説明回


 自称女神様に転生されられて今生の両親に新たにエデル・クレイルという名前を付けられて十年経った。


 自分が産まれたのはこの世界の中でもでも生活水準が低くあまり土地質に恵まれない村だった。でもそんな元現代人にとって苦痛な環境の中でも前の人生より恵まれた部分がある。それは自分の家の隣にこの村一かわいい二人姉妹が住んでいることだ。その姉妹は何故か自分がこの村の男の子全員から毛嫌いされている中で懐いてくれた今生で唯一の癒しなのだ。娘にしたい。


 だがこの世界で新たな人生を歩んでみてどうしても言いたいことがある。それは


 この世界がこんなに危険な世界だなんて聞いてねえよ!


 ということだ。


 まずこの世界は当たり前のように魔物や魔王が存在していて人間はそういう存在に対抗するために剣や魔法を使うといった、前の世界でよく見たようなファンタジーの世界だった。これだけでも単身でそれなりの戦闘力を持っていないと生きて行くのも大変だというのにそれだけでは無いのだ。


 この世界には『七つの厄災』と呼ばれる人の身では抗いようのない災害が存在する………らしい。


 そんな世界に転生させるなら言ってほしかった。自分が貰った特典次第じゃあっけなく死んでしまうような世界だからだ。なのに自分がどんな能力を貰ったのか十歳になった今でも把握出来てはいない。


 そう、把握出来てないのだ。この世界を案内するとか言ってた自称女神様に自分の能力を聞きたかったが俺が十才になった今でもあの女は現れてない。




 「エデルー!」


 今俺の名前を呼びながら駆け寄ってきているのが件の姉妹の姉の方だ。名前はレフィア・グレイス、歳は十才、勝ち気な性格で他人に対して刺々しい態度を取るが、妹のことをとても大切にしているとてもいい子だ。娘にしたい。………ただ少し妹のことになると周りが見えなくなってしまうことが玉に瑕だ。


 「妹がさっき倒れてしまったの。……またお願いできるかしら」


 この村ではよく住人が具合を悪くする。それは村の近くにある森をさらに奥に進むと辿り着く『七つの厄災』の一つである『腐敗領域』と呼ばれる場所のせいだ。その場所は生きたものが入るとどんなに強い存在であっても途端に体が腐り落ちていき死に至るという恐ろしい場所だ。そんな全ての存在の侵入を拒んでいる腐敗領域が人間の住んでいる土地と魔王が支配する魔族の住む土地を分断しているらしい。そんな場所が村の近くにあるせいでこの村は作物も育たず、たまに腐敗領域の毒気に当てられ村人が倒れたりもする。


 ただ『腐敗領域』が村の近くにあるおかげで魔物に襲撃されないという利点もありはするが……。


 話は戻るが彼女の妹は体が弱く頻繁に毒気に当てられる。名前はリフィア・グレイス、歳は八才、姉と違って控えめな性格で誰にでも優しく、村のみんなから好かれているとてもいい子だ。娘にしたい。


 俺が八才の時に隣のグレイス家にお呼ばれした時にリフィアちゃんが倒れたことがあった。リフィアちゃんをベッドに寝かせてそのベッドの横に座り彼女のお姉さんと一緒にリフィアちゃんの手を握った。すると苦しそうな表情をして咳をしていたリフィアちゃんの表情が次第に安らかな表情に変わり段々と咳もしなくなっていった。


 それからというものリフィアちゃんが倒れるたびに家に呼ばれレフィアちゃんと一緒にリフィアちゃんの手を治るまで握り続けるというのが生活の一部になっていた。


 「おい、ちょっと待てレフィア!ソイツは剣の訓練があるんだ。勝手に連れて行くな」


 今、俺とレフィアちゃんを止めたのはこの村の男の子の中でも一番強いと言われてる、子供たちのまとめ役をやってるレグス・シルフレヴ君だ。意地っ張りなところがあるが子供たちみんなから慕われてるいい子だ。息子にしたい。


 「なによ!私の妹がどうなってもいいっていうの!?」


 「そうは言ってないだろ!でもソイツはこの村で一番弱いんだ。訓練をさせないとダメだろ!」


 「訓練って何よ!みんなしてエデルを虐めてるだけじゃない!」


 え!?俺はレフィアちゃんに、虐められているなんて思われていたの!?


 「い、虐めてなんかねーよ!このままじゃ将来こいつはその辺で野垂れ死ぬからみんなで鍛えてやってるだけだ」


 え!?俺はレグス君に将来野垂れ死ぬと思われていたの!?


 「エデルは将来私が面倒を見るから問題ないわよ!」


 「エ……エ……」


 ……エ?


 「エデルのバカヤロー!!」


 レグス君は涙を流し走って何処かにいってしまった。


 「レグス君!?」


 一言も言葉を発していない会話でバカヤロー扱いは遺憾の意だ


 俺が心の中で遺憾砲を発射しているとリフィアちゃんは先程のことなどまるで無かったかのように話しかけてきた。


 「じゃあ行きましょうか」


 「あのレグス君のことは……」


 「どうでもいいわよ。それと……」


 「それと?」


 「勘違いしないでよね!あんたがリフィアの体調を整えるために必要だから仕方なく面倒を見てあげるだけでそれ以外に理由なんてないんだからね!」


 かわいい、娘にしたい


 「分かってるよ、面倒を見てもらわなくても将来どんな関係になろうともリフィアちゃんが倒れたらすぐに駆け付けるさ」


 「……バカ」

 

 「え?なんだって?」


 「バカって言ったのよ!バカエデル!」


 大変だ、娘が反抗期になってしまった。


 その後無事グレイス家に着きいつもの様にリフィアちゃんの手をレフィアちゃんと一緒に次の日の朝まで握り続けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る