第8話





「リビングアーマー、ですか?」


 ミアは俺の言葉に少し不思議そうに返してきた。

 ふむ、俺としては最適解だと思うのだがミアはそうは思わないのか?とりあえず聞いてみるか。


「そんなに不思議か?人型で鎧や武器を装備でき、軍隊としても動かしやすいのならこれ以上ないだろ。それに生物型と違って血を流したりしてパフォーマンスが落ちたりも無いだろうし」


 俺がそこまで言うとミアは慌てて


「い、いえ、そうでは無いのです。セイヤ様がリビングアーマーを選んだ事自体は不思議ではありませんが、他のモンスターは使わないのかなと思ったのです」


 そう言った。


 なるほど、確かにこれは説明不足だ。鎧はリビングアーマーの体そのものだから鍛えればより上等な物になるだろうが武器はそうでは無いからそれを作るモンスターであったり騎馬が乗る馬、ここは異世界だから竜騎士なんてのもいるだろうから竜も必要だろう。


「ああ、すまんな。リビングアーマーが主軸なのには変わらないが、他にも馬や竜、鍛治技術を持ったモンスターを召喚するつもりだ。必要であればそれ以外にもな」


 そこまで考えた俺はミアに謝り訂正した。


「いえ、それなら良いのです。では早速ダンジョンを作りましょうか」


「おっと、それはちょっと待ってくれ」


 ダンジョンを作ろうと意気込んでいるミアに俺は待ったをかけた。


「どうしてですか?」


「その前に聞いておきたい事があるんだよ」


「なんでしょう」


「この世界のダンジョンにスポーンモンスターがいるのは知っているんだが、それで召喚されたモンスターは俺自身で召喚したモンスターとどう違うんだろうなと」


 スポーンモンスター、これは言ってしまえば無限発生機の様なもので一度設定すれば俺が消去するまで一定周期でモンスターを生み出すと言うものだ。これはラノベなどにもあったが、その中では手動召喚と比べ知能が低かったりなどの欠点があった。


「その事ですか。確かに違いますよ」


 やっぱりか。俺はミアの返事を聞きながらそう思った。


「具体的には何処がどんなふうに違うんだ?」


「根本的に違います。そもそもスポーンモンスターを設定した場合は一定時間ごとにモンスターが召喚されますが、召喚されたモンスターは知能が無く本能で動きますし、強さも多少は強くなるかもしれませんが基本は召喚された時のままで固定なので育成以前の問題です。まあ、設置の際に消費する魔力の量で多少は出てくるモンスターの強さを決めることはできますけど」


 そう言うパターンか、それなら手動召喚した奴らに倒させてレベル上げぐらいしか思いつかないな。でも、簡単な命令ぐらい聞くなら使い捨て前提で突っ込ませるのもありか。


「なんとか出来ないか?」


 俺は悩みながらミアに尋ねた。

 そしてミアの答えはとてもあっさりしたものだった。


「無理ですね。まあ、本当に簡単な[進め]や[止まれ]程度の命令なら聞きますが、それ以上は難しいので他のダンジョンでも上層部侵入者に殺されるぐらいしか役割がありませんね。上位モンスターをスポーンするようにすれば戦力にはなるので、魔力に余裕があるところは使ってるみたいですけど」


 んー、やっぱりそんな使い道しかないか。でも上位モンスターなら戦力にはなるんだな。それなら手動召喚した奴らの訓練相手兼侵入者撃退用として、ダンジョンのあっちこっちに出るよう設定しておくか。


「そーいやラノベとかで大氾濫とかあるけど、こっちの世界でもあるのか?」


「ありますよ?この世界はダンジョン以外だと地上の魔力の濃い場所、魔境と呼ばれていますがそう言った場所にモンスターがたくさんいます。それで、そこにいるモンスターが餌が足りなくなって暴走した結果人の街に突撃したり、強いモンスターや統率力の高いモンスターに率いられて起こったりもします」


「ダンジョンではないのか?」


「それは、ダンジョンマスターがダンジョンの管理をサボっていた場合に増えすぎたスポーンモンスターが溢れたり、ダンジョンマスターが故意に起こしたりしますね。ただ、もしそれをすると人間の強者が集まってきてそのダンジョンを優先して攻略しようとするらしいので、やるにしても考えてやらないといけません」


 なるほどね、スポーン設定してはい終わりってわけではないのか。


「んじゃ俺も気をつけないとな」


 俺はそうミアに返した。


「それではセイヤ様、改めてダンジョン作りを始めましょう」


 そのミアの言葉に今度こそ


「おう!」


 と、俺は答えた。





_________________________________________






「それで、大体のことは聞いてますが念のために聞いておきます。どの様なダンジョンを作るのですか?」


 と、ミアに聞かれた俺は


「ああ、まず上層を他のダンジョンに似せたオーソドックスなモノにする。次に中層は強力なモンスターを無秩序に並べて相手の戦力を削る。そして最後はこれから育てる予定の軍隊で相手をする。こんな感じだな」


 そう答えた。


「それでは上層から作っていかれるのですね?」


「ああ、その通りだ。今から作るから少し待ってくれ。でも、途中でわからない事があったら聞くので答えてくれ」


 俺はそういうとダンジョンのホログラムの様なものを出した。

 このホログラムは言ってしまえば下書きの様なもので色々試して満足ができたら実行という感じだ。

 っと、ダンジョンを作る前に魔力を変換しなくては。えーと、全部変換すると倒れるかもしれないから適当にいくらか魔力を変換して、残りは実際に作るときに足りなかったら増やそう。

 うん、上手くいったな。ただ、やっぱりロスは出るな。でも、慣れればもう少しぐらいは減りそうだ。


 そうして、改めてダンジョン作成用の魔力を手に入れた俺はダンジョン作成に取り掛かった。



_________________________________________






 まずは上層からだが、そうだな洞窟型というのは決まっているから階層自体は迷路にしよう。上層の階層数はどの程度がいいか、他のダンジョンの階層数にもよるからミアに聞くか。


「なあミア、他のダンジョンで中間ぐらいのところは大体何回そうぐらいなんだ?」


「そうですね、セイヤ様が作られている洞窟型であれば大体三十から五十階層ぐらいでしょうか?でも、他の方は途中で草原の階層を入れたりもしていますから参考にするのは難しいかと」


「いや、問題ない。ありがとう」


「これが役目ですから」


 ミアの話を聞いた俺は上層部の階層数を五十にした。既にホログラムには一つ一つ違う形の迷路になった洞窟型の階層が五十個出ていた。よし、あとはここにゴブリンやオークなどの亜人型モンスターや狼や蝙蝠などのモンスターがスポーンするようセットする。いやリザードマンやワイバーンも混ぜるから所々洞窟から水辺や沼地、天井の高い小部屋なども設置しておこう。知能がないとは言え、本能的には自分に合った環境の方が動きやすいだろうからな。

 それとは別に宝箱や罠をセット。

 おっと、ボス部屋を忘れるのはダメだな、十階層ごとにボス部屋を設置しその一つ下の階層の入り口に転移陣を設置してそこから地上に戻れる様にしておく。当然次入る時も地上の転移陣を通してその階層に行ける様にもする。ボス部屋のボスの強さはその階層のモンスター数体と上位種一体とかでいいかな?

 スポーンモンスターの強さはどうしようか?下に行くにつれて強くなるのは当然だが、あまり強くしすぎてもアレだからな。今作っているのはあくまで上層。まあ、上位種や変異種を階層一つ降りたらすぐ出すって言うのもアレだし通常種の数を増やしたりして徐々に攻略難易度を上げよう。


 そうして他にも細かいところを設定して、俺のダンジョンの上層部は完成した。







_________________________________________




なお、主人公の魔力量がどれだけヤバいかと言えば変換した魔力で上層部の全て(スポナーや罠、転移陣など含む)を一括で作成しても多少残る程度。



ちなみに、中堅のダンジョンマスターは大体が最低でも五十年以上は生きていて、数百年生きてる奴もザラです。階層少なくない?ってなるかもしれないですが、階層追加は基本的にかなり出費が痛いので一部例外(主人公とか)を除くダンジョンマスターは階層を増やすのはゆっくりでモンスターの数や質を揃えるのを優先します。それに、凶悪な罠とか張ればそうそう攻略されませんし。(いきなり五十階層も一般に作るのはキチガイ)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る