九膳目:十月某日(木)ハロウィンの落とし物

 赤色、黄色、緑色。


 我が家の朝ごはんに彩られる基本パレット。

 しかし、年に数回、その配色が大幅に崩れる時がある。


 今月は、その該当月。


 朝食用ワンプレートが、オレンジと黄色の暖色で埋め尽くされることになる。

 十月最後の日の翌日、つまり、ハロウィンの次の日だ。


 毎年、我が家ではハロウィンの日の夜はカボチャ料理を出すことが定番となっている。

 別に特に“トリックオアトリート”といったイベントをやるわけでもないのだが、世間の風潮に流されてというか、何となく口が『カボチャモード』になってしまうのだ。

 しかも、ジジババが家庭菜園で作っているカボチャが大量に収穫取れるのも十月前半がピーク。

 切り込みを入れると日持ちしないので、取れたカボチャは丸ごとキッチンの野菜置き場にどーんと鎮座している。

 今年は大きいものと小さめのものが、合わせて四つ。

 それを消化するためにも、この十月最後の日にカボチャ料理を『思いっきり』出すことが定番になっている。


 去年のハロウィンの日の夕食に作ったのは、カボチャのクリームシチューに、ミニカボチャコロッケ。オーブンでミートローフを焼き上げ、その脇に海苔でジャック・オ・ランタンを描いたマッシュカボチャを飾り付け。あとは、ホットケーキミックスで作るお手軽パンプキンパウンドケーキをデザートに出した。


 それでも、使い切れなかった余り物のカボチャは、次の日の朝食メニューへまわってくる。

 

 カボチャのきんぴらに、カボチャのお味噌汁。カボチャ混ぜごはんにカボチャ芋のバター醤油焼きなど、洋食から和食へと変化はさせるが、どれもこれもカボチャ、カボチャ、カボチャづくし。

 そのため、ハロウィンの翌朝は、オレンジと黄色のほぼ同一色で埋め尽くされる。



 ハロウィンの落とし物――――



 まあ、これも我が家の一年の風物詩ということで。

 カボチャにあまり箸をのばそうとしない連れ合いからは、よいお言葉は貰えないのだが、数日後にはまた日常の彩りに戻すので許してほしい。



 さて。今年のハロウィンは、何を作ろうか。



「――、おはよう。ご飯ですよ」



 今日も元気に、いってらっしゃい。

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