第12話

 結局の所、姉VS俺&ハクの戦いは夕方まで続いた。

その結果、姉は無傷、俺達は体力も底を突き、肩で息をする程の疲労を負った。


「二人とも上達が早いね。やっぱり才能があるよ。」

「それは......嬉しい。」


 最早俺も、元の可愛い弟像を完全に拭い去り、俺個人として姉と話していた。

そして、姉もそこまで気にする様子は無く、地面に倒れている俺達を見降ろして、微笑みかける。


「きっとあと五年もしたら、お姉ちゃん負けちゃうかも。」


 五年、五年か......

 少なくとも、特待生として奨学金を貰える程の実力を持った姉がここまでの実力を身に着けるまでに要した時間。

 それは、ハクの様な才能溢れる人間なら可能な期間だが、俺はどうだろう。


 正直、到達できる気がしない。

だが、


「二年で追い付いてやる。三年目には更にその先だ。」


 俺は才能なんてモノは信じない。

才能なんていうのは、努力をしない負け犬の言い訳。

 大声も出さず、カッコ悪いと決めつけ、小さな声でブツブツと文句を垂れる。


 そんな人間にだけはなりたくない。


俺は、最も効率的な方法で、最も高く研鑽する。



「じゃあ、楽しみにしてるね。」

「俺があんたを越えたら、逆にあんたを養ってやるよ!」


 既に弟キャラは捨てた。

もう恥を忍んでまで姉のご機嫌取りなんてするか。


 この目標が俺の第一通過点。


 

◇◆◇


「えっと、大丈夫?何回か体にも当たっちゃったから、痕になるかもしれないし。」

「だ、大丈夫。」


 大きく啖呵を切った割には、姉に甲斐甲斐しく世話をされてしまう。

姉の首に頭を預け、背に抱えられている。


 まあ、「おんぶ」だ。


 精神年齢がイキシア(13)よりも高いせいで、苦行以外の何者でもない。

おそらく、今の俺の顔は真っ赤になっているのだろうが、ここは冷静になろう。


 姉との戦闘で上がったステータスや、取得した称号を確認する。


 ◇ ◆ ◇ 


HP:30/30→15/42

筋力:14×1.3→16×1.3

魔力:34×1.1+1000→52×1.1+1000

敏捷:15×1.56→17×1.56

忍耐:40×1.2→43×1.2


【剣士見習い】→【剣士】筋力が1.1倍→1.3倍になる。


 ◇ ◆ ◇ 


 まず、最初に気付いたのは、魔力の上昇値だ。

今までは、全力で魔力を消費しても、少しずつしか上がらなかったのに対して、今回の訓練だけで18も上昇している。


 これは、訓練の際に常に魔力を練り続けていたため、器が拡張されたのか。

それとも、精霊との契約によって、徐々に魔力が慣れて増えているのか。

 はたまたそれ以外の原因かは定かではない。


 そして、次と言えば称号。

これまで、習得のみで称号の進化を目の当たりにした事は無く、これが初めての経験である。


 1.1から1.3へと変化したのは、微々たるものかもしれないが、俺はそうは思わない。

こう言った倍加する効果というのは、基礎が高ければその分昇華する事ができる。


 つまり、俺が強くなるスピードは、一般人と比べて、1.3倍というわけだ。


 さて、最後に、こちらをちょっと見てもらいたい。


 ◇ ◆ ◇ 


[精霊使い見習い]条件達成1/4

[木こり見習い]条件達成2/5

[鑑定士見習い]条件達成1/2

[弓士見習い]条件達成1/4

[棍棒使い見習い]条件達成2/5

[上級剣士]条件達成1/15

[斥侯]条件達成3/7

[上級受け身士]条件達成4/13

[護身術士]条件達成3/9

[魔法使い]条件達成4/6


 ◇ ◆ ◇ 


 なんとなく、【称号】の項目をタップしてみたら、こんなモノが出て来た。

察するに、これらの称号を得る為の条件や、取得可能な称号についての欄だろう。


 こんな大切な物を見落とすなんて、一生の不覚だった。


 が、こんな遅れは気にせず、前向きに行こうと思う。

恐らく、初期称号(【見習い】シリーズ等)は、1~5程度の条件をクリアすれば得られるのだが、それが徐々に上がるにつれて、その個数も多くなって行く。


 何の無理ゲーなのか、【上級剣士】は15項目もクリアしないといけない。



 また、これらの項目もタップすることで、どんな条件かを見られるらしい。

例えば、[木こり見習い]であれば


[木こり見習い]条件達成1/4

・筋力が15以上 ☆

・斧を手にする

・####

・####


 こんな感じだ。


 クリアしている条件には【☆】のマークが付き、その下の条件は見えるようになる。

そして、それ以外の条件は上がクリアするまで見えないと、そういう仕様のようだ。


 次に、この称号候補の項目数が異様に多い。

つまり、ここに載っていない称号達は、まだ一つも習得できる条件を満たしていないか、俺には習得できず、ここに載っているモノまでということなのかは分からない。


 できれば前者であってほしいのだが、その場合も、最初の一つを見つけるのが大変だ。


とはいえ、こんな身近に効率の良い方法が載っていたとは、あの女神パルエラめ、今後三日は喋りかけんぞ。


『え!?そ、そんなぁ!』

「ふ、ふふふ。」

「?どうしたの?どこかくすぐったかった?」


 俺は泣きごとを言うパルエラと、不思議そうにこちらを覗くイキシアに挟まれて、今後の成長を楽しみに、気絶した。

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