ラブラブ☆バカップル転生無双! 〜愛しかなかったバカップル、異世界転生して愛の力(物理)で世界を救う!きみの心も救うのだ!〜

雨蕗空何(あまぶき・くうか)

バカップル参上!

第1話 バカップル死す

 この日、バカップルが一組死んだ。




 順序立てて話すことにする。

 場所は日本。とある町。時刻は夜。星空がきれい。


 その町の一角に、屋根が吹っ飛びバラバラになった家があった。

 ど真ん中に、黒こげアフロになって倒れる男女。

 かたわらに、しゅーしゅーと煙を上げる落ちたてほやほやの隕石。


 男がぼそりと、口を開いた。


「家族にだまされ、友人に見捨てられ、増えた借金は五千億円……

 なんとか返そうと質素倹約していたのに、突然隕石が落ちてくるなんて……」


「元気だったら逃げられたかもしれないけど、一ヶ月間道端の雑草しか食べてないから、力が出ないね……」


 横で女も、力なく声を出した。


 二人はバカップルである。

 二人の間にはあふれんばかりの愛があり、そして愛以外はなかった。

 おもに知能が足りなかった。

 ついでに運もなかった。

 その結果が、家族友人に裏切られての借金生活のうえでの、隕石エンドである。


 二人は手をつなぎ、見つめ合った。

 生気を失いつつも、いとしい相手を見つめて輝く瞳。周囲には桃色ハートマークが飛び交う幻影。

 二人は愛をささやき合った。


藍莉アイリ……たとえ生まれ変わっても、僕はきみとバカップルになるよ……」


虎一郎コイチロー……何度生まれ変わったって、わたしはあなたとバカップルオブバカップルを目指すよ……」


「叶うなら、来世は愛の力でなんでも解決する世界に生まれたいね……」


「愛の力でどんな悩みも解決して、衣食住も万事オッケーで、二十四時間愛をささやいているだけでいい生活をしたいね……」


「二十四時間……残念ながら、それは無理だよアイリ……」


「えっ、なんで、コイチロー……? そんなに愛をささやいてたら、コイチローはわたしに飽きちゃう……?」


「いやいや、そうじゃないよ、アイリ」


 コイチローはアイリの手を握って、告げた。


「だって、キスをしている間だけは、愛をささやくことができないじゃないか」


「コイチローっ♡♡♡」


 二人の心臓は高鳴った。

 そのドキドキがトドメになって、心臓が破裂して死んだ。


 二人のかたわらで、隕石が――言い換えれば、消えずに残り続ける流れ星が、二人の願いをずっと聞いていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る