(続き8)

現在できるようになったことは

”熱、運動、光”これら三つ

そして運動ができているのなら”音”も範疇だろう


残るは電気と化学エネルギーだが、化学エネルギーはすでに検証済みだ、なぜなら脂肪を吸収されて亡くなってしまう人が存在するからだ、

それは脂肪を直接エネルギーとして取り出せる根拠になる


でも化学エネルギーも突き詰めていけば力学エネルギーと熱エネルギーの組み合わせみたいなもんだぞ?


この杖は人が考えるエネルギーの関係図とリンクしているのか?

それともなにかそのようにプログラムされているのか?


納得いかない箇所もわんさかある

まず植物からエネルギーを介した時はエネルギーを媒介したのか、変換したのかわかっていない、

光合成の化学エネルギーから光エネルギーに変換したのか、直接光to光で媒介したのか…謎である


それと気になるのはエネルギーの吸収元の判定だ


今までエネルギーの供給元になるものを左手に持って魔法を使っていたが、脂肪を吸われて亡くなった人がいるのなら左手に限った話でもなさそうだ


単につながっているというのがトリガーになっているのか、確かにこの杖は人間の思考と深くかかわっている、であればあながち間違いでもないかもしれない


***


その後も実験は続いた、

自分に力学台車を当てて、そこから運動エネルギーを抽出、それで熱を起こすことにも成功した

もらったエネルギーをそのまま返すことにも成功した

つまり、私に当たりに来た力学台車を威力をそのまま反転させることに成功したのだ、

これで永久機関が完成するかもしれない!っと思ったが

与えたエネルギーをそっくりそのまま返すだけでは第二種永久機関にしかならない

それに青木さんと私で適当な板を左手に持ってお互いに力学台車をぶつけ合ってみたが、やっていると徐々に速度が低下しているのが分かった、空気や接地面から摩擦をとられているのだろう、かなり長い間動くとこはできるが、永久には動かないしエネルギーをとることは叶わない


その他にも、光の実験には力を入れた

さっきと同じように左手に植物を持って、光を運動エネルギーに変換したり、様々な波長の光を出したりしてみた

結果は私の想像通りだった

植物を通すことで私は光を操ることもできるようになったのだ


運動エネルギーから光に、熱エネルギーを光にすることもできた


あと、光の多さによって魔法の強さが変わるのかどうかを調べたくて、追加で適当な雑草をちぎってきて、光の当たる面積を増やしてみたが、さほど変わらなかった

理由が知りたくて、考えた仮説は

「植物の種類」だった

そもそも、この魔法を起こせるのが「シメテ」という特殊な木のおかげであるので、偶然私が特別な植物を手にした可能性も少なくない

私が先ほど手にした植物は青木さんに聞いても種類が分からなかった

茎が丈夫そうで、葉が大きくていかにも”雑草ですよ”と言いたげな見た目をしているが…

私の専攻は生物学ではなく化学物理なのが悔やまれる、植物は全くわからない


他の種類の植物を左手に持って、光が出るか試してみたが、

光は出てこなかった…

あの植物について考える必要がありそうだな


しかし私の力ではできることに限りがある

そもそもどのようにエネルギーを介しているのか全く見当がつかない、どのような仕組みなんだ?


仕組みと言えば、まだわからないのは…


と、唐突に口が大きく開き、反射的に空気が肺に詰め込まれた


「~…今何時だ?」


私は今、青木さんが用意してくれたろうそくの前でノートを付けている

時刻は遅く、外はすでに暗闇になっている


「…午後から今までずっとこれ書いてたのか」


光の実験が行えるのは太陽がある時間帯のみ、太陽が出ている時間帯はひたすらに光の実験をして

日が沈んだら運動エネルギーの実験をして…


そして完全に日が沈んだらこのノートに実験結果をまとめる

…話は戻って、先ほどの疑問だが、

「どのような条件で、どこが、エネルギーの供給元に判定されるのか…かぁ」


実際、左手以外でもエネルギーは取られる、力学台車からエネルギーをとろうとしたときに触っていたのは力学が走っていた机だ

熱も光も、きっと”触れている”というのが条件なのだろう、

空気でその条件が満たされないのは…空気の熱伝導性が非常に悪いからか?


”伝わる”というのが重要なのかもしれない


 ここまで書いて私は体制を立て直し、肩を伸ばしてストレッチをした


どこまで実験しても、あまり状況は変わらない、

理系たるものとことん細部まで洗いざらい暴いてやりたいところだが、十分な実験設備はなく、今まで記録してきたものはすべて正面上にあるものに仮説立てしているだけなのだ、まだ何もわかっていない


「それでも、調べることに価値はある、ここではこんなに素晴らしいものをまだ実用化することができていない、これを実用化できればこの現状を変えられるんだ」そうつぶやいた


私の発言でロウソクの火が微かになびく


私は手遊びする要領で左手をロウソクの火に近づけ、杖を使って与えられた熱量を別のところに逃がしていた


もう左手に炎が当たっていてもおかしくない程に近いのに、熱さは全く感じず、杖側から温風が垂れ流されている、

イメージを変えてやれば線香のように先端を光らせることもできる


左手に午前中の実験で使った葉っぱを持ちながら同じことをすれば、与えられた光が杖の先端から発生する


本当によくできている、


いつどんなところでもエネルギーを取れるようになればもっと使いやすくなるのになぁ


「…あぁ」


そうだ、その通りだよ


常にこんな風に取れるような道具を作ればよいんだよ、

現代でも、毎日使っていたじゃないか、コンパクトで汎用性に長けた電気を起こせる道具


 を作ればよいんだよ!!


炎みたいに状態変化をさせる時に発生する熱、光エネルギーをとれる箱を作ってしまえば良いんだ!!


思いついた時ハッとした!

その瞬間


手がとてつもなく熱くなってきた


私は飛び上がった、二重の意味で、

しまったな、常に意識を向けてないとだめだった。


私は次の日にする事、そしてその日のためにしておくべきことを理解した

…まぁとりあえず水を用意して手を冷やして来よう


いやそんなことしなくても魔法で冷やせばよいか

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る