第25話 金曜日のお布団は。
「今日は一緒に寝ないんですか?」
っと真弓さんが人差し指を加え、寂しそうな顔で言ってくるので、欲望に耐え切れなくなりそうだが、
「明日、ちょっと早いんで」
っと、何とか耐える。
「朝ごはんもご用意できないと思いますので、よろしくお願いいたします」
「はーい、わかりましたぁ……」
真弓さんが僕の背中を寂しそうに送ってくるのが判る。
とはいえ、仕事があるのは事実だ。
辞めた子の書類を処理しきる期日が金曜日だからだ。
さておき、僕の部屋には既に敷布団が敷いてあって、ぽつんと金髪ツインテールをおろした少女がその上に座っている。
いつもツインテールなのに、おろしただけで大人びた雰囲気を醸し出すのはズルだと思う。
それに何というか、怪しいお店に来たような感覚に陥るが、落ち着こう。
「なんで君が居るのかな、真矢ちゃん?」
「今日は私の番でしょ?
昨日、お母さんだったんだから!」
と大きな胸を張って主張する。
「何でそうなるの?」
「だって、不平等だもん!
私だって和樹さんのこと好きなのに!」
っと、言ってくるのでどうしたものやら。
「一つ、確認なんだけど、僕にパパ、父性を求めてたりしない……?
それのライクを感じるんだけど」
先ほどの風呂の件といい、ただいまの件と言いである。
「それは……あるかも」
っと少し言いよどんだモノのあっさり認める。
「だって、本当のパパのことあまりしらないし。
恐らく、和樹さんと同じぐらいの歳だろうし」
「それだったら、一つ提案。
ちゃんと娘として扱うから、僕への婚約を前提とした付き合いを破棄すること」
「それはヤダ。
だって和樹さんは私のだもん」
いつ、真矢ちゃんのになったのだろう。
「言ったでしょ、和樹さんのこと考えると子宮が熱くなることがあるって。
グショグショになっちゃうんだもん。
欲しい、欲しいって。
私の女の部分が和樹さんを好きだって言うんだもん」
「生生しい話はやめなさい」
とはいえ、それなら仕方ないのかもしれない、と呆れ半分で納得してしまう自分が居る。
生理的に、性欲的にと、言われてしまったら、それをどういなしたらいいか判らないし、僕も真弓さんに性欲的に惹かれることもあるし、真矢ちゃんにだってある。
これは自分自身が否定しきれない事実なので仕方ない。
一方から否定するのは視野を狭くするだけだ。
「大丈夫大丈夫。
今日は一緒に寝るだけだから。
ね、パパ♪」
っと可愛らしくいい、敷布団の上に寝転がって手を広げる真矢ちゃん。
「なら仕方ないなぁ」
お風呂の時みたいにごねられて、真弓さんにバレる自体は避けた方が良いとの判断だ。
それでも真矢ちゃんの両腕からは逃れて、横に寝る。
「ぶー、ちゃんと受け止めてあげるのに」
「そういうのは彼氏が出来てからやりなさい」
「彼氏、つまり、和樹さんだもん!」
「いつ、彼氏になった、いつ」
「私が彼氏って言ったら、彼氏なの!」
「ふふ」
娘が我儘いうのはこんな感じなのだろうかと、笑ってしまう。
「なによー!
子ども扱いして、私にもキスして?
ね、いいでしょ?」
僕をいつもかき乱して悪戯っ子な笑みを浮かべる真矢ちゃんに一つ、復讐をすることに決めた。
「フレンチ・キスでいいね?」
「ん?
別に何でもいいよ?
んぁ……」
ちゅっと啄ばむような軽いキス。
そのあと、口に割り込むように舌を入れる。
「んん……!」
真矢ちゃんが驚いて、抗議とばかしに胸を叩いてくるがもう遅い。
歯茎を舐め、奥歯まで堪能し、そして舌を絡めていく。
すると、真矢ちゃんの抵抗が無くなり、眼がとろんと呆けたようになり、僕の舌を受け入れるままになる。
そこで軽く、歯と歯をコツンとぶつけて終わらせる。
「……ぷはっ」
「……ぇ、なに、いまの……」
真矢ちゃんが驚いたように言うので、
「今のがディープキス、大人のキスだ。真弓さんとしたキスだね?
ちゃんと女性扱いしてあげたんだから、もう寝よう?
お互いに朝は早い」
「いや、いい、うん。
私、自分の部屋に戻るね!」
っと、駆けて廊下に出て行ってしまう。
やりすぎたかもしれない。
または今のをおかずにされるかもしれない。
まぁ、とにかくゆっくり眠れることが出来るなと、僕は意識を落とした。
「……すきぃ」
それでも、落ち着いた様子で誰かが戻ってきたのを、理解することは出来た。
ほんのりと僕の事を後ろから抱きしめてきたのは、気づかなかったことにした。
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