第5話




「では、次にダンジョンに関する基礎的な知識を教えます」


「よろしくお願いします」


 ミア先生に頭を下げた。


「もうっ、あんまりふざけないでください」


「すまんすまん」


 ふざけるタイミングを間違えたな。


「改めてダンジョンについて教えます。ダンジョンとは色々な捉え方がありますが人間から見た場合、モンスターがたくさん徘徊していて危険だが相応の資源も眠っていると言う認識です。まあ、セイヤ様が思っているのと変わりません」


 やっぱりそんな感じか。


「そして、ダンジョンの中はそのダンジョンの主人であるダンジョンマスターによって変わります。洞窟型であったり草原や海などの屋外型であったり、廃墟型なんてのもあります。ダンジョンにあるモンスター達も人型や動物型、他にもアンデットやらドラゴンやら色々いますがモンスターに関しては有名どころはセイヤ様も知っているようなので割愛します」


「ん?俺が知っているってどう言うことだ?ラノベの中と同じってことか?」


 ここ異世界よ?同じなんてある?


「一部違うところはありますが基本的な認識は同じでいいと思いますよ。まあ、違うと言ってもゴブリンやオークが女性を性的に襲わないとかそんな感じですし。知能も何段階か進化した上位種でもないかぎり子供と同等かそれ以下ですね」


 へー、薄い本にはならないと。


「それで次ですが、実際にダンジョンを作りダンジョンの中を洞窟などに変更したりモンスターを出現させたりするにあたって特殊な魔力を使います。これがリン様がセイヤ様をダンジョンマスターとして送り出した理由の一つですね。そしてこの魔力を獲得する方法は一つ目がダンジョンに入ってきた侵入者から貰うという方法とダンジョンの支配領域に比例して自然と集まる方法の二つです。一つ目の方法は侵入者がダンジョンの範囲内に入っていれば時間経過で入ります。また、侵入者がダンジョン範囲内で死亡した際は時間経過で入る量よりも圧倒的に多いです。」


「つまり、ダンジョンは自分の身を守るためというのと、その特殊な魔力を集めるために人を殺すから危険な場所と認識されているのか」


 俺はそう納得した。


「はい、その通りです。次に二つ目の支配領域に比例して自然と集まる方法はダンジョンの範囲内となっている場所の地脈、龍脈とも呼ばれる大陸に走る魔力の血管、河でもいいですね。そう言った場所から魔力を集める方法です。ですがこの方法は一つ目と比べて集まる魔力が多くなく。ある程度長い間運営したダンジョンで支配領域が広くないととてもではありませんがこれだけで成長しようと思ってもどれだけ時間がかかるかわかりません。それと、この二つの方法とは別に金銀財宝などの物を変換できますが物によっては変換効率が悪く、こちらもダンジョン運営に余裕ができてからの方がいいでしょう」


 なるほど、違う部分ももちろんあるんだろうが基本は前世で読んだラノベとかと同じ感じだな。だが待てよ?ダンジョンを運営するのに必要なのは特殊な【魔力】だよな?

 

 ふと疑問を覚えた俺はミアに聞いてみた。


「なあ、この世界の人間や動物って基本的に多かれ少なかれ魔力を持っているんだよな?それに、俺もリンに転生させてもらったから魔力を持っているんだよな?」


「その通りです。基本的にこの世界のモノは人間などの生物はもちろん一部の特殊な金属なども魔力を持っています。セイヤ様の魔力量は...凄いですね。異常なほど多いです」


 だったら!


「それなら俺の魔力をダンジョンを運営するのに必要な特殊な魔力に変換できたりしないか?」


 そう、俺が聞きたかったのは変換できるかどうか。俺がこのままダンジョンを作り始めたとしても最初は限られた事にしか手が出せないだろう。それではいつまで経っても理想のダンジョンが出来ないからな、ミアが言った以外の方法で特殊な魔力を獲得できれば随分と楽になる。それに、財宝なんかの物が変換できるんだったらダンジョンコアと融合しているダンジョンマスターの魔力だって変換できるだろ。


「それは...確かに出来ます、ね。ダンジョンコアと融合してもそれまでの魔力はそのままに特殊な魔力が別口で追加される形ですからね。ですが、それはかなり難しいですよ?」


「なんでだ?」


 んー?変換レートとかのことか?それなら魔力増やせばなんとかなるのでは?


「理由としては変換レートがそれなりに高いと言うのもありますが、それ以上に魔力の相性というものによって変換のしやすさが異なるのです。相性が良ければ上手くいくかもしれませんが、良くなければ変換してもロスばかりで膨大な魔力に対してコップ一杯であったり雀の涙のような量しか変換できなかったりと悲惨な事になりますよ?補足しますと基本的にこの相性が良いとされたダンジョンマスターはいません」


 それは確かに難しいな。やる奴がいるとしたらよほど追い詰められたとかだろうな。

 ていうか、相性良かったダンジョンマスターいないのかよ!まあ、他人よりロスが少ないやつとかはいるかもしれんけど。


「難しいのはわかったけど魔力の相性が良ければ極端な話一対一で変換できたりするんだろ?だったら魔力の確認ぐらいはしてほしいんだが」


 試してみない事にはわからんからな。


「わかりました。セイヤ様の魔力量も表面的なものしか見てませんし、確認だけはしましょう。ですが、結果が悪いからと言っていじけたりしないでくださいよ?」


 ミアはそう言ってジト目で俺のことを見てきた。


「安心しろ。ダメならダメで堅実にやってくよ」


「それならいいです。早速確認しますから手を出してください」


 俺はミアに言われるがまま手を出した。


「それでどうするんだ?」


「手を握って確認するんです。魔力の量この方法でわかりますし、変換での相性などはリン様がここに送る際に教えてもらったダンジョン知識を使えばわかります」


 ミアはそう言って俺の手を取り、集中するように目を閉じた。

 そうして少し経ち、まだかなと思っているとミアはいきなり目を開けて驚いた表情を顔を浮かべ...


「はぁぁぁぁぁ!!!???」


 絶叫した。







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