第16話

僕達はジェットエンジンの開発に難航していた。



1番の問題はミスリルが熱に弱いことだ。魔力を刻印に伝える為には、魔石から刻印までの道をミスリルで繋がないといけない。



しかし、ミスリルは熱に弱い。刻印で発動したエアバーストとフレイムバーストの熱でミスリルが焼ききれるのだ。



試しにミスリルにヒヒイロカネを合成したり、他の素材を混ぜてみたりしたが、魔力が上手く伝わらず、威力は弱いし燃費は悪い。



どうしたものか。



「あまりおすすめはせんが、アーリシア魔道国に付与魔法を代々受け継いでる家系があったはずじゃ。まあ恐らく無理じゃろう。国によって厳重に守られておるしの」



「それに魔道国ってのも問題だな。三大大国の中でもかなり秘密主義で、しかも他国をかなり見下してる国だしな」



「へー。ゴドランが言う位だから相当だね。他に解決策が無いか、もう暫く考えてみるよ」



しかし本当に困ったな。他に解決策も無い訳ではないけど、仮説だし、現実味が無いんだよね。



巨大なモンスターが空を自由に飛ぶ。普通に考えて、あんな巨大なモンスターがあんな羽で自由に飛べる訳が無い。



恐らくは、あの羽で固有魔法か何かを発動しているんだろう。しかしだ、あの羽の素材が欲しいが、そもそも空飛ぶモンスターを倒す手段が無い。



だから現実味が無い妄想だ。



そこにお客さんが来た。前に宰相さんから打診されてた話し合いってやつだ。



まあ金塊についてはある程度卸しても良い。ただゴーレムコアはダメだ。現状でもかなり貴重だし、こっちでもまだ数を確保出来てない。



一個作るのに、かなりの魔力を消費する。ラビの成長の為にも僕の魔力はなるべく成長に使いたい。丁度作りたい地下施設があるし。



「ダクター兄さん、宰相様御一行をお連れしました」



そう言ってエリンが入ってきた。大分仕事にも慣れたみたいだな



「入ってもらって」



すると入って来たのは護衛らしき4人と宰相と知らないおじさんと、女の子が入ってきた。



なんて綺麗な女の子なんだ。



透き通るようなピンクブロンドの髪を横に纏めて長い髪に少しウェーブがかかっている。



光を反射しながら揺れる髪はキラキラ光って彼女の美しさを更に際立たせている。



そして透き通るような透明感のある白い肌。さらに大きな目にピンク色の綺麗な瞳。ピンク色の唇は小さく柔らかそうだ。



顔も小さく足も長い。全体的に細身なのに、とても柔らかそうな肉付き。



僕は彼女に見とれていた。



「お久しぶりですね。ダクター殿」



そこに声をかけられて僕は正気を取り戻した。



「お久しぶりです。宰相様。どうぞお掛けください」



「ほっほっほっ。何やら横に居る者が気になっているご様子で。では先に紹介いたしましょう。此方がローグランド侯爵とその娘のリコメット嬢です」



「お初にお目にかかる。私がローグランド侯爵現当主グランゼル・ローグランドだ」



「お初にお目にかかります。私ローグランド侯爵家三女、リコメット・ローグランドと申します。どうぞ良しなに」



笑顔の破壊力が半端じゃない。落ち着け僕。冷静になるんだ。



と、とにかく宰相様を見ておけば大丈夫なはずだ。



「お、お初にお目にかかります。わ、私はここの工房の責任者をしています、ボーダー村の、だ、ダクターとも、申します」



な、何とか言えた。動揺しすぎだろ。僕。取り敢えず宰相の方を向く。



「と、所でどのような要件で?」



「実はですな、今国では金塊を集めておりまして、出来ればダクター殿にはそのご協力をお願いしたくて参りました」



「そ、それで、ど、どのぐらいの量をお求めで?」



「出来るだけたくさんですな。相場より少しお安くなりますが、あるだけ全て買い取りさせて頂きます」



「な、なるほど。僕はそれでいいですよ」



「それからゴーレムコアなんですが、国に定期的に卸しても貰えないでしょうか?」



その発言を聞いて少し冷静になれた。



「ゴーレムコアはとても貴重でして、流石にお約束は出来ませんね」



「ではこんな提案はどうでしょう。ゴーレムコアは毎月一つで構いません。その代わり毎月このリコメット嬢が受け取りに参ります。その際は辺境への長旅の為、こちらで一週間の休養をしてからの出発と言うのはいかがですか?」



僕はリコメット嬢を見てみる。リコメット嬢が僕に笑いかけて頷く。はー。可愛い。まるで天使のようだ。



「は、はい。わ分かりました」



「それは良かった。ではこちらにサインをお願いします」



「はい」



「ありがとうございます。ではここからはリコメット嬢の要件ですね」



「え?あ、あ、ど、どうぞ」



「私魔道具が好きで、沢山の本を読んで沢山勉強しました」


「はい」



「ですがダクター様がお作りになった魔道車の仕組みは全く分かりませんでした」



「はい」



「それで私に魔道車を作る作業を見学させて貰えないでしょうか?」



「は、はい。よ、喜んで」



「まあ。ダクター様はとてもお優しいのね。やりましたわ、お父様。私いっそここに住みたいですわ」



「それはダメだ。まだ11歳なんだからそんな事は大人になってから考えなさい」



「はい」



落ち込んだ姿も可愛い。



「それでは宰相様。お話がお済みでしたら客室までご案内致します」



「宜しく頼むよ」



すると部屋から出る時に、リコメット嬢が振り返り、笑顔で手を振ってくれた。



綺麗だ。









は?



何って事だ。ゴーレムコアは販売する予定じゃ無かったのに、リコメット嬢の話で頭がいっぱいで思わず契約してしまった。



その後暫く僕は頭を抱え続けた。






ーーーーーーーーーーーーー





「これは良い誤算だったな」



「それは良いですが、あまり私の娘を出汁に使わないで頂きたい」



「良いではないか。リコメット嬢も喜んでおるぞ」



「しかし・・・・」



「まあ侯爵の気持ちも分かるが、これも国の為だ。それより、ここの客室は凄いぞ」



「まあこのホールを見れば大体分かりますが」



「宰相様。一体ここはどうなってるのですか?入り口も手を触れるだけで扉が自動で開いたり、この光だって天井その物が光っているように見えますわ」



「わしにも原理は分からんよ。後でダクター殿に聞いてみれば良かろう」



「そうですわね。それにこの床も凄いわ。光を反射する程綺麗に加工された石なんて見たこと無いですわ。それにゴミどころか、汚れ一つ見かけませんわ」



「そうだの。わしも以前きたが、掃除している所を見たことがないの」



「本日お泊まり頂く部屋はこちら側の2階にございます」



「なに?前は向こうの部屋では無かったかの?」



「こちらは新しく完成したお客様用のお部屋になります。この施設は個人認証での扉の開閉を行っていますが、それでは不便な場合があるため、客室は通常の鍵での開閉になります。多少豪華な作りになっていますが、部屋の間取りは同じですから使い方は同じです」



「なるほどのう」



「此方がお客様用のお部屋です。右側は護衛等の男性用のお部屋です。左側はメイドなど女性用の部屋です。皆さん入り口にある段差で靴を脱ぐようにお願いします。食事の準備が出来次第お呼びします。ここからは彼女達が案内します。リナ、リサ、サヤ、部屋の案内お願いします」



「まさか新しく客室を作っていたとは驚きだの」



「宰相様。早く中に入りましょう」



「「おぉぉぉぉぉ」」



「お父様。とても広いしとても綺麗だわ」



「そうだな。まさか光をこんな風に使うなんて」



「お父様。どうやら光源を見えないようにして、壁に光を反射させているみたいですわ。とっても綺麗」



「おほん。取り敢えずこの段差の前で靴を脱ぐのだよ」



「あ、ここで脱いでこれを履けば宜しいのかしら?」



「そうでございます」



「寝室は上の階に8部屋、こちらの階に2部屋ございます。トイレは上の階にもこちらの階にもございます。どちらもこちらの階段横にございます。トイレ以外は鍵が無いのでご注意下さい」



「分かりましたわ。早く奥に行きましょ」



「わーー。お風呂もとても綺麗ね。あら、ここの床は柔らかいのね」



「そうです。お風呂では転倒すると危険なため、柔らかい素材で作られております」



「本当に凄いわ。入り口の化粧台と大きな鏡も便利だわ」



「こちらの2部屋が寝室になります。全ての部屋が同じ作りですが、こちらの2部屋のみ少し広めになっております」



「寝室は夕焼け色の光なのね。とても落ち着くわ」



「こちらを捻ると明るさを操作出来ます。同じ物がベッドにもついています」



「とても便利ね。この部屋が広めなのは、あちらの大きめの机や椅子があるからかしら?」



「そうでございます」



「ここが食卓ね。それにしても変わった作りね。どうしてあちらはキッチンに繋がった食卓があるのかしら?」



「それはダクター様が考えた、見て楽しむ料理の為だそうです。もしかしたら、その内見れるかもしれませんよ」



「それはとても楽しみですわ」



「宰相様もお父様もどうされたのですか?」



「リコメットよ、おぬしには分からないかも知れぬが、このお金のかけ方は異常じゃぞ。侯爵の屋敷より贅沢なんて普通はあり得ない事なのじゃ」



「私には分かりませんわ。それよりも、宰相様。お父様。私は興奮して眠れそうにありませんわ」



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