第6話

 ハクと最初に遊んでから数日が経った。

その間、文字の勉強も魔力やステータスの育成も順調に行い、徐々に増やす事に成功していた。


◇ ◆ ◇

筋力:5→8×1.1

魔力:6→14×1.1

敏捷:3→4

忍耐:6×1.2→8×1.2

知力:12→15

幸運:100


【魔法使い見習い】魔力が1.1倍になる。

【剣士見習い】筋力が1.1倍になる。


◇ ◆ ◇


 成長はしている......と思う。

父や母のステータスと比べてみて、【幼児】の称号の効果を鑑みても、ちゃんと育っていると思う。

 しかし、それはつまり俺が自主的に鍛えないことには、他人と比べて明らかに劣っているという事を指す。

 複雑な気持ち。というよりは、努力が実っているのに、比べる事によって悲観的になってしまう。


 こんな調子で、偉業を作ることはできるのだろうか。

いや、よく考えてみれば、神は偉業についてそこまで詳しくは説明しなかった。

 つまりは、最強にならずとも何か大きなことを成せば良いと言う事だろうか?


 どうにか神に聞けないものか......いや、聞けるな。


【最高神の加護】最高神との通信が可能 解放レベル1

【恋する女神の加護】女神パルエラとの通信が可能 偶像召喚 解放レベル2


 俺には二つの加護が存在する。

記述にある通りなら、何故か【恋する女神の加護】の方がレベルが高く、偶像召喚という追加効果があるそうだ。


 どちらが良いとかそう言うのは分からないから、とりあえずレベルの高い女神の方を使う事にする。


そうときまれば、皆が寝静まるまで待つ事にしよう。


◇◆◇


 夜中。

月と星の光る夜空を眺めながら、音で家族が眠ったかを確認する。

 ふむ、まだ母と妹が寝ていないな。

 暇を潰すにあたって、この世界の天体についてを考える。


 この世界の星の配置は、地球とは全く違う。

が、昔の英雄の名が星座の名に。魔物の名前が星の名前になっていたりする。

 そして、ファンタジー世界のおなじみである月が二つある。なんて事は無い。


 そもそも目視できるレベルの大きさの衛星がある星ですら地球くらいなもので、他の惑星にはゴミの割っかや小さい衛星がコロコロあるだけだ。

 それが、二つ物大きさがあって、惑星に何の影響も無い訳が無い。

 少なくとも、知的生命体が生まれたとしても、人型ですら無い可能性だってある。


 が、そこは神の存在する魔法の世界だ。地球の常識は捨てた。

何よりも、神という存在のせいで俺は今までの常識というものを捨てないといけなくなったわけだからな。


 しかし、人間の体の作りは変わらず、元素や物質を構成している原子は地球と変わらないという。


 ここからは完全な憶測ではあるが、こういった異世界というのは、神々が何かしらの基本テンプレートを用意して、そこから様々な要素を加えて多数の世界を作っている故にできるものではないかと思う。


「ん、寝ましたか。」


 妹と母が眠ったらしい。

絵本でも読んでいたのかな。


「【偶像召喚サモン・アイドル】」


 魔力は消費しないらしい。

便利ではあるが、人に見られるのは良くないと思っている。

 淡い光が部屋を見たし、一ヶ所に集まる。

 それは人の姿を作り出し、転生前に会った女性の姿を形作った。


 真珠色の髪に宝石の様な緑色の瞳。

その体は服の上からでも分かる程に芸術的で、おそらく裸体であっても性的興奮は覚えないであろうほどに美しい。

 そんな美女は、俺の顔を見た瞬間ににへらっと笑う。


『やだ~!ノアちゃんショタ可愛い~!お姉さんに抱っこされない?』


 なんというか、残念な美人だ。

俗世離れした美貌がその俗世っぽさを際立たせる。

 しかし、ショタに恋するお姉さんというのは、駄目ではないだろうか?


『そんな事無いわ!おねショタは一定数の需要があるものよ!』

「ナチュラルにこころをよむな。」

『ショタボ良い~!』


駄目だコイツ、はやくなんとかしないと。


「本題に入ろう。簡単に言えば、称号や加護の存在を知っている筈の人間が、何故それを実践しないのか。それと、成すべき偉業について、種類は問わないのか。」

『うーん、前者についてはしかたないと思うの。異世界の記憶を持っている人間以外は、それぞれ役割をもち、それに応じたステータスを持っているだけの一般人、つまりはNPCに当たるわ。それでも、ちゃんと動き考え、死ぬ事もあるけれど。』

「NPCというよりは人工知能だな。」

『ええ、けど、その場合は機械に使われるし、なにより作った本人は人間じゃないから、NPCと表現しているの。彼らは常識にとらわれた考え方しかできず、何百年間も同じことを繰り返しているわ。それを覆せるのは別の世界から来た人間だけ。つまりアナタや別の誰かの事ね。その彼らがそういった事を教えなかったから、後世には残っていないのよ。』

「そうかい。」

『次に、偉業というのはなんでも良いわ。アナタが神になる為に必要なプロセスとして、それを成さないといけないだけだから。つまり、料理で革命を起こすのなら料理の神になったり、魔法で革新的な事をしたら魔法の神になったりするの。それはあなた次第だわ。』

「じゃあアンタも、恋して偉業を成したのか?」


 【恋する女神】パルエラであるなら、恋する事が偉業であるわけだ。

しかし、万人がそう受け止めるだけの恋とは、一体なんだというのだろうか?

 気になりもするが、それを聞いたパルエラの表情が暗くなってしまったので、それ以上は聞かない事にした。


「わかったきかない。」

『言いたくないのが伝わったの?やっぱり私達、以心伝心ね!』


 気を遣ったらこれだ。

見極めが難しいな。


「ともかく、きょうはありがとう。これからも呼ぶかもしれない。」

『そのときは遠慮なく呼んでちょうだい!私はなんでも力になるわよ!』


 そう言って、パルエラは消えてしまった。


『【恋する女神の加護】の解放レベルが3になりました。追加効果 憑依を獲得しました。』


『というわけで!これからは四六時中ノアちゃんに付き纏うことになりました~!』


 エア拍手の音が聞こえる様だ。

んん、頭を抱える理由が増えそうだ。

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