第8話 買い物デート。

「真弓さん、ありがとうございました」


 車を出して貰ったお礼をいう僕。

 なお、その車が高級車で無ければ、目立たなかったのにと思いはした。

 赤いベンツは目立つ。せめて白か黒であればと思ったモノだ。


「いえいえ、和樹さんの為ですもの。

 今日の買い物は何を?」

「小さいモノと服をかけるハンガー掛けですね」

「あー、あの部屋にはドレスアップルーム無かったですもんね」


 他の部屋にはあるらしいことを示唆されたので驚きつつ、二人してきたのはイケアだ。

 日本人ぽい名づけのお店だが海外チェーン店である。

 なので、広い。

 所々、こういったのはどうですかとか、部屋ごと再現している場所が有ったりするので日本とは規模が違う。

 僕も何度か一人で来たことがあるが、何というか非日常を浴びに来れる点では重宝していたりする。

 さておき、


「わー、鮫の人形ですよ。

 しゃー♡」

「うわー、やられたー」

 

 っと、色んなものを見つける度に可愛い反応を示してくれる真弓さんが可愛い。だからこちらも嬉々としてボケをしてしまう。


「これも買っちゃおうかなぁ……。

 うーんでも、無駄なモノかうと真矢ちゃんに怒られるし……。

 一度ですね、某キャラクターのグッズを買い漁ったら怒られてしまいまして、買いすぎだと。

 そこから、コレクションとかは控えるようにしてるんです。

 あはは」

「少しぐらいなら大丈夫なんじゃないですか?

 自分の部屋に置くとか」

「いやー、自分ですねー、欲望が暴走しやすいので。

 まず、買うなって怒られちゃってるんです」


 娘に怒られるとは、どんだけの量を買い漁ったのであろうか。

 ちょっと想像が付かない。


「でも、こういうのはみているだけでも楽しいですね。

 寅さんですよー、がおー」

「うわー」

「ふふ、和樹さんの反応が可愛くてついつい、楽しんじゃいますね♡」

「それなら良かった」


 少しでも彼女の楽しみになれているのだと実感でき、嬉しさが込み上げてくる。

 自分の用事で来てもらっているので猶更だ。


「あ、布団コーナーですって。

 んー、買いなおしすることもないけど、やっぱり大きい方がイイですよね」

「そうですねー」

「ほら、二人で転がるっとこれだと小さい」


 真弓さんの手を引かれるまま、試供品の上に転がされる。

 すると彼女の顔が近くなって、可愛らしい顔立ちがはっきりと認識できる、


「そうですね」


 少しドキドキしながら、上半身を起こし、立ち上がる。


「私の部屋のは大きいので安心ですよ?」

「そうですか、それは……どう反応したら?」

「ふふ、和樹さん、初心なんだから」


 っと、ニヤニヤとした笑みで返されてしまう。


「そういう所も、お慕いする理由かもしれませんがね。

 ふふふ」


 経験豊富な分、余裕を見せられている気もする。

 さておき、彼女も起き上がり、お目当ての場所までこんな感じで歩いていく。


「ハンガーかけありましたー!

 結構、色々ありますけど、どれがお好みですか?」


 一番安いので、っと言いそうになった自分を一旦、抑える。

 結婚を前提にお付き合いをしているとはいえ、こういう所でケチ臭さを見せてしまえば生活感の違いなどでやっぱりお断りされる可能性を危惧したからだ。

 さてどうしたモノであろう。

 一つ一つ、観ていきながら、慎重に思考を回していく。


「あっ」


 っと、利便性が高く安いモノがある。

 あ、これだと思うが、先ほどの考えがチラついて止まってしまう。

 けれども、眼についたそれにする。

 相手によって意見を変えるのを求められている訳では無いと真面目に考えたのだ。


「これで」

「このお安い奴でいいんですかー?

 いやでも、ちゃんとしてるし、キャスターもついてますね。

 いいんじゃないですか?」


 っと素直に褒められる。

 同時に高いだけじゃなく、ちゃんとした実用的なモノを好ましいと思えるセンスが真弓さんにあることも判り、安心する自分がいる。

 その後、こまごまとしたモノの買い物も済ませ、お会計に行こうとすると。


「お支払いはお任せあれ!」

「いや、これぐらいは自分で払いますんで」

「いえいえ、私のワガママで家に来てもらってるんです。

 だから私が払うのが筋というものでしょう?」


 と押し切られてしまった。

 男の甲斐性なんて無いようなもんである。


「今までの人もそんな感じに?」

「はい、そうですよ?

 私、三つの会社の社長さんですし、えっへん」


 子供が言うようにお腹を前に出していう真弓さんが正直可愛くみえた。

 だから、笑みが浮かんでしまった。


「ふふっ」

「なんですか?

 私の収入もしってますよね?

 プロフィールは嘘じゃないんですから」

「いえいえ、可愛らしいなって」

「可愛いって……あわわわ」


 真弓さんが頬を赤らめて財布を落としてしまう。

 それを拾ってあげると、


「あんまり可愛いとか言わないでください。

 私は年増の三十六歳ですよ?」

「それは僕もそうですよ。

 でも、真弓さんは可愛いじゃないですか?」

「また言う……」


 耳まで赤くなった真弓さんが可愛い。

 そこで気になったことを聞いてみることにする。


「可愛いって実は言われ慣れて無かったりします?」

「……はい。

 いつも凛々しいだとか、大人とか、お金のこととかだすとそんな風に言われてました」

「あはは、それは何とも何ともですね」


 確かにそう言う意見で相手をおだてたりする人も居るだろう。お金とは力であり、自立の象徴だ。

 さておき、っと真弓さんが誤魔化すように前置きをし、


「お昼どうしましょう?

 食べていくのもありですし、帰って作っても良いですが」

「そうしたら、僕が作りますよ」

「ぇ、料理出来るんですか?

 一人暮らしでしたし、コンビニ弁当とかそんなのを食べていたのかと勝手に」


 若干、引かれたのが悲しい。


「いえ、和食と中華なら大抵は作れますよ?

 一人暮らしでも節約になりますし、結構、上手だって職場の皆にも言われるんですよ?」

「なら、見せて頂きましょう、その腕前を!」


 そんなこんなで元町中華街によって、細かいモノを買って家に帰宅することになった。

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