第二話・町から町へ

 住んでいた町を去らなければならなかった。

 ──そこまでしなきゃいけないのかな。親友は心配そうにしていた。

「あの人が居ないところに行かないと、落ち着かないような気がするから。大丈夫だと思うけど、知らない町に行くのは少し怖い」

 そっか、と親友は、泣きそうな顔で苦笑いを浮かべた。私も似たような顔をしている気がする。

「落ち着いたら、遊びに行くからね。必ず、連絡して。連絡するんだよ!」

 駅のホームで、私と親友は抱きあった。永遠の別れではないのに、会えなくなるかもしれない不安がそうさせた。

 改札を抜けて、二番ホームで特急に乗り込んだ。

 座席に座り、私は使っていた携帯の電源を切る。これは、これから向かう町で待ってる人との約束だ。

 割と大きな駅で、各駅停車の電車に乗り換える。時間を確認して、私はコンビニに寄ってみた。




 ──あの町までの移動を思い出すだけで、まだ手が震えてる。怖いわけじゃなくて、多分まだ、私は立ち直れていないんだろう。

 外はまだ、雨が酷い。朝までに全部思い出せるだろうか。雨は、やむだろうか。

 そういえばあの頃、コンビニでプリペイド式の携帯を買えるようだった。あのコンビニで、新しい携帯を手に入れて、古い携帯はバッグの奥深くに仕舞ったことを思い出す。




 電車が駅に着いた。迎えの車を探す。シルバーの軽四だとメールに書いてあった。

新原にいはらさん?」

 私の正面で、にっこり微笑む女性。

 ネットで調べてみつけた、『明後日あさっての会』の会長の、鈴木さん。シェルターや、ピアカウンセリングなど、いろんな活動をしている会。

「ようこそ。ひとまず、車に乗って」

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