第43話 ユーザリア帝国との戦い③

「ナビィ、対峙して思ったんだけど、人や亜人じゃない者が混ざってるね。」


「うん。表面上は人間に成りすましているけど、あれは悪魔だね。」


「やはりな…。少し調べてみようか。」


「北条 響が発動する!スキル『鑑定および探索』!」


 俺は、敵軍がまだ余りにも遠方なので、探索で悪魔を検索した後に、鑑定を使うという合わせ技で、ユーザリア帝国軍に入り込んでいる悪魔の情報を入手した。


名前 悪魔ルーナス

年齢 1092歳

種族 悪魔

レベル 109

HP 1024

MP 910

AT 892

MAT 910

DEF 754

MDEF 710

DEX 624

INT 821

AGI 609

スキル 不明

説明 古来からユーザリア帝国に存在していた悪魔。最近になって長い眠りから目覚めた。


「やはりか。今回の戦争の元凶はこいつかもな。」


「そうだね。このルーナスを滅ぼすのは確定だね。ただ…レアの戦姫で勝つのは難しいね。悪魔はSRの戦姫に対応して貰おうよ。」


「了解!じゃあ、ナビィ。推奨する師団デッキを組んでくれる?」


「はーい!組んだよ。アプリの方で確認してみて。」


「おっけ。サキに、エクサーシャに、イーナにニャンもか。SRにはシノブか。シノブはNキャラでも世話になったよな。よし、ナビィの編成通りで行こう。」


「北条 響が命ずる!師団デッキ準備!」


「準備完了!」


 俺の掛け声に反応して、師団デッキに編成された戦姫達がスマホ画面に表れる。俺は戦姫達の存在を確認して指示を与える。

 

「総員、顕現せよ!!」


 俺の合図と同時に、スマートフォンの画面から戦姫達の姿がスッと消え、スマートフォンから多数の光粒子が放たれた。散乱していた光粒子が12もの光に構成され、やがて大きな光となり、戦姫達の形が浮かび上がっていった。


「団長!」「やっほ。」「イベントだね!」「主様~!」「参上しました。」


 12人もの戦姫が俺の周囲に顕現された。良くみれば全員が美女達である。これまでもそうだが、スマホ上ではアニメキャラなのだが、顕現すると本物の女性の姿に変わるのは、大変驚きである。


「みんな、良く来てくれたね!情報共有で分かっていると思うけど、この戦イベントは、あの悪魔が裏で手を引いていたボスのようだ。俺達は、この正面の1万4000名を相手にし、ボスを撃破するのが任務だ。」


「団長!了解です。兵士達は殺しちゃっていいの?」


「兵士達は、悪魔のせいで戦争に駆り出された言わば被害者だ。動けない程度に痛めつけてもいいけど、なるべく殺さない様に。それ故に難易度はかなり高いぞ!みんな出来るかい?」


「もっちろん!」「任せて~!」「思い切りブン殴りたかったぜ!でも了解!」「主様の為なら、おまかせ下さい!」

 

「良し!頼むぞ。戦闘中は、スキル『情報共有』の能力で『念話』が使えるはずだ。指示の伝達や戦姫からの報告は、念話で行おう。」


「シノブ!今回は、SRキャラとしての顕現だ。役割は、単純明快だ。敵の兵士は、他のみんなに任せて、ボス悪魔を滅ぼせ!」


「御意!御館様も期待にお応えしましょう。」


「侯爵様、伯爵様。戦姫は、準備完了です。」


「うん。ヒビキ君。そして戦姫のみなさん。宜しく頼んだよ!じゃあ、行こうか。」


「全軍、出陣!!」


「うぉー!」「わー!」「倒せー!」


 軍勢が進発すると、我が軍の勇士たちや独立軍の戦姫たちは、リッテルバウム侯爵の一喝に応え、機敏に出陣した。これに呼応して、ユーザリア帝国軍も総力を結集し、進軍を開始した。身軽で身体能力に優れた戦姫たちは、あっという間に中央部隊に突入した。


 そして、R戦姫のエクサーシャは、魔法の極致を駆使して『ダイヤモンドダスト!』と一喝した。氷の嵐が先頭の敵兵たちを襲い、瞬く間に彼らを包み込んだ。吹雪の勢いはますます強まり、敵軍は完全に凍りついて身動きが取れなくなった。その魔法によって、中央軍団の1割が戦闘不能に陥っていた…。


 そのままエクサーシャは、自らの羽で大空へと舞い上がり上空からの攻撃に移行する。一方、他の戦姫達は、足の止まった次の兵士達へと襲いかかる。


「分身斬り!」


 サキのスキルが発動する。驚くべき分身能力によって、15人ものサキが姿を現し、それぞれが個別に攻撃を仕掛けていく。


Zaku!

Gusa!


 その攻撃音が、敵兵たちの悲鳴と共に響き渡った。致命的な一撃は避けたものの、刀の切っ先が体を裂き、多くの兵士たちが倒れ込んだ。


 そして、イーナエスタは、独自の技「ホーリークラッシュ」を繰り出す。彼女は剣に聖なる光を宿し、帝国兵たちに次々と斬りかかっていった。その素早い動きと強烈な攻撃力によって、誰もがイーナの剣撃を受け止めることができず、そのまま崩れ落ちた。


 R戦姫はの進行は順調で、サキ以外のR戦姫達は次々と帝国兵達を斬り伏せて行く。圧倒的な能力差故の無双が続いており、中央の兵士5割が戦闘不能となっていた。


 一方、王国軍は二手に分かれ、左翼と右翼の師団にそれぞれ1万人ずつ配し、帝国軍の両翼それぞれ8000人に対して攻撃を仕掛けた。通常ならば、総数3万人対2万人という人数の劣勢から苦しむことになるはずだが、両翼での戦闘では、2000人以上の戦力差を持ち込んだことで、有利な状況での戦闘を展開することができたのである。


「よく聞け!踏ん張れ!ヒビキたちはもう本隊の半数を倒した!勝利は我々の手にあるんだ!」


 王国の軍副司令官であるダスティン伯爵は、激励の声を上げた。彼の声によって兵士たちの士気は一層高まった。本来、精鋭揃いの帝国軍に対して能力でも劣るとされる王国軍だが、士気の差が災し、終始圧倒的な優位に立ち進んでいる。


 ―――― to be continued ――――

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