哲学的NPCゾンビ③

まだまだ授業は続いていく。

なんてことはない変わり映えのしない日々、授業が終わるまで妄想に明け暮れた。

昼休み、友達と雑談タイム。


「知ってるか?皇居にテロリストが侵入した噂」


「それは気になりすぎるから詳しくお願い」


「俺も人づてなんだけど、最近テロリストが暴れてるらしい。もしかしたらこの学校にも来たり」


「その時は僕が退治するから心配することはないよ」


「お前来てほしいのか?テロリスト」


こんな感じで雑談していって、午後もいつも通り、そのまま下校タイムとなった。

下校中も僕は妄想を欠かさない。

授業中の妄想の延長戦だ――。



日本中から天才のみを集めた殺し合い、その手違いにより僕は選ばれた。

関係ない一般人を殺さぬよう、『参加者』と呼ばれる人物のみを殺し合う頭脳戦。

僕は当然蚊帳の外のはずであった。


だが僕は選ばれてしまった。

天才Aの人物番号と僕の人物番号が一つ違いでズレてしまったのだ。

そのまま天才達は殺し合いを続ける。

そして誰にも見つからなかった僕は最後の一人になるまで気付かれず、そのまま優勝してしまうのだ。

めでたしめでたし。



――そんなこんなで家にまで帰ってこれた。

今日の予定はこうだ。


家に帰ったら宿題をしながら妄想をし続ける。

それが終わったら、風呂に浸かりながら妄想をし続ける。

その後一家で夕飯タイム、のまま妄想をし続ける。

そして時間がきたら寝る、のまま妄想をし続ける。

これが僕のルーティンだった。


宿題をしながら妄想、これがなかなかにはかどる。

宿題というよりかは妄想の方が。

僕にはもう、宿題の問題が倒すべき敵に見えている。


問題の中に広がる壮大なストーリー、それを倒していく僕。

授業の最中でも常に妄想ばっかしている僕が、成績が中くらいにまで踏みとどまっているのは、こんな理由があった。


妄想をしていれば宿題は終わる。

僕は宿題を終わらせて風呂へと入った。


風呂の中でも妄想は止まらない。

なにせ今の僕は無防備なんだ。

どこか知らない誰かに狙われたら一瞬だ。

故に僕は、風呂の中で襲われた時の戦いを考える――。


風呂の窓から爆弾が投げ込まれる。

そんなときは、咄嗟に風呂のフタで爆弾を覆い隠す。

多少の衝撃はきてしまうが、なんとか防ぎきることができた。



――と、こんな感じで妄想を常に続けていく。


風呂から上がったら夕飯タイム。

一家団らん?それもする。

だけどその間も妄想タイムを忘れてはいけない。

今度は何を妄想しようか、そんな態勢に入ったときだった。


『参加者が一人死亡しました。残り参加者は六人です』


またしても脳内にアナウンスが響き渡った。

これは僕の妄想ではなかった。

一回ならただの幻聴や気のせいですませられることができるだろう。

常に妄想し続けている僕のことだし、デスゲームのようなアナウンスの一回くらい勝手に聞こえてくるだろう。


だが今回は二回目だ。

偶然の線が減ってきてしまう。

そしてこんな夜の時間帯に、参加者が一人死亡のアナウンスだ。


僕が授業中していた妄想なんてものは、的外れにも程があったということだ。

多分合っていたのはどちらかというと下校中の妄想だろう。

日本中から天才のみが集まった殺し合い、その手違いで僕が呼ばれてしまった方の線だろう。


だけどもし、本当に手違いではなく、僕が選ばれたというのであれば、僕のどういう要素を求めたのだろうか?


僕はそこまで頭がいいわけではない。

クラスでも中くらいの位置だ。

運動もそこまでできる訳ではない。

将来の予定すらも一切考えてないだけの、四六時中妄想ばかりしている人間だ。


やっぱり、手違いだったのだろう。

しかし、もし本当に僕を含めてデスゲームが行われているとしても、このゲームは手違いで選ばれた部外者の僕が、誰にも気づかれずに優勝するゲームなのだから僕は何も考えなくていいのだ。


事実、もう二人も減ったんだ。

ほうっておくだけで減っていくのだろう。

夕飯を食べ終わり、休憩をはさみつつ僕は眠る準備をする。


もちろん、眠る前にも僕は妄想を欠かさない。

さて、どうこのデスゲームの妄想を膨らませていこうかと、妄想をしながら僕は眠りにつく……。


……眠れない。

いつもは、途中で妄想と夢の狭間はざまがわからなくなる頃には、いつの間にか寝ているというのに。

僕の身体はどうしてしまったのだろうか。





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