第7話 彼女が近づいた本当の理由

のちに、オランダは、近代資本主義との相性の良いキリスト教の考え方に調和し、社会に投資した結果、勤勉の方がアムステルダムに多く集まって栄えたのだった。

 オランダには、石炭、木材といった豊富な資源を手に入れられる場所に位置していた。勤勉ゆえに技術力もあったオランダ人は、木材を大型外洋船にすることに成功した。それが、軍艦として活躍することになる。

 また、それだけではない。オランダは、投資という現代においても使われるやり方で、お金を募り、莫大な利益をだしていた。学力、技術力があるだけでなく、商才もあったのである。1720年代に、ミシシッピー会社事件などのバブル崩壊時にも、アムステルダム銀行に預金が押し寄せるほど、ヨーロッパ中から信頼を得ていたのである。

 オランダは、ヨーロッパだけでなく、世界の覇権を握るべく、乗り出したのが、「奇跡の石」の回収ということだ。

 スペインから、独立する際から、奇跡の石の存在を聞いていた。

 しかしながら、オランダそのものは、独立したばかりである。再び、隣国の支配下に置かれる可能性も十分にある。奇跡の石の回収は、極秘に進められた。

 だが、シーボルトは、本来ドイツ人であったことを忘れてはならない。

 彼は、本当に東洋医学に興味を持ち、日本の鎖国という影響から、オランダ船に乗り込み、日本に関する情報を入手するだけであったのか。

 軍事情報を多く入手していたという話もある。神聖ローマ帝国の手先である可能性もある。

 そして、楠本滝は、遊女ではないということ。出島を自由に動き回るためのカモフラージュの為に、そういった服装をされていた。

 彼女が、シーボルトに出会った本当の理由が別にあった。

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