部屋の中のカブトムシ②

拠点を考えるとして、僕が行く場所はもう決まっている。

あまり知られていない活火山、そこの平地に近い高度の場所だ。

そこはマグマで、本来ならば人が入れるところではない。


だが僕は既に適応能力を上げている。

少なくとも、マグマの中くらいなら簡単に適応できてしまうだろう。


他の参加者も、まさかマグマの中に入っているとは思わないだろう。

これは僕だから考えられることだ。


普通の人なら、『元から存在する物質・人物に直接的な変更(消滅含む)を加えることは不可能である』から中に瞬間移動したり、物体を生成するのは不可能なのではないか、と思ってしまうだろう。


それならば、どこの空気にも気体という物質は存在しているし、全ての場所で何もすることは出来なくなるだろう。

個体の中に物質を生成するのが不可能だったとして、気体液体はと考えるのが自然だ。


そんなマグマの中に、僕と同じような環境適応能力状態の人間を、50cm間隔で設置しておく。


『自分と自分が生成した人間以外の人間の半径50cm以内に物質を生成させることはできない』というルールがあるんだ。

これだけで僕に対して能力を使用することすら困難になるだろう。


平地に近い高度にしたのにも意味がある。

の防止の意味。

だが、その意味を考え直す前に、まずは参加者を探し出していこうか。



広大な土地で好きなところに隠れていいと言われた時、人はどこへと隠れるだろうか?

人間心理で考えると、できる限り、相手が考えられないような場所に隠れるのが普通だ。

実際に僕もそうしている。


では次に、その広大な土地に来るときに、ランダムに配置されたらどうだろうか?

その場合は、その場所からあまり動きたくないのが心理であろう。

下手に動いて鉢合わせる方が危険だからだ。


そして更にそれが、戦争のような規模になることが確定しているなら?

そう、そこまで想定出来ているのならまずへと隠れる。

というわけで探すべきは地下だ。

僕は地下にいる虫をあぶり出していく。


まずは人目のつきにくい場所に人物、通称プレイキャラを作り配置。

『自我を自分が創造した人間に移したりすることも可能である』というルールを利用し、探査用にこいつを使う。


なぜ探査用に人物を作り出すのか、普通の人なら疑問に思うかもしれない。

これはいわゆる逆探知防止というやつだ。

他の参加者の思考レベルを見くびってはいけない。


僕はそのままそいつに、高性能レーダーを持たせる。

地面全域ソナーだ。


『抽象的すぎる物質・人物は作りだすことができない』というルールだが、ある程度抽象的すぎなければ、こんなとんでも道具まで作れてしまうのがこのゲームのいいところだ。


これで地面にいる人物と場所を割り出していく。

地中に虫とかいたらノイズになる。先に千里眼で、地面の中に人間以外の生物がいないのも確認済みだ。そもそも一回も、ここに来てから人間以外の生物を見かけていない。


これはルールに書いていない裏ルールのようなものだろう。

ルールとして書く必要すらないくらいのルール。

だが僕はこのルールすらも悪用させてもらおう。


僕は地面全域ソナーを使って生体反応を調べた。

無論、一般のNPCが反応しても困るし、地下室等は検索から排除した状態で少し深くから。


反応は二つ、場所も把握させてもらった。

ここまで地面に潜っている人物が少ないのは少し誤算だが、これは僕にとって都合が良くもあった。


地上は地上で僕の攻撃が予定されているからな。

それより今は地下だ。

僕は千里眼で、地面に潜っている二人の人物詳細を見ていく。


若い男一人と若い女一人か、ルール上自分の姿は変えられるから年齢性別はあてにならないが、とりあえず女の方は後回しにしておこう。

自身の周囲を、相当な広範囲高密度の壁で固めてやがる。


ソナーが反応したのは運が良かったレベルだ。

故にもう一人、男の方を狙う。

こいつは今、自分が安全圏にいると思い込み、油断している。


自分の周りにデコイの一つ置いていないことが、何よりの証拠だろう。

だが、今は狙わない。


地下に潜るという判断をしている時点で、地上の奴らを引っかき回してくれそうだし、なにより、地上に逃げ込み本気で隠れられたら僕が見失うかもしれないからだ。


地上が荒れはじめ、逃げ道がなくなった時。

それがお前のゲームオーバーだ。


さてと、地下は把握させてもらった。

僕と同じく地下を探すやつがいるのを避ける為に、僕は平地に近い場所に僕自身を置いておいたのだが、そこまでの思考レベルに達している参加者はまだ把握できていない。


そして僕は次の計画を開始する。

地下の把握、その次にやることといえばそう、地上の殲滅だ。


『不特定多数の人間に注目して攻撃することはできない。誘導攻撃のターゲットは絞らなければならない』

こんなことがルールに書いてあるがこんなもの、をしろと書いてあるようなものではないか。


全人間指定で誘導弾を放つのを禁止にさせたいのだろうが、誘導弾なんてちゃちなものを撃ちこむ必要はどこにもないんだ。

舞台は仮想日本、広いように見えて思っているよりも範囲は狭い。


そんなところに地上全体に向けて行う攻撃なんてもう決まっているだろう?

そう、核兵器だ。

僕は核兵器をこの世界全体に撃ちこんでいく。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る