魔法戦 氷光

 対戦開始直後セラが馬鹿みたいに放ってきた大量の〈光弾〉に、ボクも同数同威力の〈氷弾〉を展開し、相殺。辺りが爆風と衝撃でうっすらと霧に覆われる。


 同時に霧を食い破る勢いで白金の魔法生物が五頭、飛びかかってきた。……………何の生物を模しているのかはさっぱり分からない。犬?狐?………うん、やっぱりちょっとよく分からない。


空中に展開した氷槍で貫き地面に縫い止め、氷漬けにして粉々に砕く。

 

 手を軽く振って霧をはらすと、視界に飛び込んでくるのは学院から支給される短剣を片手に斬りかかってくるセラの姿。おお、速い。


刃をしゃがんで避けながら、ボクも袖からセラと同じ短剣を取り出す。

 

 しゃがんで低い姿勢のまま、後退したセラに迫る。体を捻りながら突き出したボクの短剣を、セラはギリギリ自分の短剣で受け止めた。


ボクはセラの短剣を貫かんとして、セラはなんとかボクを弾き飛ばそうとして、刃がギチギチと音を立てる。


 キリがないので、もう一度体を捻ってセラの脇腹を蹴り上げた。セラは咄嗟に腕で庇ったものの、衝撃を受けきれずに大きく吹き飛ばされ、空中でくるくると回転する。


 追撃のために、ボクも地面を蹴って跳躍。あ、という顔をしたセラに容赦なく短剣を一閃した。


「っ!!」「ぇえー?」


 空中で姿勢を崩した状態でボクの剣受け止めるとか…サヤに随分しごかれたようで。


ボクは驚きながらストンっと着地し、まじまじとセラを見る。


 ボクより遅れて着地したセラは、空中でボクの短剣を受け止めた時に無茶をしたのか、肩で息をしている。表情には余裕なし。


 が、ここで手を止めてやるほど今朝の鍵の件の恨みは浅くない。クロ先生に渡された暗号魔法の解除、大変だったんだ!


氷槍を数十本形成し、セラを標準にして射出。セラも光槍を展開して迎撃。けれど、いくつかの氷槍は光槍を砕いてセラに迫る。


やっぱり同数展開はできても同威力展開はできてないみたいかな。セラが短剣で弾いた数本の氷槍が地面に突き刺さる。


「よーく、見ておいてよ?」


 口元に人差し指を添え、氷槍に仕込んでいた魔法式を発動させる。


「ちょっとちょっとちょっとこれ聞いてない知らないんだけど??」


 セラが慌てた様子で回避。空中に跳躍して逃げる。


 地面に突き刺さった数本の氷槍。それらを中心として地面がバキバキと凍っていく。これ自体はセラも初見ではない。けれど。


「薔薇の蔓のー……模様?」


 その氷に模様が入っていたことは一度もない。警戒するセラも、長杖なしで空中に居続ける術はなく、する。


 セラが空中に退避している僅かなあいだに、校庭の左半分は氷に覆われていた。吐く息も白く、セラが疲れた様子で短剣の柄を握る。


「……まるで、氷だけの世界みたいだね」

「ふふ、氷の世界はボクの独壇場。さぁ、セラはここでどれくらいいられるかな?」


 不敵に笑って見せると、セラがすっと目を細めた。ふ、セラはやっぱり意外とちょろい。セラの姿が前触れもなく消える。


 ボクの眼前に、短剣を振り上げながら現れるセラ。酷くないかー。身体強化魔法に光属性の魔法式を組み込んで、短剣の刃には魔力付与。殺す気?


 一歩も動かず、ぱちんっと指を鳴らした。


一位ボクの首を取ろうなんて、まだ早いよ。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る