第37話 討伐依頼(後編)

ーーー 視点切替(ジュリア) ーーー


 私は、初めての戦闘に臨んだ。自分がどのように立ち回り、どのように戦えばよいのか、不安に包まれていた。しかし、何故か自分が戦闘における最善の方法を理解していると感じていた。


 その理由は明確ではないが、推測するならば、私が新たに得た賢者という高位職業か、またはヒビキ様から授かった異世界の装備アイテムのどちらかによるものだろう。どちらも私の能力が向上したという実感を与えてくれたのであった。


 ヒビキ様の突撃で戦闘は開始された。


 即座に、私も移動を開始した。中央の戦闘はヒビキ様にお任せし、私は周囲にいる敵集団から離れた場所にいるゴブリンを狙い撃つことにした。目の前の50メートル先に敵の姿を確認し、直ちに詠唱を始めた。


「アトミックレイ!」


 ウィザードロッドから放たれるアトミックレイは、装備固有の魔法である。然しながら、私がこれを手に入れた途端、アトミックレイの術式を瞬時に理解したのだ。今後は、ウィザードロッドを持ち歩かなくとも、アトミックレイを自由自在に操ることができるようになったのだ。


 アトミックレイは、光線による攻撃である。魔力を一点に集中させ、光線のように束ねた魔力を放つ。アトミックレイによって放たれた光線は、鋭く素早い力となり、目の前のゴブリンに直撃した。その鋭い光線は、脳天を貫通し、一気に二匹のゴブリンを同時に屠ってしまった。


「恐ろしい魔法だわ…。」


「そうね。でも、ジュリア。躊躇すれば貴方が危険に晒されるか、団長が危険に晒されるかよ!」


Shu!

Gyaaha!


 私のサポートをしてくれているヨハンナさんが放った矢は、ヒビキ様の背面から忍び寄るゴブリンの脳天に突き刺さった。


「ヨハンナ。助かったよ!」


 ヒビキ様のピンチを救ったヨハンナさん。なるほど、躊躇っている時間的余裕はないことを理解する。私は、直ちに移動を開始し、他のゴブリンを標的にする。


「アトミックレイ!」


Pyun!

Gyaaha!


 一体ずつだが確実にゴブリンを屠って行く。ヨハンナさんは、ヒビキ様の指示通り、最低限の攻撃しかしない。今度は、私がヒビキ様をお守りしなくては…。


 周囲のゴブリンは見る影もなく倒され、他の者たちも半数以下に減ったが、中央のヒビキ様の周りには、まだ残存するゴブリンたちが集結していた。


「ヒビキ様、危ない!アトミックレイ!!」


 私は、中央近くまで移動して、ヒビキの周囲を囲むゴブリンに光線を放つ…。


Pyun!

Gyaaha!


 光線の貫く攻撃が、最も効果的な場所に移動してから、一撃を加えた結果、3匹のゴブリンが同時に屠られた。この一撃によって、ヒビキ様の戦況は一気に好転し、ヒビキ様もさらにゴブリンの死体の山を築き上げていった。


「ヒビキ様!」


「ジュリア!凄い攻撃だったね。助かったよ。君は大丈夫だったかい?」


「はい!大丈夫です。」


 周囲からゴブリンの気配は完全に消え去り、私たちは協力し合いながら32匹のゴブリンを討伐することに成功した。ギルドには、証拠としてゴブリンの耳を切り取って提出する必要があったが、ヨハンナさんが先頭に立って行動し、全ての耳の回収を完了してくれた。


(ピコーン)

(どうやらレベルが上がったみたい。)


 私は、ヒビキ様に教わった通り"ステータス"と唱えて能力を確認した。


名前 ジュリア

年齢 26歳

性別 女性

種族 エルフ族

ジョブ 賢者 (SSR)

冒険者ランク G

レベル 3 → 23

HP 32 → 132 (+100 )

MP 53 → 173 (+240 )

AT 20 → 100 (+40 )

MAT 35 → 155 ( +120 )

DEF 18 →98 ( +140 )

MDEF 28 → 128( +140 )

DEX 20 → 100 (+20 )

INT 33 → 153 ( +100 )

AGI 19 → 99 ( +120 )

スキル 連続詠唱×6 魔法解析

新規獲得魔法 ヒール ・ サンダースピア ・ ファイアボール ・ ウインドカッター ・ アトミックレイ ・ アタックアップ ・ マジックアップ ・ スピードアップ ・ プロテクト ・ ハイヒール

装備 ウィザードロッド(R)バトルドレス(R) バトルブーツ(R) 天使の涙(R)

装備スキル 温度調節 防汚 疲労軽減 修練の奇跡 (上限50レベル) 魔法「アトミックレイ」



「えっ?嘘でしょう?」

 

 私のレベルが異常な変化を遂げていた。たった3だったレベルが一気に23に跳ね上がってしまった。これは私自身の能力ではなく、ヒビキ様が持つアイテムや、能力による影響なのだろう。どうやら私は、驚くべき方の従者になっていたようだ。この、非常識なレベルアップのお陰で、私は数多くの魔法を習得したようだ。「ヒール」だけでなく上位魔法の「ハイヒール」まで…。「ハイヒール」は、きっとヒビキ様のお役に立つと確信し、喜びに胸を膨らませた。


―― 視点切替(ヒビキ) ――


 数多のゴブリンが、ジュリアとヨハンナの援護を得て、我々によって打ち破られた。今回の戦闘は、驚異的な成果をもたらした。まずは、ジュリアの素晴らしい能力が挙げられるだろう。彼女は戦闘の初心者であったが、立ち回りや魔法攻撃において、私と同等の技術を発揮した。彼女の最適な位置への移動と緻密な魔法攻撃は、熟練した冒険者たちと肩を並べるほどだった。そして、その魔法は、敵を一瞬で倒すほどの破壊力をもっていた。


 自分に関して分析しておこう。


 今回はスライムに敗れた際の自分とはまったく異なる、戦姫のような雄々しい姿勢を見せることができた。この荘厳な勝利には、レアなアイテムの存在が肝心な役割を担った。しかしそのアイテムを掌握することができたのは、スマホマスターという職に帰するものであろう。昔は軽視され、最弱とみなされた職業であったが、WWGとFFWの世界での実力を最大限に発揮できるスマホマスターは、最強の職業と捉えてもよいのではないかと思えてならない。


(ピコーン!)


「団長!レベル上がったね。」


「ああ。確認してみようか…。ステータス!」


名前 ビビキ

真名 北条 響

年齢 18歳

性別 男性

種族 人間族

ジョブ スマホマスター (ランク外)

冒険者ランク D

レベル 30 → 42

HP 70 → 106 (+120 )

MP 50 → 86 (+100 )

AT 55 → 91 (+120 )

MAT 50 → 86 (+20 )

DEF 50 → 86 (+140 )

MDEF 50 → 86 (+140 )

DEX 55 → 91 (+20 )

INT 60 → 96 (+20 )

AGI 50 → 86 (+120 )

顕現コスト 50

スキル スマホ召喚 ・ 異能アプリ ・ スマホフィルター ・ 戦姫解放 ( SR ) ・ 通販サイト ・ ストレージ内アイテム解放( レア ) ・ 修練共有

装備品 グレートソード(R)バトルコート(R) バトルブーツ(R) 天使の涙(R)

装備スキル 剣術の素質(レベル1) 温度調節 防汚 疲労軽減 修練の奇跡 (上限50レベル)


 驚きの表情を浮かべながら、俺は異常なレベルアップ現象が再び起こったことを確認した。『修練の奇跡』に加えて、ジュリアとの『修練共有』のスキルの相乗効果により、俺はさらに膨大な経験値を獲得することができたのだろう。


 しかも、私はレベル30を超えてから各ステータスの上昇値が、従来の1から3に大きく変化したことに喜びを感じた。この調子で順調に進めば、いつか俺も剣聖アマーシャと並ぶ日が来るのかもしれない……。


 我々は任務を無事に達成した後、王都マルロムへの帰路に就いた。


(王都マルロム 冒険者ギルド)


「確かに32匹のゴブリンの証明を確認しました。報酬は、銀貨4枚と大銅貨8枚です。」


「ありがとうごさいます。」


「それから、ジュリアさんは、貢献ポイント達成により、Eランクへ昇格しました。カードを書き換えますね。」


 今回のゴブリン退治は、その数の多さゆえに、相当の報酬を手にすることができた。加えて、ジュリアはランクアップし、レベルも著しく上昇した。この経験は、将来の戦いにおいて必ずや活かされることだろう...。

 

―――― to be continued ――――

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