第38話 15時42分 交戦
一足飛びどころか、飛び込むように転がり落ちていく。
直後、僕の居た場所が爆音を響かせ非常階段に反響する。階段や壁の欠片が降り注ぐも下の位置にいた僕まで爆風が届くことはなかった。
「1階は誰もいなさそう……こっち……」
非常扉を開けて中を伺っていたガレットが僕に手招きをする。
僕は威嚇にもならない射撃を2階へ向けて繰り出していたが、ガレットの声に我に返り、階段を下りきった。
「あの性格からして単独だろうけど、残りの
「うん……ロビー側……あそこならソファーとか使える……」
互いに背中向けで左右を確認しつつ、ロビーに着くとテーブルを横倒し、ソファーの影に身を潜める。
非常口に照準を合わせて待っているが、一向に降りてくる気配がない。
「……? 他の人がいたのかな……」
「その可能性はなくはないけど、銃声は聞こえてこないし他を探しに行ったのかも」
若干気を抜きつつあった僕たちだが……
布ずれの音が耳に届くや否やグリップを握る手に力を込める。
だが、その音は明らかに僕たちが狙いを定める非常階段からではない。
「どういう神経してればあんな大胆になれるんだよ……」
「すごい悪役が似合ってる……笑顔が気持ち悪い……」
僕たちが倒したテーブルに気が付いたのか、悠然とした歩みから疾走に切り替わった。
「真っすぐ走ってくるなんて舐めんなよ――ッ!!」
ソファーとテーブルの隙間からハンドガンを撃つ――だが、特殊部隊は僕がトリガーを引くよりも1テンポ早く横っ飛びで回避行動に出ていた。
そこにガレットが銃弾をバラまく。
僕とガレットの放った銃弾は、かすり傷を負わせた程度で致命傷にはほど遠い。
「ガハハッ!! 楽しくなってきたなー!!」
右手に握ったままだったショットガンを構えると、腹に響く低い銃声がエントランスに轟いた。
「うおっ!!」
テーブルに着弾した途端、欠片を弾け飛ばしながらテーブルが真っ二つに割れる。
「スラッグ弾でもないのに……」
僕たちがその威力に舌を巻いている隙を突き、特殊部隊もソファーの影へ転がり込む。
互いにソファーの隙間、時に横から銃を放つも高価なソファーが削られるばかりで決定打に欠ける。
しかし徐々に盾にしていたソファーが、ショットガンの威力を受け止めきれなくなってきていることは僕も、ガレットも気が付いていた。
そして何より、僕が今撃っているハンドガンの弾も残弾が残りわずかだ。
これを撃ち切れば残りはポーチに入れてある最後のハンドガンのみ。
「ねずみさん……この状況じゃソファーなくなっちゃう……――」
「ガレットの言う通りだ。ジリ貧になるくらいなら、タイミングを合わせて――」
ガレットの耳打ち後、次の発砲の瞬間を待つ。
ショットガンの着弾の音が瞬間だ。
だが――
「残念!! 死ねや!!」
ソファーの背もたれの上を見上げた時、すでに特殊部隊がショットガンを構えていた。
僕らを同時に狙い2人とも死なれるリスクを恐れたのだろう。
照準は僕。
ハンドガンを振り上げることもできず、特殊部隊がトリガーを引く瞬間を啞然と見つめていた。
その時、ガレットが僕を横に突き飛ばし、かろうじて直撃を割けることができた。
この距離で太腿を抉る程度で死んだのはガレットの機転のおかげだが、突き飛ばされた勢いで落としたハンドガンが奥に滑っていく。
僕はすぐさま獣のようにハンドガンへ飛びつこうと跳ねる。
「うぐぐぅ!! あっ! あぁあああッ!!」
その背後では、ガレットの呻き声と共に倒れ込んだ。
「お~!! 麗しき友情! いや、愛情か? まぁいい! 痺れながら男の最後を見届けろや!!」
特殊部隊が高らかに笑いながらショットガンをリロードした時だった。
「やっと体が見えた……」
そこで待ってましたと言わんばかりに構えたガレットが、躊躇なくサブマシンガンを特殊部隊の胴体目掛けて撃ち込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます