第46話 グルグル
長牙は、グルグルその場を回る。
「遊んでいる場合じゃあないのに!」
「違いますよ! 一生懸命に考えているんです! だって変でしょう?」
「何が? 水月様を仙女達が殺害した。それだけのことだろう?」
「水月様を殺せるくらいの仙女って誰です?」
「あ……」
長牙の言葉に、子喬が言葉を失う。
確かにそうだ。
水月様の仙力に敵う仙女なんて存在しない。そんな仙女は、水月様と対なす桃華だけだ。でも、あの場に桃華はいなかった。
「それに、大雨に雷鳴……それは、水月様の眷属の驟雨の力でしょう? あの超絶偏屈で水月様意外はゴミカスとしか考えていない驟雨が、水月様に逆らって仙女の味方? そんなのある訳がないです」
じゃあ、一体何があった?
なぜ瀕死の水月様を放置して、水月様命の驟雨が姿を見せない?
クルクルクルクル、グルグルグルグル。
考えのまとまらない長牙は、回り続ける。
「ダメだ! めまいしてきましたぁ」
ペタンと長牙はその場にへたり込む。
「そんなグルグル回るから」
モフモフの長牙の背中を子喬が撫でる。
撫でている間に、水月の看病に必死だった子喬の心も少しほぐれて落ち着いてくる。
長牙の方でも撫でられれば気持ちが良いようで、長牙の喉がゴロゴロと音を立てている。
「でっかい猫みたいだ」
「失礼な! 由緒ある白虎の一族であるこの長牙! 猫とは違います!」
「なぁ、あいつは? 美華は一緒じゃあないのか?」
モジモジと言いにくそうに子喬に問われて、長牙は桃華を思い浮かべる。
そうか……。桃華に蚩尤の国の国主という分身がいるように、水月にも分身がいる。
「天帝が復活したんだ」
長牙は青ざめた。
水月を助けなければ、完全に復活してしまう。
そうなれば、今までの仙界の均衡は完全に崩れてしまう。
桃源郷と仙人界の横の均衡中心だった世界が、天界と蚩尤界の縦の均衡に取って変わられ、桃源郷も仙人界も終わってしまう。
きっと自分が先頭に立たず、仙女達を全面に出したのは、仙人界と桃源郷を争わせるため……。
天界の門を閉じさせ、仙女達を崑崙山に行くように仕向けたのも、天界に近い崑崙山で仙女達を味方に引き入れるためと考えれば納得がいく。
では、では、では、……! うひゃあ! い、痛い!
「コラ長牙! またグルグル回りだしていたぞ」
「や、だからって尻尾を引っ張るなんてあんまりではないですか!」
ニヒヒッと子喬が笑う。
元来、子喬はイタズラ好きなのだろう。
長牙はジンジンとまだ痛む尻尾を舐める。
「と、とにかく。このまま水月様が亡くなられてしまえは、この世界は本当に危うくなります。なんとか水月様を守らなければ」
「そうは言うけれど、どうすれば良いんだよ?」
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