第12話





「ぷげらばっ!?」


「相手をよく見てください!攻撃を見なければ避けられませんよ!」


 下層の設計を終えてから数日、俺はミアに何度も何度も吹き飛ばされていた。


 何故こうなったのかは下層設計が終了した日の翌日に遡る。





_________________________________________




「セイヤ様、一つ聞いてもよろしいですか?」


「なんだ?ミア」


 朝食を終えてコーヒーを嗜んでいた俺にミアは話しかけてきた。


「昨日、深層作成は一ヶ月後にするとおっしゃっていましたが、それはつまり一ヶ月の間暇ということでよろしいでしょうか?」


「まあ、そうだな。もう数日したらDPが貯まるから、その時に下層にスポナー設置する予定だけどそれ以外は特にないな」


「それでは、私が昨日言ったようにセイヤ様に戦闘技能向上の訓練と、一般常識を学ぶ勉強をしていただきたいのですが構いませんか?」


 ミアは真剣な表情でそう言った。


 あー、昨日言ってたねそんなこと。まあ、確かにダンジョンマスターがろくに戦闘出来ない雑魚っていうのもアレだし、個人的にも強くなりたいからやろうかな。


「それじゃあ、お願いするわ。前世で習った古武術とかがどの程度こっちでも使えるかは知らんけど、個人的にはやっぱ強くなりたいからな」


「それでは、メニューを大雑把にですが決めていたので、言いますね。まず、朝は戦闘訓練、昼からは魔法の授業、夜は一般常識を覚えてもらいます。一般常識はそれほど多くないですから、すぐ終わると思うのでそうなれば戦闘訓練と魔法の授業を半々でやることになります」


 ミアは簡易時間割を書いた紙を机に広げて説明した。

 ちなみに、朝とか昼とかはこの部屋にいるとわからないけど、DPで時計を買って出したので問題ない。それに、元々ダンジョンコアがあった部屋が些か殺風景ということで、カーペットを敷いたり壁紙を貼ったり、他にもソファーやアンティークのランプなんかを置いてなかなかいい雰囲気の部屋になった。(監修はミアがやった)


「それなら訓練場みたいな部屋も追加したほうがよさそうだな」


「はい、お願いします」


 んならぱっぱと、DPで追加しまして。


「よしっと、訓練場追加したけど今からやるのか?」


「セイヤ様がよろしいなら今からやりましょう。あと、木剣などでの訓練を想像しているかもしれませんが、私は回復魔法が使えますしセイヤ様もダンジョンマスターになってから全体的に能力が向上しているので、真剣を使って訓練しますが構いませんね」


 おっとぉ?少し不安ですねぇ。でもこの感じ確認とっているけど、実は相手の意思関係なしに決定してるパターンでは?まあ、地球でも古武術の演武の際に何度か真剣を持ったことあるし、全く使えないってわけじゃないからいいか。


「いいよ。その代わり怪我したらちゃんと回復魔法かけてくれよ?」


「それはもちろんです。では早速いきましょう」


 そう言うと、ミアは上機嫌に部屋を出て訓練場に行ってしまった。

 うーん、これは選択を早まったかな?

 俺は自分の選択に少し後悔をしながら後をついて行った。



_________________________________________




「結構広いんですね」


「選択できる中でも、そこそこ広いやつ選んだからな」


 追加した訓練場は床が全面石畳に覆われ、魔法や弓などの遠距離攻撃が練習できるように鉄製や木製の的がいく高橋の方に置いてある。他にも休む為のベンチなども置いてあるが、どうやら訓練用の木剣や鉄剣までは置いていないようだ。自分で出せって感じやな。


「それでは、早速始めましょう。セイヤ様もDPで剣を出してください」


「おう」


 ミアは何処からともなく邪魔にならない程度に美しい装飾の施された剣を取り出した。

 それ結構いいやつじゃないの?適当に鉄の剣とか出したら切り飛ばされそうだし、何かないかな...お!これ良さげだな。


 俺は良さげな剣を見つけたので、DPで出現させる。


「ミスリルの長剣ですか?」


「ああ。それと、剣に『鋭利』と『強靭』が付与されていて、余程酷く扱わなければそうそう壊れないと思うぞ」


「なるほど、鉄の剣を出したら付与をしようと思ってましたがその剣なら問題ありませんね」


 お?鉄の剣にしろとか言われなくてよかったー。人によっては実力に合わない武器を使うなって人もいるからなぁ。まあ、俺自身ミスリルの剣に釣り合っているかと言われたら微妙だが、雷龍の牙で作られた雷命剣とか聖剣魔剣を出さなかったんだから文句言わんでくりゃれ。


「では、セイヤ様の方からきてください。地球で古武術や西洋剣術なるものを学んでいたのは知っていますので、好きなものを使って攻撃してください」


 と言われてもな。実際選択一つだけなんだよね。西洋剣術はやりはしたけどあんま合わんかったんよ、特に盾の扱いが大変だったなぁ。てなわけで、これでも古武術道場で一時は師範代やってたんだから、どのぐらい通用するのかやってみよう。


「いくぞ!」


 古武術...と言うかこれは武術全般に言えることだが、大事なのは体幹や足捌きだ。刃筋を立てて切ることも確かに大事だが、体幹がしっかりしていれば毎回剣を振るう際に腰を入れて震えるし、足捌きも対人戦においてはとても重要だ。ラノベとかで縮地とかがよく出てくるけど、アレってファンタジーの謎パワーでやってるだけじゃなくて体幹を鍛えておけば足捌きでも普通にできるんよね。

 具体的に言えば重心を前に傾けその勢いのまま地面を滑るように移動する。俺は出来るようになるまで四、五年かかったけど。

 他にも緩急で相手の認識をおかしくしたり、ジワジワと足を動かことで相手が距離感が掴めなくなるから普通に強いと思う。


 で、それがミアに通用するのか?と聞かれれば答えは...


ギィィィィンン


「ぐっ!」


 微妙。

 まあ、多分これ見えてるね。ここ異世界だから魔力による身体強化や動体視力強化とか普通にありそうだし、あんまり身体能力に差がありすぎると柔よく剛を制すとか無理、やれたとしても絶世の達人とかぐらいやな。

 まあ、俺もこっちきて身体能力とか上がっているとは言えミアはリンの命令であっちこっち飛び回って戦ったりもしてたみたいだから、似たような技術を使う敵と会ったことがあるんだろ。


「すごいですね。久しぶりに見ましたよその技術」


「ハハ、ありがと。でも、当然のように対処されてるからなぁ。俺もこっちきて身体能力上がったから技の精度とか速さとか上がってるんだけどね」


 やっぱ知ってたか。他にも相手の意識の隙間に行動を差し込むなんて方法もあるけど、この調子だと体験済みっぽいし骨が折れるね。


「そんじゃあ、俺が強くなれるように頼むぞミア」


「言われるまでもありません」


 こうして俺とミアの楽しい楽しい鍛錬(地獄)が始まった。


 



__________________________________________________________________





⭐︎に♡、フォローなどよろしくお願いします




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る