・市場にて

 歩きながら途方に暮れているなか、行き交う人々の服装の違いに気が付いた、私たちと同じ方向に歩く人々は身軽なのに対し、こちら側に来る人々は膨らんだ布バックの荷物を持っている。

そんな変化に気づきながら、私は目的が待ち構えている前方に期待していた


「見えてきたよ、スーパーだ」

「スーパーだと?…」

そこに見えるのはスーパーのように様々な商店が一体化した大型施設ではなく屋台のような店が細々と道に沿って広がっているだけだった。

まさに古今異義語にふさわしい光景が行き渡っている

「…スーパーと言うか、屋台と言うか、市場では?」

「一般にはスーパーだ」

「はぁ…」

彼のセリフを横で聞きながら私はその商店街、もといスーパーを見回った


干し肉がつるされていたり、干された魚が陳列されていたりと、現代でもたびたび見れる露店の光景が目に映る

人々はその商品を何か紙のようなものと交換して購入しているように思える

通貨のやり取りが行われているのか


様々な商品が並んでいる中、一際目を引くものが売っていた

それは大きめのビン?の中に入っていてその容器には漢字でこう書かれていた


{洗剤}


それだけならそれほど意外なものではないが

まず

「…漢字?しかも意味が通ってる?」

そして

「これ容器の材質ポリエチレンテレフタラートペットボトルでは?」


露店が広がってる異世界雰囲気の中でペットボトル?

居てもたってもいられず、私は青木さんに目を合わせた

青木さんも私の視線に気が付き、彼は私の言わんとすることを理解したようにしゃべる始める


「これはね”物券ブッキン”だよ、ここで使われている通貨みたいなもので相手の言い値で交換し合うんだ」

そういって彼は三枚ほどの物券を取り出して私に見せてきた


…違うそこじゃない、確かに通貨のことも気になるが気になるのはそこじゃない


青木さんは誇った表情で私を見ている

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