怪談ひとさじ
継木マツリ
第1話 絵を覗く男
――SNSに投稿された個人の体験談――
ちょっと前に、自分が体験したホラー体験書くのが流行ってただろ。出遅れた感はあるけど、最近これってホラーなのかもって体験をしたから便乗させてくれ。
住んでるとこバレるから、大阪にある○×公園としておく。ここ、池の手前から見る景色がキレイで年中花が咲いてて、映え写真目当ての人とか絵描きの人とかが集まるスポットになってんの。
実は美大に通ってる俺氏、課題で風景画が出たから○×公園に写生しに行った。
半分くらい描きあげたところで、後ろから知らんおっちゃんに「絵、うまいなぁ。兄ちゃんプロなん?」って感じで、突然声を掛けられた。
大阪のおっちゃんおばちゃん、知らん人によく話しかける説、9割位当たってると思う。
俺も絵を外で描いてると、こういうのはよくあったから特に気にせず、……いや内心めちゃくちゃ舞い上がりながら「いや、ただの学生っすわ」と冷静なフリして返した。
それからもおっちゃんは、なんか色々と絵を見ながら褒めてくれて、最後に飴をくれた。
大阪のおっちゃんおばちゃん、飴ちゃん常備説、8割位当たってると思う。
結構時間が経ってたので、着色とかはまた明日にしようと下絵だけ完成させてその日はすぐに帰った。
で、変なのはここから。
家に帰って、被せてた布を取ってキャンバスを見たら、描いた覚えのないものが描かれていた。
右端に、池を眺める男の後ろ姿が、肩から上くらいの位置で描かれている。
もう一度言うが、俺はこんなもの描いた覚えがない。
だけど、それは間違いなく、俺のタッチだった。
気味が悪くなった俺はその人物の部分だけ消すと、また布を被せて部屋の隅にキャンバスを置いた。
その日はすぐ寝て、次の日の午後、またあの公園で絵の続きを描きに行った。
キャンバスを取り出すと、そこには昨日の絵の男がそのまま残っていた。
絶対消したはずなのに。
そもそも、構図がおかしい。
この位置に男の後ろ姿があるということは、遠近を考えると、絵を描いている俺よりも更に後ろに下がったあたり、そう、ちょうど俺の後ろから景色を見ているくらいの距離だ。
そこまで考えて、急に寒気を感じた。
そうだ、まるで俺の絵を後ろから覗いているみたいじゃないかって。
「お、昨日の兄ちゃんやん。今日も絵描くんかいな」
突然背後から陽気に声を掛けられて、俺はめちゃくちゃビックリして危うくキャンバスを落としかけた。
振り返ると、昨日のおっちゃんが俺の後ろに立ってたんだ。
内心、あーびっくりした、と思いつつ、また少しだけおっちゃんと会話した。
おっちゃんは、また俺に飴を渡して陽気に手を振りながら去っていったんだけど……。
その後ろ姿が、絵の男のそれと、全く同じだった。
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