毒舌配信者はなぜ人気になった?

イコ

第1話 なんで冒険者って人気なの?

「まず、始めにいっておくけど。私は遠慮とかしないから、聞きたくないならどっか言ってね。それでもいいなら残って聞けば。あっ、あとキモい奴は即ブロックするから、ここでは私が神。わかった?」


 それを初めて見たボクは、引き込まれるようにその配信を見てしまった。


 彼女を見つけたのは偶然だった。


 夜寝る前の一時、動画配信をスクロールしていた。

 何気なく目についた可愛い女の子。

 画像には黒髪のロングで、パッと見て綺麗な子だなって思う清楚系の美女。

 着物を着ていれば、絶対に似合いそうだと思う見た目で、夜ということで邪な気持ちを含んで動画再生のボタンを押した。


 もしも、僕が寝ぼけていなくて、サムネを見ていれば絶対に見なかったと思う。


 動画を再生して始めに伝えられた女の子の言葉は、見た目とのギャップによって僕の目を覚まさせる衝撃を与えた。普段なら、なんだこれはと腹を立てたかもしれない。

 だけど、こんな可愛い子が自分を神と言うのが、妙に納得してしまった。


「1万人も見てるんだね。私の見た目が可愛いから来たんだろうけど。残念、見た目がいいってことで見てるなら、マジでキモいよ。コメントで自分は違うって言うやつ。自覚無いとか終わってるよ。マジでキモいからブロックするね。バイバイ。後、アンチの人。正当なことを言ってれば正しいとか思ってない?それも気持ち悪いよ。あなたの正しさなんて誰も求めてないって」


 次々と彼女の言葉に反論や正論を訴えるコメント。

 それについて毒を吐く彼女に、つい笑ってしまう。

 確かに、僕は彼女の可愛さに惹きつけられて動画配信を見てしまった。

 それがキモいと言われたことにドキッとしてしまう。

 自分の心が見透かされている。見透かされて、美人で可愛い子にキモいと言われて喜んでいる? 

 ボクは実はMだったのかな? そんな風にまで思ってしまった。


 始まりは、自分好みの可愛い女の子が配信していると言うだけだった。

 あわよくばスケベな姿が見れるかもしれない。

 そんな邪な気持ちで見てしまった。今は彼女が何を言うのか気になって、配信を見続けている。


 この動画配信は変だ。

 何かがおかしい。

 それがわかっているのに、ついつい目を止めてしまう。

 キモいって言われて、怒る人もいるかもしれない。

 いや、実際にコメント欄は随分と荒れている。

 だけど、ボクのようにドキッとした人や、面白いと思った人も多いようだ。


 それでも、コメントで「俺はキモくない」と否定する人がいて、「マジでキモいから間違いない」と断言して毒舌をぶつける。

 その後に「可愛いから何を言ってもいいと思うなよ!」と正論を言った人に「可愛いのは事実。それが嫌ならどっかいけば?ここでは私が神だって言ったじゃん。何を言ってもいいに決まっているでしょ? 言葉がわからないバカなの?」と毒舌で返した。


 本当にコメントの人が何を言おうと、我が道を行く感じで配信が続けられる。

 

 それが面白くて見てしまう。


「それじゃ今日の配信初めて行くね。最近ダンジョンが出来て、冒険者が活躍していますが、どう思われますか?」


 動画配信の形式は、投稿されたお題を読んで、それに答えるようだ。

 それ自体は他の動画配信者もやっているので当たり前のことだけど、どんなことを言うのか興味が湧いてしまう。


「ハァ? なんでそんなことを私に聞くの? 正直どうもでいい内容なんだけど。まぁ、質問されたから答えてあげるけど。そだね。なんで冒険者って人気なの? 暴力を商売にしている人たちだよね?」


 期待に通りに毒舌が始まる。

 冒険者への批判。

 すぐさまコメント欄が荒れ出していく。


「魔物を討伐しているだろ? 魔物ってさ。あれも動物じゃね? 動物を虐待して虐殺してさ。英雄なの? いつの時代の話だよ」


 いやいや、「魔物は危険だろ!」と僕でも突っ込みたくなる回答だけど、でも動物である熊や猪だって、人に害をなせば駆逐される。

 別にそれを英雄とは言わないけど、やっぱり魔物は危険で怖いと思う。

 

「ダンジョンから出てこないじゃ。ダンジョンブレイクするかも? そんなのしたことないよね? 怖いから恐怖煽って、お偉いさん達が魔石欲しくて、お金が儲かるから勝手に言ってるだけでしょ? それに乗っかってお金を稼ぐ大人たちが、無茶苦茶して人気になるとかマジでわかんない」


 現在、社会は大ダンジョン社会と言われている。

 暗号資産やネット社会が発展していくと思われた世の中。

 ダンジョンの発見とともに新たなエネルギーや現実問題への直面で冒険者と呼ばれる職業が人気になったのは少し前の話だ。

 戦争をしていた国々も、新たなエネルギー獲得のために各国が素晴らしい冒険者を取り立てるようになっていった。


 現在は小学生が選ぶ人気職業一位に冒険者がやってくる。

 それを正面から否定する毒舌配信者に反感を抱くコメントも多く見える。


「可愛いのに毒舌なの草。でも、マジでこの配信を見ているやつはキモい。冒険者はみんながしたくない仕事をしてくれている偉い人」と言ったコメントにもすぐさま毒舌。


「ハァ、別に仕事している人はみんな偉いっつうの。それを冒険者は危険な仕事をしているから特別偉いっておかしくない?」


 反論するような毒なのに、意外にまともなことを言っているようにも聞こえてくる。


「地盤沈下しそうな地下鉄を治してくれる工事現場のおっちゃなんか地味なのにめっちゃ偉いじゃん。

 車が渡る橋を作ってくれる人も、高いところからロープで吊るされて海に落ちる危険があるのに頑張ってスゴイっての。

 車に乗って長距離を運転する人も眠さと大変さがあって。

 漁師さんも海なんて何が起こるかわからないじゃん。まさにダンジョンだっつうの。みんな危険な仕事だよ。どれも偉いに決まってんじゃん。冒険者だけが偉いってのはおかしいって言ってんの」


 コメントを書いた者が黙ってしまう。

 すぐさま他のコメントで冒険者はかっこいいとか、大変な仕事だと擁護するコメントが書き込まれる。


「どうせ見えてる程度の危険とか、目立っているからでしょ? あっ、先にいっておくけど。私も冒険者だからね。ランクはA。高ランクだけど何?」


 冒険者は最高ランクをS。次いでAと言うことになる。最低ランクが確かFだったので、見た目の美しさにプラスして、高ランク冒険者だと言うことに驚いてしまう。


「文句があるなら冒険者として仕事してから言えって言われるからさ。成ってやったけど何? 文句があるあんたは冒険者の仕事したことあるの?」


 冒険者の仕事を知らない者のコメントだったのだろう。擁護していた者たちも、高ランク冒険者であることが判明して、完膚無きまでにコメント欄を毒舌で薙ぎ倒していく。

 そんな配信者にボクは、笑いが止まらなくなっていた。


「疲れたから今日はこれでおしまい。あっ、毒舌配信の悪舌アクゼちゃんをよろしくね! いいねとか、フォローくれてもいいよ。ファンだからって、現実で声かけるのはやめてね。マジでキモいから。それじゃ。また明日」


 そう言って動画は、10分ほどで終わってしまった。


 ボクはついつい、フォローボタン押して明日の配信を楽しみにしてしまう。


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あとがき


どうも作者のイコです。


中編コンテスト《賢いヒロイン》をテーマにした作品を考えてみました。

文字数が2万文字〜6万文字の制限があるので、まとめられるように頑張ります(๑>◡<๑)


応援お待ちしております。

レビュー、いいね、誤字脱字報告、コメントを是非是非お願いします(๑>◡<๑)


どうぞよろしくお願いします(๑>◡<๑)

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