第33話

 入学から1週間が過ぎた。

あの1件があってからというもの、レオナは俺達に突っかかることが無くなった。

 その代わり、どこか挙動不審で、いつも何かに怯えているような顔をするようになった。


 つまりは、そう言う事だろう。

俺から彼女へ、イジメのターゲットが移ったのだ。

 元々人付き合いが得意な性格ではなかったのだろう。

 そこに、以前の『希粧水』での買収によって、俺が女子からの支持を受けてしまった。

そうなれば、突っかかってきたレオナから俺を守るといった大義名分の下、やや不愉快なレオナを虐める事ができるという事だ。


 ......


「不愉快極まりないな。」

「どうした、ノァ?」

「なんでもない。ハクはレオナの事をどう思う?」

「んー、ノァの事を馬鹿にするけど、この前勉強教えてくれたし、分かんない。」

「じゃあ助けるか。」


 ハクの面倒を見るとは、殊勝な心がけだ。

しかし、どうした物だろうか。


◇◆◇


「注目。」


 昼休み、各々で机を固めて昼飯を食べている時に、俺は行動に出た。

女子も男子もいくつかのグループに分かれているが、一人で食べているのはレオナだけだ。


「レオナを苛めているとの情報が入った。誰がやった?」

「イジメてなんかない!ノアくんが困ってるから近付かないように言っただけ!」

「それにレオナのせいで授業中断したこともあったし。」

「正直迷惑なのよ!」


 レオナへの罵詈雑言が飛び交う。

少し前の俺を見ている気分だが、これを見て愉快な気持ちにはならない。

 例え、俺の事を【無能】だと蔑んでいたやつでも、そういう気分にはなれない。


「だからといって、除け者はやりすぎだ。物を隠したりとか、聞こえるような陰口とかは無いよな?」

「流石にそこまではしてないよ...」

「そんなことしたら私達まで......」


 女子たちが口々にそう言う。

という事は、まだ無視されているだけのようだ。


「物を隠すことや陰口を言うことをやり過ぎと感じるのならまだ良い。もしもなにか困ったことや悩み事があれば俺に言ってくれ。そうすればできることはなんでもやる。今回はこんな感じだ。」


 俺は『ボックス』の中から複数枚の『自作布』を取り出し魔力を通す。

それだけで女子達の身体に巻き付き、自動で服を仕立てて行く。

 

 ちなみにこれにも更なる改良があり、着る者の好みを把握するようになった。


「なにこれ、可愛い!」

「すっごい綺麗......!」

「それよりもあれ、見て、レオナさん!」


 一人の女子がそう言ったのを皮切りに、周囲の視線がレオナに集まる。

そこには、絵本の中に出るお姫様の様な、ピンクのフリフリドレスを着たレオナがいた。


「な、なんでこんな服を...!?」


 赤面と目尻に浮かんだ涙が罪悪感を掻き立てるが、それ以上に周りの反応は目覚しかった。


「可愛い!」

「おひめさまみたい!」

「レオナさん可愛い!」


 各々の好みの衣装になっている筈の女子達が、レオナの服を見ている。

それは、製作者としては複雑な光景であったが、同時に少し嬉しくもある。


「これで打ち解けられたかな?次からはこういった事は俺に報告してくれ。」

「「「「はーい」」」」


 女子達の元気な声が木霊して、今日も昼休みは続く。

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