第2話 すきだッロボットオタク

 オレがテンパって、顔を青くしたり赤くしたりしていると、フェーが肩をすくめて口を開く。


「ここでは……」


「フェーっ!」


 フェーの言葉をさえぎって、かしましい女子達の悲鳴が聞こえてきた。

 まもなく、オレとフェーがいる部屋へ、たくさんの女子達が押しかけてくる。


「フェー! 男がいるって本当っ?」


「きゃー! 男だわーっ!」


「ズルーい! フェーばっかりーっ!」


「ちょっとぉ、独り占めはダメよーっ!」


 女子達は好奇の目を輝かせて、オレをジロジロ見ている。

 恥ずかしくて、たまらない。

 動物園のパンダにでもなった気分だ。


 しかも今のオレは女子のワンピースを着ていて、それがシースルーときたもんだ。

 自分の顔も耳も首まで、火照ほてるのを感じた。

 そんなオレを見た女子達が、嬉しそうに黄色い声を上げる。


「あーっ、真っ赤になっちゃってるー!」


「もう、カーワーイーイーっ!」


「いやー! 付き合ってーっ!」


「結婚してー!」


「アタシも結婚したーいっ!」


「わたしもー!」


 なんなんだ、この騒ぎは?

 こんなにモテたのは、生まれて初めてだ。

 女子にキャーキャー言われたことは、かつて一度もない。

 それどころか、クラスの女子にだって告白されたことがないのに。

 背の順だと前の方だし、体型も顔も平凡な方だと思う。


「ほらほら、アンタ達! ガッツいてんじゃないわよっ! 困ってるじゃないっ!」


 フェーが一喝すると、途端に静かになった。

 ひょっとするとフェーは、女子達の中でもエラい方なのかもしれない。

 学級委員的なポジションだったりして。


「いい? 質問がある人は手を上げて、あたしが指名した人だけ喋ること。いいわね?」


 女子達は、一斉にうなづく。

 十畳くらいの広さだと思われる部屋に、女子達がところせましと床にびっしり座っている。

 さらに続々と、女子達が集まってくる。

 部屋の入り口にも、立ち見状態の女子が何人もいる。

 この部屋は一階なのか、窓から部屋の中を覗きに来る女子も大勢いた。

 みんなキャッキャッと、楽しそうにオレを見ている。

 どうしてこうなった?


 ここにいる女子達は、オレのクラスの女子達より断然レベルが高い。

 何って、外見が。

 しかも不思議なことに、フェーも含め、女子全員の顔がどことなく似ていた。

 その全員が下着も付けずに、シースルーワンピースを着ている。

 あの、ちょっと、目のやり場に困るんだけど……。


 オレが寝かされていた部屋は、記者会見場状態となった。

 ちなみにフェーは、オレが寝かされていたベッドの上に座っている。

 オレもベッドの上であぐらをかいて、シーツで下半身を隠した。


「じゃあ、質問がある人は、手ぇ上げてー!」


「はい」


「はーい」


「はぁい」


 フェーが合図をすると、女子達が競い合うように手を上げた。

 たくさんいる女子達の中から、進行役のフェーがひとりを選ぶ。


「じゃあー、トゥー」


「はい。あ、あの、何歳ですか?」


 三つ編みをした、大人しそうな女子が立ち上がった。

 トゥーと呼ばれた女子は、もじもじしながら聞いてきた。


「え? オレ?」


「他に誰がいるのよ?」


 フェーがくすりと、小さく笑った。

 オレは素直に、質問に答える。


「ああ、そうか。一三だけど」


 答えるやいなや、女子達が一斉にザワめく。


「えっ?」


「まさかぁっ!」


「ウソぉ!」


「見えなーい!」


 そんなに幼く見えるのだろうか?

 まぁ確かに、背は低いけどさ。


「えっ? えっ?」


 オレがオロオロしていると、フェーも驚いた様子でこっちを見ている。 


「普通、一〇年生きるのがやっとなのに」


「一〇年?」


「当たり前でしょ?」


「はぁ? 意味が分からない」


 なんで、一〇年しか生きられないんだ?

 どう考えても、フェーはオレと同い年くらいに見えるのに。

 おかしいだろ、それ。


 今度は逆に、オレがフェーに質問する。


「じゃあ、フェーはいくつなんだよ?」


「三歳よ」


「ええ~っ?」


 今度はオレが驚く番だった。

 集まっている女子達はみんな、フェーと同じくらいに見える。

 ってことは、みんな三歳くらいってこと?

 だとすると、ずいぶん早熟な三歳児だな。

 一体なんなんだ、ここは? 

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