第9話 GW1日目1

1日目。朝はいつも通り朝食を作ってから家を出る。1人なので黙々と足を進め直ぐに学校に到着した。

「失礼します」

教室に入ると誰も居なかった。どうやら1番手に来てしまったらしい。...ほんの少しの居心地の悪さを感じる。生徒会室は学校の生徒のトップが入るところ。俺みたいな人間には分不相応というものだ。そんないたたまれない空気で待っているとおもむろにドアが開く。そこには台車ダンボールを積んだ先輩が入ってきた。

「あら?早いじゃないの。それと、残念ね。貴方は1番手だと思ったかもしれないけれど15分前に来てる私が1番です。あと、今日は吉沢さんとは一緒じゃないのね」

一番にこだわりがあるのか?分からないが負けた気がして悔しい。

「今日はたまたま会わなかっただけです。今回のGWは吉沢さんの家に起こしにいかないと決めており、それを吉沢からも言われました。彼女も自立しようとしてるらしいです」

「それは素晴らしい事ね!一刻も早く自立して欲しいです!」

後輩思いの優しい先輩。流石は生徒会長だ。

「まぁ、彼女が来なかったらお仕置ですけどね。フフ...」

...

「あ、他の生徒会メンバーは後ほど来るからその時にでも彼女達を紹介するわね」

「助かります先輩」


「ちわーす!」

元気に挨拶をして入ってきた吉沢さん。俺が来てから10分後に来た。全然遅刻では無いので確実に彼女は進歩している。

「チッもう少し遅くていいのに」

先輩の急な舌打ちに背筋が凍る...何が不満だったのだろうか...

「お、おはようございます吉沢さん。今回のGWは昨日話した通りですので頑張ってくださいね」

「まぁ、これが本来の当たり前だからな〜。普通生活に戻れるようにこれからも頑張るぜ!応援しててくれよな!師匠!!」

「はい、応援してます」

満点の笑みで返してくる。笑う女性はとても輝いて見えますね。

「そろそろあの子達が来るわね。彼女達には仕事内容を説明しているから彼女達が2度聞きがないようにしたいので先に私から貴方達に仕事内容をお伝えしますね」

「「よろしくお願いします」」

「仕事内容は至ってシンプル。紙を束ねてホチキスで止めるだけ。簡単でしょ?ただし200を超える生徒数。早く終わってしまうと思いますので別の仕事もやらせる可能性があるのでその辺は臨機応変に頼むわね」

「わかりました」

「りょーかいです!!」

「他に質問はあるかしら?あ、そうそう。私は別の事務作業があるから3人1組でやってもらうわ。勿論男女別にします」

「はいはーい!それはなんでですか〜!!出来れば師匠と一緒がいいー!!」

ものすごい勢いで食いつく吉沢さん。確かに。見知らぬ人より知っている人と組みたくなる気持ちはわかる。が、多分だけど...

「女子同士男子同士の方が気兼ねなく会話ができると思ったからよ。それに貴女は彼女達に言葉遣いと会話を学ぶ事ね。その為に別々にしたのよ。で?これ以上説明はいる?」

「ないです...」

ストンと席につく。これは予測通りだ。先輩も先輩なりに彼女の生活を案じていたのだろう。

「先輩、ありがとうごさいます」

「あら?私何かしたかしら」

「謙虚なんですね」

「お淑やかなだけよ」

説明が終わったと同時にガラガラ、っとドアが開き4人の生徒が入ってくる。

「「失礼します」」

「失礼しま〜す!」

綺麗にお辞儀をして入ってきた女生徒2名、声が大きく元気な挨拶をして入ってきた男子生徒2名がそこには立っていた。

「皆おはよう。貴女達はこの子達と会うのはこれが初めてよね?」

「はい会長。ですので自己紹介の場を設けてくれると助かります」

「分かっているわ東山さん。では私から彼らを紹介するわね」

そう言って俺たちを手で指して俺達の紹介に入る。

「こちらの図体だけデカイのが鬼島怪斗君。こちらの胸だけはデカイ小さいのが吉沢澄子さんよ。皆仲良くしてあげてね」

「すみません先輩。少しいいですか?」

「ん?何かしら?」

「何かしらじゃないですよ!!何ですか図体だけデカいって!!それ悪口ですよね!?」

「私なりの褒め言葉よ?感謝して受け取りなさいな?」

「先輩は褒めてるつもりでも受け取る側は貶されてるだけです!!しっかり紹介してください!」

「そーだぞー!何が胸だけデカいだこの貧乳会長!!」

ピキっと先輩の額に青筋ができる。

「誰が貧乳よこのおっぱいお化け!貴女のその無駄な脂肪の塊なんてねどうという事は無いのよ!ただ、貴女に他に特徴がないからそう言ったに過ぎないわ!むしろ紹介してあげた事に感謝しなさい!」

ギャイギャイと言い合う2人。それを横目に1人の女子生徒が俺に近づいてくる。髪は黒髪ロングだがインナーカラーでピンクが少し入っている。

「へ〜?君がよく会長が話をしてる子か〜!初めまして鬼島君?で合ってる?」

よく話してる?なるほど...あられもない事を言われているに違いない...

「はい。そうですが?何で疑問形何ですか?」

「君噂では怪物君なんて呼ばれてるからw」

「それは存じてますが辞めて欲しいですね...」

「ごめんごめんwあたし、2年の東山春姫(とうやまはるひめ)って言うの!こんなんでも副会長だから!よろしくね〜!」

「はぁ。よろしくお願いします先輩」

この人の明るい雰囲気はどことなく朔夜さんに似てますね。あちらは影がありそうですがこちらの方は裏表無くて話しやすいですね。

「ちょ、ちょっと春姫!何て事言ってるの!別に私は鬼島君の事は...」

「いっつも生徒会室でブツブツ言ってるじゃないですか〜?(ニヨニヨ)」

「あ、あれは...その...」

「大丈夫ですよ東山先輩。どうせ悪口ばかり言っているんですよね?普段の生活で十分分かってます...」

「!?」

「うん...」

東山先輩は何故が唖然とした顔で俺を指さし、真城先輩の方を向いている。そして真城先輩は謎のうんを言う...テレパシーで会話をしているのだろうか...

「これは〜...長い戦いですね〜w」

「そうなのよ...誰か助けてくれないかしら...ハァ〜」

「なぁ!あんちゃんデケーなー!!!タッパ幾つよ!」

そう話しかけて来たのは坊主頭が似合う雄々しい男子生徒。

「ん?あんちゃんと言うのは俺の事ですか?それにタッパって?」

「あぁ!ごめんごめん。俺、雑務の西川夏目(にしかわなつめ)っていいます!基本パワー担当で助っ人をメインに生徒会入ってます!1年で同じですよね!あ、それとタッパって言うのは身長の事です!」

この人は凄い早口でハキハキしていて気圧される...少し苦手かもしれない。でも人当たりは良さそうだ。

「俺は身長199あります。これでいいですか?」

「199!?すっげー!俺170しかないから羨ましいよ!!」

とても素直でもありますね。

「じゃあさじゃあさ!」

次を言いかけた時に頭にゲンコツを食らっている。

「あんたうるさい。ビックリしてるでしょ?」

彼の頭にゲンコツを食らわせたのは茶髪ロングのメガネをかけた凛々しい女子生徒。

「初めまして鬼島君。私は2年の北原冬美(きたはらふゆみ)と申します。生徒会では書記をしています。会長がいつもお世話になっております」

メガネをクイッとさせてから軽く会釈をする。

「こちらこそ!先輩にはいつも良くしてもらってます!」

軽く会釈をされたのでつられて90度でお辞儀をしてしまう。

「そんなに固くならないで欲しい。先輩後輩なんて学校のルール。気軽に北原さんでいいですよ」

「わかりました北原さん。今後もよろしくお願いします」

「えぇ。よろしく。最後に彼から。秋」

そう呼ばれて前に1歩出てきたのは黒髪マッシュの男子生徒。

「1年...生徒会会計...南野秋風...よろしく...」

「よろしくお願いします」

「ごめんなさいね。この子結構シャイだから...そのシャイを転じてクールキャラが定着してるけど人見知りなだけだから」

「そうですか。わかりました」

とりあえず自己紹介を終えたがどこか引っかかる。

「あの。失礼を承知での質問なのですが皆さん東西南北と春夏秋冬が入っているのは偶然ですか?」

「それはあたしが説明すんね!」

そういって東山先輩が前に出て話しかけてくる。

「駅前にある和菓子屋分かる?」

「はい。春夏秋冬ですよね?とてもデカイお店で妹があそこの四季団子が好きなので、たまに寄ってます。まさか!」

「そ!うちらはそこの子供でーす!」

「正確には4つの家族が経営してるってなります。我々は親戚同士なのです」

北原先輩が補足説明をしてくれて納得した。

「なるほどです」

「はいはい!お喋りもいいけど仕事の量は大変だから自己紹介はここまでにして作業に入るわよ」

真城先輩からの号令で業務に取り掛かる。

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