第9話改

諸事情で一旦投稿していた話を消させていただいたうえでコメント欄での意見を採用し、改稿を入れさせていただきました。前回投稿させていただいた九話とは話の流れそのものが変わっておりますが、ご了承いただけますと幸いです。




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 彼らはその後、ごく普通のカップルのように憎たらしいほど楽しげにそこら辺をデートした後、ホテルに入っていった。流石に中に付いて行って覗く趣味はないので適当に入っていくところの写真をパシャパシャと撮って僕はここで分身を撤退させる。


 ダンジョン内を探索しながら処理方法について考え込む。


 やっぱり同じ悪夢ナイトメアという手ばかりを使うのもつまらないしな……。九条をまだ苦しめられてはいないとはいえども代わり映えもしないし……。うーん。


 僕は頭を悩ませる。


 あと、その悠乃って人の対応どうしよう……。


 悪夢ナイトメアを仮に見せるとしてもどんな夢がいい?加奈と同じ男性恐怖症にするか?


 いや、それこそ本当に代わり映えしないしな……。というよりさっき勢いで九条と一緒に燃やしてやるよって言ったけど、その人の交際相手の意思とか全く配慮してないな……。そもそも、九条と浮気していたというだけで僕と直接の関わりもないし……、勝手に手を下すのも浮気に虫唾が走ったとはいえ正義の味方でもないんだしあれか……。


 いや一応あっちの世界では勇者やってたか。


 くだらないツッコミをしながら考え込んでしまい、ダンジョン探索から意識を手放しそうになった僕を西野さんが繋ぎ止める。


「上野くん?どうしたのさっきから。なんか必死に何かを堪えたり考え込んだりしてるけど。何か悩み事でもあるの?」


 正解。悩み事しかないです。


「いや、ちょっとボォッとしてただけ」


 考えても無駄だなと割り切った僕はここで何かをするというのは諦めて明日、悠乃という女子の交際相手の心情を読んでみて処分を決めることにした……。



 翌日、僕はその悠乃という女子と知らない男子が校内を歩いているのを見かけた。というよりは監視をしていたから見つけたが正しいのかもしれないが。

 

 僕はとっさに思考解析を男に飛ばす。お願いだからこの男も浮気している屑みたいな展開はやめてくれよと祈りながら。


 ああ……。


 僕はそこで思わず眩しいものを見た気がした。それは僕の悪い予感とは全く裏腹で彼の頭の中には、加奈の浮気を知るまでの僕と同じ、カノジョを大切に思う気持ちしか詰まっていなかったからだ。


 僕は思わずその何も知らない彼に対して、まだ失われていない輝きに一種の羨望を抱きつつも昨日の夜考えた作戦、を残酷ともとれる計画を実行に移すことに決めた。



 放課後、僕は彼が一人で校舎内を歩いているところを僕の部屋に問答無用で召喚魔法で飛ばした。別に魔法の存在を知られようが知られまいが、彼とこれからする会話についての記憶は消すので構わない。


 いきなり僕の部屋に呼ばれた彼は呆気にとられた様子で僕のことを見てくる。


「やぁ。初めまして……だよね?上野天と言います」

「……色々と悪い意味で有名人だから違うクラスでも知っている。僕の名前は久保田颯志。いや、そんなことはいい。ここは?僕は普通に校舎の中を歩いてたはずなんだけど……」

「僕が呼ばしてもらったんだ」

「呼んだ?」


 これから僕が彼にする話を手っ取り早く信じてもらうためにも僕は適当に魔法を起動する。流石に派手なものを撃ったら部屋が崩壊するので初級魔法の火炎球を浮かせたり、閉め切っている風を起こしたりする程度だが。


 それで一応は、彼の中で僕が無能ではなく、謎に魔法を使える存在という認識になってくれたのを思考解析で読み取ると早速本題に入った。


 昨日の九条と目の前の彼の彼女の浮気シーンの写真をスマホで目の前に突き付けながら、昨日僕が見ていた光景を記録魔法で保存していたのを伝達魔法で彼の脳内に直接送った。


 それを見た彼はいきなり僕の胸倉を掴んで来ようとした。僕はそれを食らうことなく躱す。


「なぁ、どういうことだよ、上野。僕を苦しめたいのか?こんな変なものを見せて……」

 

 僕はその怒りの混じった、悲痛そうな顔を浮かべている彼に魔法を止めることなく容赦なく現実を見せていく。


「残念ながらそれは現実だ。昨日の放課後、君は君の彼女と一緒にいたか?」

「いや、いなかったけど……」


 グダグダ言われるのも面倒なので信じてもらう方向に思考誘導魔法をかける。


 僕だってこうして苦しめたいわけではない。ただ、現実というものは常に残酷だとあっちの世界でも現実世界でも散々教えられて僕は知っていたし、どうせここでの記憶は彼の脳内から消してしまう。だから、僕は淡々とした様子で続ける。


「ああ……オエェェ……」


 僕の記録魔法が終わるころには彼は地面に膝をついてすっかりうなだれて気持ち悪さからか食べたものを吐き出してしまっていた。


 僕はその僕の部屋に出された吐瀉物を消去クリアと唱えて消す。こういう掃除とかには便利なんだよな。この魔法。どうせなら魔力を持つものも消せたら良かったのに。閑話休題。


「君には選択肢がある」

「……」

「一つ目は君の記憶をこの事実を知る前に戻した上で」

「記憶を消せるのか!」


 やけに食い気味に彼は僕のほうに寄って来る。


「ああ……、だが人の話は最後まで聞いてくれ」

「すっ、すまない。……ああ、この苦痛から逃げれるのか。早く、早く……助けてくれ……」


 話を聞くどころじゃなさそうな、最早少し情緒が崩壊しかけている彼にそっと精神安定魔法をかける。


「一つ目、君から浮気されたという事実を知った記憶を消した上で君の彼女の脳内から浮気をしていたという記憶、というよりは九条に関連する記憶そのものを消して元通りの平和な生活を送ること。二つ目に……、いやこれはこの様子だとないか……」


 流石に早く記憶を消すことを望んでいる彼に復讐への道を歩ませるのは違うなと思った僕は第一の案を実行に移そうとした。だが、そんな僕を彼は制した。


「ちょっと待ってくれ……。幻の選択肢でお願いしてもいいか?」

「幻の選択肢?」


 僕はそう尋ねると同時に思考解析で彼の望みを読み取った。


 それは僕の案にはない、本当に想定外なものだった……。

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