別れたら恋人になりたいと言ってきた彼女

闇野ゆかい

第1話寄り添ってくれる友人

「透、もう……別れよ、私たち」

 そう恋人に交際の終わりを切り出され、翌日には失恋の話題が校内に流れていた。

 元恋人だった彼女は、周囲に言いふらすほどに口は軽くない。

 元恋人の友人が周囲に言いふらしたのだろう……そう思いたい、そう願いたい。

「透……ショックなのは解るけどさ、いつまでそうしてんのさ」

「うっ……ぐっ……いつ、までって。リカにはっ……辛さなんて、知らないでしょ……失恋のっ」

 俺の背中を摩って慰める綴江梨花の言葉に潤んだ瞳で彼女の顔を捉えて、弱々しく抗議した。

 涙で頬を濡らし、洟水を垂らしたぐちゃぐちゃな顔で、情けなく嗚咽を漏らす俺。

「知ってるよ、失恋の痛みくらい。私もさ。透には、恋愛で傷ついてもアニメや漫画で忘れられるって。ね、透。いつもみたいに私に語ってよ、透ぅっ!」

「そんな、気分じゃないって……」

「うん……」

 綴江が泣きじゃくる情けない俺の肩に手を触れ、自身に身体を預けさせるように引き寄せた。

 俺は彼女の肩に頭をのせ、身体を預ける体勢で、彼女のご厚意に甘えて泣き続ける。

 彼女の髪が掛かったが気にならない。

 俺の頭を撫でる彼女の掌のぬくもりがほのかに伝わる。


 体育館の前の数段しか無い石段に腰を下ろす汐野名透しおのめとおると友人の綴江梨花つづえりかだった。

 昼過ぎの頬を撫でる風は、ほのかにひんやりとした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る