第51話 高めあえる力
水月の眷属、驟雨に乗って、私は蚩尤と桃李と戦う。
驟雨の雷撃は蚩尤を焦がし、桃李を翻弄する。
「ねぇ、何だか怒っている?」
「ああ?」
荒ぶる驟雨の背中に乗る私は、時々振り落とされそうになって驟雨に尋ねる。
桃李と蚩尤相手に、私と驟雨は協力して戦っているが、どうもタイミングが合わない。
次々と現れる蚩尤に手を焼いている。
私が植物を操って蚩尤の動きを止めても、それとは違う蚩尤を驟雨が攻撃すれば、意味がない。案の定、攻撃は肝心のところで敵に当たらない。
「知るか!!」
冷たい。相変わらず驟雨は冷たい。
だが、驟雨のやり切れなさ、怒り、辛さ、悲しさ、そんなものがピリピリと伝わってくる。
同じように眷属である長牙を思い出せば、そのイライラの理由を予想する先は、自然と水月にたどり着く。
あれだけベッタリとくっついて側に控えていたのに、水月から離れている。
そう、今の長牙と一緒。いつも一緒にいたのに、長牙と私は離れているし、驟雨と水月も離れている。
「水月に何かあったのね?」
私の言葉にジロリと鋭い視線を驟雨が向ける。龍のひと睨み。怖い。
でも正解のようだ。
驟雨は何があったのか教えてくれないけれど。
「眼前の敵に集中しやがれ! 小娘め!」
露骨に水月と私で態度が違う驟雨。
こんな感じで連携を取って戦えるのか不安だ。
驟雨の雨が大地に染み込み、私の仙力の影響で芽吹いた雑草は、力強く大地を覆う。
柿の木は、グングンと枝を伸ばして、実をつけて種を落とす。
落ちた実からまた新しい木が生まれ、根をはり、枝を伸ばす。
柿の木だけではない。
乾いて死んでしまっていたように見えた大地から、ムクムクと様々な種類の木々や花々が顔見せて広がってゆく。
これは、私の力だけの作用ではない。
驟雨のもたらす雨の力が、私の力を高めてくれている。
相性の良い種類の力だと思うのだけれどね。
「ねぇ、驟雨。雨を蚩尤に降らせて……」
「これだから素人の小娘は困る! 今は、この死の大地を我らの有利なように変化させる方が先であろう!!」
叱られてしまった。
私にだって考えがあるのに。全く信頼関係がない私達。
「あらあら、さっきからチグハグね」
余裕の笑みで桃李は笑う。
「そ、そんな風に余裕ぶっていられるのも、今だけなんだから!!」
精一杯の強がり。
でも、勝機がないわけではない。
驟雨との連携は難しくても、子喬の仙薬で強化された仙力がある。
大地は緑に溢れて私に有利な状態となっている。
「そうかしら? 驟雨に聞いてみたら? 私の勝利も時間の問題だって分かるから」
そう……か。
自国という圧倒的な優位にありながら桃李がジリジリと大きな攻撃を仕掛けてこない理由は、その「時間の問題」を待っているからなのね。
「何があったの?」
もう一度私は驟雨に聞いてみる。
「水月が、虫の息だ……」
吐き捨てるような驟雨の言葉。
私の耳に入った言葉は、うまく意味を伝えずに滑り落ちていく。
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