取り憑いて、自分から死ぬように意識を誘導しているだけなので、直接的に殺している訳では無い。そもそも、何となくでも死にたくなるようなストレスを抱えていなければ取り憑かれる事も無く、全く脅威にならないのである。

 ようするに、“気をしっかり持って強く生きろ”という、先人からのメッセージだ。

 同時に、縊鬼に取り憑かれてしそうな元気のない人が居たら助けてあげよう、という事でもある。

 ……現代社会で、それらが守られているかどうかは微妙だが。


「ま、何にしろ行ってみなけりゃ分からんか」

「そういう事だ」


 そういう事に為った。


「……なら、“釣り餌”がないとな」

『ゑ?』『ビバ?』


 ◆◆◆◆◆◆


 日が沈み始める頃合いに、


「ああ、素晴らしい……これもまた、芸術ダァ!」


 少年はまたしても殺人げいじゅつに手を染めていた。今日の犠牲者も、クラスメイトの女子である。


「天使様、今日の供物です」

『ありがとう、楓太ふうたくん。君の祈りには感謝しているよ』


 さらに、謎の声と共に死体が消えた。ズルズルと、何処かへ・・・・呑み込まれる・・・・・・かのように・・・・・


「いえいえ、僕の方こそ、感謝してもし足りないですよ!」


 そんな奇々怪々な状況を前にしても、少年――――――飾祭かざまつり 楓太ふうたは動じない。何故なら、“彼女”は彼の望みを・・・・・叶えてくれる・・・・・・存在なのだから。

 “彼女”との出会いは、一ヵ月前。丁度、例の殺人鬼が古角町で暴れていた頃だ。




「ふぅ……さて、描くか」


 友達がおらず、母親や教師とも上手く行っていない楓太は、何時も一人で美術室に入り浸っていた。他の部員は不真面目そのものであり、誰一人として居座る事がない。人間嫌いの楓太にとって、それは実に都合が良かった。

 そんな地味で大人しい楓太であるが、彼には誰にも言えない“裏の顔”があった。


「ムーッ、ムーッ!」

「フフフ、良いね、その顔、その表情! 実に写し甲斐がある! これから壊れていくかと思うと、もう堪らないねぇ!」


 楓太の目の前に転がる、雁字搦めになった、あられもない姿の少女。

 そう、彼は強姦殺人鬼なのである。

 きっかけは、ニュースでも話題になった件の殺人鬼、切り裂きジャック。誰にも止められない、止めもしない、残虐の限りを尽くす彼の姿に、楓太は興奮した。「何て自由なんだろう」と。

 元より抑圧されがちで、誰にも認められず話し掛けられもしない、独りぼっちだった彼は、知らず知らずの内に“破壊衝動”を抱えており、それがニュースをきっかけに箍が外れてしまったのだ。


 ――――――僕もあんな風に、自由奔放に生きたい!

 ――――――僕を“ぼっち”と馬鹿にして、無視を決め込む連中を殺してやりたい!

 ――――――あの鼻に付く態度の女子たちを、犯して殺したい!

 ――――――それを絵にして、飾ってやるんだ!


 地味で大人しい羊の顔をしている楓太も、心の中は立派な狼だったのである。

 こうして、楓太はとうとう犯罪に手を染めてしまった。前々から気に入らなかった女生徒を美術室に拉致して、散々犯し尽くしてから殺し、それを絵に描くという、狂気の沙汰を実行した。モデルのポーズは決まって首吊りであり、幼少期に見てしまった“父親の首吊り死体”が楓太の心の奥底にこびり付いているのだろう。


「ああ、素晴らしい! 最高だ! 芸術は、殺人ダァ!」


 そして、身も心も外道に堕ちた楓太にとって、切り裂きジャックは憧れの存在であった。


『ならば、その願い、叶えてあげよう』


 そんな彼に接触してきたのが、“彼女”だ。

 “彼女”は死体を介して・・・・・・会話し・・・、最後は己に取り・・・・込んでしまう・・・・・・。死体の始末を気にせず、存分に作品を描くのに、とても都合の良い存在である。

 さらに、“彼女”は言った。


『あの殺人鬼に力を与えたのは、この私だ。だから、君も私を信じ、祈りを供するのなら、何れ同じようにしてあげよう』


 これ程、嬉しい事はない。

 誰も彼も構ってくれなかったのに、“彼女”だけは自分を見てくれる。楓太が“天使様”に心酔するのは、必然だったと言えよう……。




『おや、また誰か来るようだよ?』

「おっと、そうですか」


 過去を思い出していた楓太の耳に、誰かの足音が飛び込んでくる。女の歩く音だ。こいつは良い、素晴らしい。まさか、さそってもいないのに、向こうから来るとは。楓太は急いで物陰に隠れた。


「えーっと、誰か居ますか~?」


 入って来たのは、眼鏡を掛けた地味な女子。おまけにつるぺたで、背も低い。

 だが、そこが良い、逆にそそられる。肉付きの良い、整った女は食い飽きた。だから、今度はこいつにしよう。


「芸術は、絞殺ダァ!」

「きゃあああああっ!?」


 そして、楓太は本能の赴くまま、少女に襲い掛かる。


「……なーんてね! オープンゲ○ト!』『ビバル~ン!』

「な、何ィッ!?」


 しかし、それは頭以外を人間態にしたビバルディと、彼に咥えられていた悦子であった。言うまでも無く、囮である。


「「見ぃ~ちゃったぁ~♪」」


 さらに、二人(というか一人と一匹)に続いて、里桜と説子も登場。楓太は完全に取り囲まれてしまった。


「な、何だこれは!?」

「鈍い奴だな。嵌められたんだよ、お前は。この私――――――「屋上のリオ」にな」

「くそっ……「逃がすかビンタ!」ハァン♪」


 楓太は逃げようとしたものの、許されるはずもなく、そのまま縛り上げられる。散々女生徒を束縛してきた自分が雁字搦めとは、皮肉という他ない。


「こいつが、あの切り裂くジャックかぁ?」

「ま、そんな訳ないわな、どう見ても」


 こんなアッサリ無様を晒す程、あの殺人鬼は弱くなかった。所詮は猿真似野郎だ。好奇心に身を任せたコピーキャットなど、この程度だろう。問題は・・・


「さーて、ネタは上がってんだ。出て来て貰おうか、“天使様”?」

『やれやれ、そろそろ潮時だとは思っていたが、去り際を誤ったか』


 パクパクと、先に死んでいた女生徒が喋り出す。その様は、完全に糸で繋がれた操り人形である。


「た、助けてくれよ、天使様!」

『無茶を言うな。そもそも、君は用済みだ。要らんおまけを呼び込んでしまったからね。……この役立たずが』

「な、な、なん……で!?」


 助けを求める楓太を、天使様は罵倒した。今までに無かった事だ。

 それはつまり、彼と“彼女”の関係の終わりを意味していた。


「……こいつに何を吹き込んだかは知らないが、お前こいつを利用して“餌”を集めさせてたな?」

「大方“協力すればあの殺人鬼と同じ力を与えてやる”とか、そんな所だろう? 嘘八百も甚だしいね」


 そして、里桜と説子は遠慮も容赦もない。経験に則り、ほぼ正解を言い当てる。


「ど、どういう、事だよ……?」


 だが、楓太にとってそれは信じ難い、認める訳にはいかない事柄だった。彼は天使様を信じて、今まで頑張って来たのだから。


『その通りだよ。私は死体を食べるだけ。切り裂きジャックなんて、会った事も無いさ』


 しかし、“彼女”は冷酷かつ冷徹に事実を告げる。用済みの捨て駒の扱いなんて、こんな物だろう。


「ぼ、僕を騙したのか!?」

『失礼だねぇ。君が勝手に信じ込んだだけじゃあないか。……まぁ、人間は何時も“自分にとって都合の良い事”を信じる物だ。それがどんな結果に繋がるかなど、お構いなしね』


 そう、それはまるで、餌に群がる蟻のように。


『何て事はない。所詮、人も動物だという事だよ。我々はその選択・・・・・・・を後押しして・・・・・・いるだけさ・・・・・


 他人ひとに頼み、神に縋り、天使に願ったところで、選ぶのも、決めるのも、結局は自分。自業自得である。


「ふ、ふざけるなぁ!」

『おやおや、随分と不満そうだね? なら、そんな君に先人キミタチからの素晴らしい格言を送ろう。“騙される方が悪い”。神も天使も悪魔も無い。そう決め付けているのは、君たちなのさ。キャハハハハハハハッ!』


 遂に、天使が本性を現す。


「化け物だな」


 それはまさしく怪物であった。

 幾百の目玉が浮かんだ光輪に、無数の首を括った少女の死体をぶら下げ、半透明の膜を傘替わりに被った、不気味な海月のような姿をしている。神秘性よりも恐ろしさの方が際立つ、この世の者ではない雰囲気が滲み出ていた。



◆『分類及び種族名称:悪質異次元人=縊鬼』

◆『弱点:不明』



『ウフハハハハハハ!』


 天使が奇怪な笑い声を上げながら、触手という名の首吊り死体を伸ばす。既に身体を乗っ取られ、弄られているのか、まるで蛇のようにグネグネと曲がり、充分に触手としての役割を担っていた。


「気持ち悪いんだよ!』


 むろん、素直に捕まってやる筋合いはないので、説子は触手を次々と切り裂いた。


『グッ……ガッ!?』


 そして、直ぐに痺れて動けなくなった。全身が痙攣し、凄まじい熱を発している。


「なるほど、腐っていても・・・・・・刺胞動物か・・・・・


 そんな彼女の無様な有様を見て、里桜が評する。

 海月は触手に「刺胞」と呼ばれる撃ち出し式の毒針を持っており、センサーに触れると自動で発射される。例え持ち主が死んでいようと、それは変わらない。

 さらに、天使の放つ毒はカツオノエボシの物よりも遥かに強力らしく、説子は解毒も儘ならないようである。


「なら、私が相手をしてやろう。来なよ、天使様(笑)」

『ウフフハハハハハヒヒヒヒヒ!』


 という事で、選手交代。状態異常や精神攻撃に強く、何より防御力の高い里桜が天使を相手取る事と為った。


『ガァアアヴィアアアッ!』


 もちろん、最初からフルメタルMAXな戦闘形態だ。当然、天使の刺胞など毛程も刺さらず、一気に形成が逆転する。


『キャハハハハハハハッ!』


 だが、そこは自称:天使、そう簡単には行かない。全身のありとあらゆる物が裏返り、グニャグニャと変形したかと思うと、骨格の鎧で覆われた人型の異形へと成り果てた。“クラゲの骨”とは笑わせる。


『イフヒヒヒヒヒヒヒッ!』

『グヴゥゥゥ……ッ!』


 しかし、意外や意外、この骨格装甲は見た目以上に硬いらしく、里桜の戦闘形態とも対等に殴り合えている。肉弾戦では勝負が付かないと見て良いだろう。



 ――――――キィイイイイイイインッ!



 そこで、里桜は飛び道具で対抗する事にした。分子結合を破壊する怪光線が放たれる。これには天使の装甲も意味を成さず、右腕が吹き飛ばされる。


『ギヒヒヒィッ……キャハハハハハッ!』


 だが、天使は恐ろしい再生能力を発揮。物の数秒で右腕を生やして、再び襲い掛かって来た。流石にこれは予想外である。

 というか、状況はあまりよろしくない。里桜の光線は防御力を無視出来るが、爆発を伴わない上に照射範囲が限られているので、一撃で葬るには火力不足なのだ。貫通性能を追求した故の弊害と言えよう。このままでは何れ押し切られる。



 ――――――ゴヴォオオオオオオッ!



 しかし、そうはさせないと、漸く頭が動かせるようになった説子が熱線を吐く。里桜に向けて・・・・・・。説子は今見上げるくらいしか出来ず、とてもではないが天使に攻撃など不可能なので、“熱でパワーアップする”という里桜の特性を利用する形でサポートしたのだ。


『ガァギィィングヴォァッ!』

『ギヒャハハハヒヒヒヒッ!?』


 そして、火力がマシマシになった里桜の極太ビームで全身を飲み込まれた天使は、原子すら残らずにこの世から消えた。あるべき所あの世へ還ったのである。

 こうして、天使様に纏わる集団殺人事件は、終息へと向かった――――――のだが。


「……そう言えば、あいつはどうする?」


 と、そこで楓太の姿が無くなっている事に気付いた。どさくさに紛れて、逃げ出したに違いない。もしくは戦いの余波で吹き飛ばしたか。何にしても、犯罪者を野放しにしておけば、面倒な事になるだろう。


本物に任せて・・・・・・おけばいいさ・・・・・・


 だが、里桜は気にしない。結果が知れて・・・・・・いるからだ・・・・・


 ……何せ、切り裂きジャックにとっての殺人は、あくまで“芸術”なのだから。


 ◆◆◆◆◆◆


「はぁ……はぁ……クソッ!」


 楓太は道なき道を走っていた。信じる天使を失った彼に逃げ道など残っていないが、選択肢もまた無いので、走り続けるしかない。投獄か、報復か、悪魔の贄か。何れにしろロクな末路ではないだろう。


『………………』

「うわっ!?」


 そんな楓太の前に降り立つ、殺戮の天使。人間でも妖怪でもない、化け物同然の殺人鬼であり、仮面のせいで何を考えているのかすら分からないが、それでも一つだけは理解出来る。

 こいつは楓太を殺しに来たのだと。模倣犯の模倣犯なんて下らない事をした彼を、芸術作品にする為に。

 否、本当は単なる偶然で、運悪く鉢合わせ、意味も無く殺そうとしているのかもしれない。

 しかし、祈り、願い、縋る物を失くした楓太にとって、そんな事など関係なかった。


「だ、誰か助け――――――」

『芸術は、捩殺ダァ!』

「ぎゃみょぎげぇっ!?」


 むろん、誰も助けてなどくれず、楓太は雑巾を絞るように首を捩じ切られ、地獄に堕ちた。

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