第12話 クロード視点〜ケインはデキる奴


(やっっと終わったぁ~~)



 クロードは机から体を離し、大きく伸びをする。

 ケインに馬車馬の様に働かされたおかげで、ようやく婚約指輪の代金分の働きを終えたのだ。




(あぁ……エルシアに会いたい)




 エルシアとは、ご褒美にナデナデしてもらって以来、会えていなかった。

 クロードはいつでも来て欲しかったが、彼の激務さに遠慮させてしまったようである。


 だが代わりにエルシアから3日に1度、体調を心配する手紙が届き、それがクロードの生き甲斐であった。



(……よしっ!)



「ケイン、エルシアにお忍びで会いに行くと連絡してくれ」


 クロードは側に控えているケインに声をかける。


「……殿下、その前にお伝えしたいことが」


「これ以上の仕事は嫌だぞ!」



 恨みがましい目とその子供っぽい言い草に、ケインはハァーー。と溜め息をついた。




「違いますよ。エルシア嬢にお会いになるなら、一緒にお披露目パーティーのドレスを選んでは?」


 ハッ!


 クロードはその言葉で、パーティーまでもう一月もない事を思い出した。

 今からではオーダーメイドのドレスを特注するのは無理がある。



(俺としたことがっ。)




 後悔で頭を抱えるクロードにケインは呆れた表情で語りかけた。


「やっぱり忘れてましたね……まぁ仕事で忙殺されていたので、こちらにも責任がありますが」


 これはお詫びです、と言ってケインは1枚の予算案を差し出した。


 

ーー次期王太子妃の予算案についてーー




「……何だ、コレは?」


「エルシア嬢の服飾費及び社交費が、正式に国家予算に付いたと言うことです」


「本当かっ!!」


 エルシアは国王陛下への謁見も経て、婚約の許しは得ている。

 だが、お披露目パーティー直前に婚約を結ぶこととなったため、今はまだ只の伯爵令嬢の一人だ。




 そのため彼女への贈り物は婚約指輪であっても、ドレスであってもクロードの自費(足りない分は労働)で賄うのが通例である。


 勿論、クロードはいくらでも残業に明け暮れるつもりだったのだが。




「本当ですよ。陛下には渋い顔をされましたが。これでも敏腕側近なんで」


「やるな! ありがとう、ケイン!!」


 予算案を片手にエルシアの元へ飛び出そうとするクロード。


 だが、ケインはもう一つ付け足す。


「殿下、もっと褒めて下さい。貴族御用達しのブティック・ヴィテスに本日午後より予約を入れております。エルシア嬢にも予定を開けて頂いております」


 にっこりと笑うケインが天使に見えるクロードは抱きついた。


「……愛してるっ。ケイン!!」


「フッ。いってらっしゃいませ」



 こうして、数人の護衛騎士を連れて伯爵家に向かったクロードであった。


 

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