第24話:インテリさいかわ天使ちゃんが降臨しました(メガネくいっ)


 あっという間に話が進んで、どうやら今日テクノロジアの人が事務所に来るみたい。まさかこんな早くことが進むだなんて思ってもみなかったよ……。


 でも、テクノロジアの人ってどんな人なんだろう? 色々な研究をしているみたいだから、白衣とか着てかっこよくメガネくいってするのかなぁ?


「ん? インターホンが鳴ったってことはもう来たのかな。カズサ、ちょっと見てきてよ」


「いいけど、普通マネージャーがお出迎えするもんじゃないの?」


「えー、もしかしたら実は私たちの人気を恨んだ奴が来ててさ。逆上して襲ってくるかもしれないじゃん」


「私は囮ってこと!? も、もうそんなわけないだろ……ほら、田中もこい。ミヒロちゃんも」


「は、はい!」


 結局しぶしぶ田中さんも一緒に、みんなでテクノロジアの人をお出迎えすることになった。うーん、どんな人が来るんだろう……ワクワク!


「よ、ようこそおいでなさいました! わ、私たちがたまこし学園です!」


 カズサさんが噛み噛みながら歓迎の挨拶をしながら扉を開けると、そこにはメガネをかけて、白衣に身を包んだすっごい美人でスレンダーな女性が可憐に立っていた。


 え……こ、この人がテクノロジアの人!? そ、想像していたよりもずっとすごい人が来たよ!!!


「わざわざご丁寧にどうも。私、株式会社テクノロジアの広報兼配信者兼、インテリさいかわ天使ちゃんの【天音小弓(あまねこゆみ)と申します。いごお見知り置きを」


「……へ?」


「か、肩書き多くない……? え、い、インテリ?」


「インテリさいかわ天使ちゃんです」


 まさにクールビューティーって言葉が似合う美人な天音さん。


 そんな人からメガネくいっとしながら真顔で「インテリさいかわ天使ちゃん」って言葉が出てくるなんて想像もしていなかった私たちは、ついつい唖然としてしまう。


 え……っと、つまり、天音さんも配信者ってこと?


「ご存知ありませんか……私、これでも一応登録者20万人はいるんですが……」


「え!? あ、あー、す、すみません我々業界知識が乏しいものでしてー勉強不足で申し訳ないです! と、とりあえず中に入ってください、案件の話聞くので!」


 とっさに田中さんがなんとか誤魔化すように本題へことを運んでくれたおかげで、最悪な空気になることは免れた。

 で、でも……「インテリさいかわ天使ちゃん」って響き、すごくいい! 今日は天音さんの配信を見てみようっと。


「すみません粗茶ですが」


「いえいえ、ありがとうございます。ちなみにこのお茶を飲んだらお金とか請求されますか? 守銭奴の田中さん」


「え?! や、やだな〜そんなわけないじゃないですかぁ〜」


「ですが配信を見ていた際、田中さんのお金への執着心はとてつもないものだと思いまして」


「は、配信ご覧になられて……」


「見てなかったら案件のご依頼なんかしませんよ。皆さん個性があって、とっても面白かったですよ」


 そ、そうなんだ……天音さん、私たちのあの配信を見てくれたんだ……! たくさんSNSとかで応援コメントとか、褒め言葉とかもらってきたけど、直接言われたのは今が初めて。


 ああ、こうやって面と向かって言ってもらえるのも最高に嬉しい!


「えっへへへへへへエヘヘヘヘへ〜ありがとうございます〜」


「ウヘヘヘヘ〜そんなことないですって〜」


「グヘヘへへへ〜やだなー褒めたって何にも出てこないですから〜」


「皆さん調子に乗りやすいですね。これなら無理難題も聞いてもらえそうです」


「む、無理難題?」


「ええ。今回の案件、弊社の「変態奇人ろくでなし」と呼ばれる技術部が開発したこのマシーンと薬を使っていただきたいのです」


 天音さんはカバンから何枚か写真を取り出して、それを私たちに見せる。な、なにこれ……薬は写真じゃよくわからないけど、マシーンの方は……なんだろう、着るのかなこれ?


「マシーンの方から説明しましょう。これは弊社が製作したパワースーツです。元々それなりに高性能を誇っていたのですが、技術部がミヒロさんのファンでしてね。ミヒロさん、あとで技術部宛にサインください」


「え、嬉しい! もちろんいくらでもサインしますよ!!!」


 うわー、ずっと考えてきたサインを披露する時がついにくるなんて! すごいよ……私、そんなところまで来ちゃったんだ! う、うっへへへへへへへへ〜♪


「それで、ミヒロさんの配信を見ながらあなたの強さをパワースーツで再現できるようにしたらしいのです。なので、これを着ればミヒロさん並の戦闘能力を得られます」


「み、ミヒロちゃんの強さを再現!? そ、そんなことが可能なんですか!?」


「はい、技術部が言うには」


「そ、それはすごい……そしたら私たちもEXダンジョンクリアし放題じゃん!」


「ええ。なのでこれをカズサさんと田中さん、あと……もう1人、御社にはミヒロさん以外にタレントがいますよね? その方にも着てもらってこちらが指定するダンジョンに挑戦して欲しいのです」


 もう1人!? たまこし学園にもう1人私の知らない人がいるんだ……全然知らなかった。事務所でも田中さんとカズサさんとしか会ったことないのになぁ。


「え!? い、いやー、あいつは超絶サボリ魔なのでやってくれるかどうか……」


「そうですか。でしたら報酬はその分減らせていただくということで」


「呼びます。絶対呼びます」


「さすが田中さん。で、ミヒロさんにはこちらの薬を試していただきたいのです」


「こ、これはなんの薬なんですか?」


「セクシーな女性になれる薬らしいです」


「はい?」


「だからセクシーな女性になれる薬です」


「ダンジョン探索と何にも関係ないじゃないですか!!!」


 どんな薬なのかなって思ってたら、そんなわけのわからない薬だったなんて……。で、でも、興味が全くないわけでもないけど。


「すみません、弊社のクソ野郎がどうしてもミヒロさんに飲ませたいと言ってきてですね、メールも監視されてたので泣く泣く記載させていただいたんです」


「そんな事情が……」


「なのでそれは……まぁ、どっちでもいいです。一応渡しておきますが、飲まなくても報酬はお渡ししますよ。ほんと、いつかあの変態リケジョには制裁を加えないと……」


 どうやら天音さんも色々と大変みたい。でも、これを飲めば私も立派なレディーに……い、いや、こんな薬に頼らなくても私は立派な女性だもんね!


「さて、こちらからの要件はこれで以上です。あとは条件面とか色々と……ん?」


「どうしたんですか天音さん?」


「……いえ、虫が入り込んだかなと思ったのですが、気のせいだったみたいです。では、話を続けましょう」



———

「こ、こっそり天音の後をつけてアパートをよじ登ってみたけど……あれが磯部ミヒロね。ふ、ふーん、確かに可愛いけど、この超絶可愛い天使ちゃんことホチノミユには到底及ばないっての! 絶対次の配信邪魔してやるんだもんね……え、な、なに!? い、いきなりテクノロジアのドローンが……きゃああああああああああ!!!!」

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