視聴覚室から きっとクル!

 皆さんご機嫌いかが? 女庭メオですわ。

熱血ハオちゃんの情熱の前に、ヨクボウも成す術がありませんでしたわね。

 そして感動的なラストでしたわ。


 と、いうわけで今日はシラスを考察しますわ。


【シラス】

 とっても、とっても美味しいですわ。

大根おろしやカリカリ梅と混ぜると、それだけでご飯が止まりませんわ。 大葉もいいですわね。

 シラスは、イカナゴ・ウナギ・カタクチイワシ・マイワシ・ウルメイワシ・アユ・ニシンなど、体に色素がなく白い稚魚の総称ですわ。


【シラスモンスター】

 奴らはシラスに紛れて潜んでいますわ。

イカやカニなどの稚魚ですわ。

 見つけた時の喜びは感慨深いものがありますわね!


【シラス火山】

 シラスはマグマそのものを指しますわ。

2万5千年前の巨大な火山噴火によって出現したシラスは、マグマが噴火と同時に冷やされて火砕流となって堆積したものですわ。

 一説では、ハオちゃんの身体は、この聖なる物質で出来ているらしいですわ。

     –––– 知らんけど。ですわ。


 それでは皆様、本編スタートですわ。



「やあ、アッシだよ。今日は視聴覚室で映画鑑賞だよ」

 まあ、素敵な授業ですね! 一体、どんな映画を観るのでしょうか? ワクワクします。


「お〜い、始めるぞぉ。倫理の映画だから、しっかり学ぶんだぞぅ」

 おっと、先生には遊び心が足りない様です。

このままでは、普通の授業になってしまいます。

 –––– まあ、たまにはいいでしょう。

カーテンが引かれ照明が落ちた教室で、正面のスクリーンに映像が映し出されました。


 その時! 教室を埋め尽くしたのは、生徒たちのどよめきでした。

 何と!スクリーンに映し出されたものは……


「井戸……だよ」

ノイズだらけの森の中、その中央に井戸が映っています。

 こ、これは噂に聞く『呪いの動画』なのでは?!


 刹那!生徒たちのざわつきは悲鳴に変わりました!

 なんと、井戸から手が…… 何者かが出てきます!! ……ああ、なんてこと!

井戸から這い出て来たのは、長い黒髪の……


–––– 落武者ヘアーのオッサンです!!

 更には、ボトボトに濡れたオッサンが、ふらふらと手前に近づいて来ます!!

 そしてッッ!! 手に持っていたプレートを画面一杯に映しました。そこには、こんな恐るべき言葉が綴られていたのです!


『井戸に落ちたら危ないよ! 近づかない様にしようね? サダオとの約束だよ♪』


 啓蒙作品でした!! 

残念だったのは、井戸なんて見かけない現代社会か? オッサンのヘアースタイルか?

ジャッジは皆さんの思考にお任せします!!


「アッシは感動したんだよ! 遂に、アッシ以外で語尾が『だよ』の人物が現れたのだよ」

 いや…… 落武者のオッサンと一緒でいいのですか?ハオちゃん?

 まあ、それは置いといて、隣の男子生徒の様子が変です! その上、何やら異臭もします!


『おおお、ハオよ。ヨクボウが現れたぞぅ!』

 埴輪の髪留めがNO MORE 映画泥棒的に、犯罪行為を察知しました!


『くッくッくッ、映画と言えばポップコーンだぜぇ?! 教室が暗いからバレないぜぇ?!』

 なんと!ヨクボウの男子生徒は、学校にポップコーンを持ち込んでいます! 更に、この匂いは…… キャラメルポップコーンです!!


「ハオちゃん、変身だよッ!!」

ハオちゃんはヨクボウの暴走を止めるべく、埴輪の髪留めにタッチしました。

 さあ、今日の姿はなんでしょう?


「バリスタだよ」

イカした腰エプロン姿のバリスタが降臨しました! ハオちゃんのお陰で、教室内はカフェの様なオシャレな空気に包まれます!


『おのれ、魔砲少女め! 俺の喉が渇いている事を知っていたのか?!』

 ヨクボウの男子生徒はポップコーンのせいで、喉がカラカラです。

『……だが、詰めが甘かったな、魔砲少女。

俺は、コーヒーが飲めないのだ! 貴様の誘惑は効かないぞ!』

 大いなる誤算です!! これでは、コーヒー飲ませて手懐ける作戦が効きません!

 ハオちゃん、どうするのッ?


「ヨクボウ…… 甘いんだよ。 アッシの作る珈琲は、ウインナーコーヒーだよッ!!」


『なん……だと?』


 成る程! 甘ぁ〜いウインナーコーヒーだったら飲めるかも!

 皆さん、ウインナーコーヒー知ってますよね? え?馬鹿にするな? 大変失礼しました。


 ハオちゃんは、凄まじい手捌きで珈琲をドリップします。美しく深い琥珀色。気高き香り。 これぞ、バリスタの仕事です!

 さあ、あとは珈琲の上に生クリームを乗せて完成です!


「ウインナーを乗せるよ」

 –––– なんてことッ!

ウインナーコーヒーの上に乗せるのは生クリームです。しかし、ハオちゃんはガチのウインナーを載せました! 溢れる肉汁が、コーヒーの表面に油の膜を描きます!


『チガウ、ソウジャナイ』

ヨクボウの男子生徒は冷静にツッコミを入れます……が?

 ウインナーに目が釘付けです!!

そうです。男子中学生にとってウインナーは至高であり至宝! 皮がパリッと旨味ジュワッと! これは堪りません!


『我慢出来ねぇぇええ!』

ヨクボウの男子生徒はウインナーコーヒーを一気に飲み干しました。 それは、肉汁の一滴も残したくないという気概の現れでしょう。

 そして、コーヒーの利尿作用によりトイレに行きたくなったのです!


『く、クソッ! 魔砲少女め、覚えてろぉぉ!!』

 断末魔を上げ、トイレに走り去るヨクボウ。

こうして、魔砲少女は今日も古墳中学校の平和を守りました。


「悪•霊•退•散!もぐぅ!」

ハオちゃんはヨクボウの残したキャラメルポップコーンを跡形もなく平らげました。

 これが『残りはスタッフが頂きました』という配慮なのでしょう。


           –––– つづく

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