第18話 剣聖アマーシャ

「ヒビキ君、待ってたよ。」


「アマーシャさん!?どうかしたんですか?」


「訓練場での試合、見ていたわよ!」


「そうだったんですね!ありがとうございます。」


「君は、他の人とは何かが違う気がしていたけど、その理由がわかったよ。」


「俺自身は、全然強くないんです。でも、このスマホマスターのジョブには、2人のような戦姫をこの世界に呼び出せる能力があるので、それで勝てただけです。彼女達が居なければ惨敗でしたね…。」


「それでも君は、その能力で勝利した。誇ってもいいと思うよ!」


「そうですかね?」


「そうよ!」

「あーあ。私も頑張らなきゃなぁ。そう思える程、戦姫の2人の力は、相手を圧倒していたわ。私は、あの戦いを見て、とても刺激を受けたのよ。」「あのね…。ヒビキ君。実は、君にお願いがあるのよ。君の戦姫と模擬戦出来ないかしら?今の自分の実力を試してみたいの。」


「本気ですか?」


「ええ。勿論よ。私が更に成長して行くには、きっと必要なことだと思うのよ。」


「なるほど。アマーシャさんの希望はわかりました。」「以前、ここで救って頂いた恩もありますし、模擬戦の話、引き受けたいと思います。」


「良かった!ありがとう。あの時、心の声に従ってヒビキ君の手助けをして良かったわ。そのお陰で、こうして君との縁が生まれたしね。」


「俺も剣聖の友人が出来て鼻高々ですよ。」


「友人と呼んでくれてくれるのか?」


「えっ?駄目でしたか?」


「いや、嬉しく思うよ。私は、真面目な性格故に、面白味が無いらしくてな。友人と呼べる存在が殆どいないんだ。」


「そうなんですか?少し意外です。でも、それなら俺もですよ。」


「そうなのか?君の様に愛嬌のある性格ならば、友人は多いのかと思うが…。」


「俺は、名も無い村の出身ですので、同年代の方と接する機会が無かったんですよ。だから、友人はアマーシャさんが初めてです。」


「それは、光栄だな。なら、私に敬語を使うのはこれで最後にして欲しい。」


「ありがとう。わかった。アマーシャ。」


「うん。それでいい。これからよろしく頼む。」


 俺達は、そっと拳と拳を合わせた。この時、初めて友人が私に出来たのであった。


「さて、どうしようか?流石にここでやり合う訳にはいかないだろう?」


「あぁ。そうだな。では、王都郊外にある空き地を使おう。あそこなら人通りは少ないし、他の人を巻き込んで怪我をさせる心配はないだろう。」


「わかりま…わかった。では、そこに行ってみよう。」


――――


(王都郊外の空き地)


 我々はしばらくの間、徒歩で進んで、都市郊外に位置する荒野に到達した。人通りはまったくなく、広がる景色には人の気配が感じられない。住宅地や商業地からも遠く離れており、訓練や模擬戦に最適な場所だった。


「では、アマーシャ。この二人の戦姫のどちらと対戦するのか決めてくれるかい?」


「どちらが強いとかあるのかしら?」


「二人の能力に、大きな差はないと思うよ。どちららもレベルカンストしてるしね。」


「カンスト?」


「二人ともレベル上限の100なんだ。」


「100だと?」


「やっぱりおかしいよね?」


「ええ。ギルド内でもそのレベルに到達している人は居ないと思う。」


「そ、そうなんだ。知らなかったよ。」「えっと、向かって左側の戦姫は、エルル。小柄だけど非常に力持ちだ。ハンマーで戦う。」「向かって右側は、シノブ。瞬発力が高く、機動力を活かした戦闘が得意だ。忍者刀という武器で戦う。」


「どちらと戦うか迷うわね?」「では…シノブさんでお願いするわ。」


「了解!シノブ。宜しく頼む。」


「御意。」


「ルールは、戦闘不能状態になるか、降参を宣言したら終了でいいかな?」


「うん。わかった。」


 俺は、参考の為に、アマーシャの能力をチェックさせて貰うことにする。俺は、真名によって鑑定アプリを起動する。そして、アマーシャを画面に写るように合わせると、ステータスが表示された。


名前 アマーシャ

年齢 18歳

性別 女性

種族 人間族

ギルドランク D

ジョブ 剣聖 ( SSR )

レベル 20

HP 302

MP 191

AT 220

MAT 162

DEF 194

MDEF 201

DEX 224

INT 189

AGI 222

スキル 能力向上(レベル1) ・ 五光斬 ・ 剣の素質(レベル1)

説明 より高みを目指す少女。努力家。ヒビキとは、友人。最近、ヒビキに好意を抱き始めた。


( 流石SSRジョブ。そのレベルでこの能力値。俺とは比べ者にはならない。SRのアサシンを持つボギーもステータスは高かったが、次元が違う。流石にカンストNキャラ戦姫には遠く及ばないが、レベル上がって行けばRキャラ戦姫よりも強くなるかも…。)


 参考までにシノブのステータスも確認しよう。

 

名前 シノブ

年齢 20歳

性別 女性

種族 人間族

ランク N ( ノーマル )

ジョブ くノ一

レベル 100 (MAX)

HP 450

MP 220

AT 310

MAT 256

DEF 180

MDEF 196

DEX 400

INT 220

AGI 400

スキル なし

説明 東方国の忍。非常に真面目な性格をしている。スキルはないが、潜入や暗殺は得意。


(やはり、シノブの方が能力値は、アマーシャよりかなり上の様だ。アマーシャ。その能力差をどう戦うか…。)


「では、始めようか。双方前へ。構え!」

「始め!」


「能力向上!」


 どうやらアマーシャは、スキルを使用したようだ。このスキルは、自身の能力値を大きく上昇するスキルの様だ。


名前 アマーシャ

年齢 18歳

性別 女性

種族 人間族

ギルドランク D

ジョブ 剣聖 ( SSR )

レベル 20

HP 377 ( 75↑)

MP 238 ( 47↑)

AT 275 ( 55↑)

MAT 202 ( 40↑)

DEF 242 (48↑ )

MDEF 251 (50↑)

DEX 280 ( 56↑)

INT 236 ( 47↑)

AGI 277 ( 55↑)


 この能力向上は、25パーセントの能力値補正がかかるようだ。能力値の差は先ほどよりもかなり接近したように思う。


「行くぞ!!」


 両者の戦闘が幕を開けた。アマーシャが先手を取り、シノブは守りの姿勢をとった。アマーシャの上段切りは、ためらうことなくシノブの首筋を狙った。


Keen!


 シノブの手元に握られた忍者刀は、二刃を有し、その両方を巧みに駆使して攻防を行う。アマーシャの上段からの攻撃を、見事に受け止めた。

 

「やぁ!」


Shu!


 シノブは、アマーシャの刃を軽く弾き返し、瞬時に横斬りを放った。太刀の刃は、空気を切り裂き、アマーシャの顔面を直撃するかと思われたが、その刃は宙を舞った。アマーシャは、シノブの攻撃に素早く反応し、狭い隙間をうまく利用して一歩引いたのだろう。


(流石は、剣聖。格上相手でも、感覚や、危機察知が優れているようだ。)


「アマーシャさん。やりますね。」


「シノブさん、あなたもね!」


 2人は、遠くから見つめ合い、少しだけ微笑んだ。


Shu!

Shu!


 同じタイミングで間合いを詰め始めた。


Kan!Kan!Kan!Kan!Kan!Kan!


 攻防が激しさを増し、二人の太刀筋が交錯する様は、まるで炎と水の激しい戦いのようであった。剣のぶつかり合いによって散る火花が、その情景をより一層壮絶なものにしている。俺は、息を飲むような攻撃の応酬に見入っていたが、その速さに追いつくことはできなかった。


Shu!

Shu!


 双方とも息を切らしながら、一旦距離を取ったようだ。アマーシャもシノブも、約1、2分間休むことなく攻撃し続けたため、肩で息をしながら休憩しているように見えた。よく見ると、二人とも腕や肩周辺に傷を負っており、深刻な怪我ではないが、お互いの攻撃が命中したことが分かる。


 この時点まで、激しい攻防が続いたが、双方に勝負の行方は定かではない。その中でも、ステータス的に劣るアマーシャは、剣術のレベルを引き上げる"剣の素質"という能力を持っており、これが互角の勝負に繋がったと推測される。


「五光斬!」


 アマーシャは、剣術スキルを発動し、再度攻撃に踏み出した。瞬く間に相手の間合いを縮め、華麗な一閃を放つ!瞬時に目に入ることすら叶わぬその一撃が、シノブに突き刺さる。シノブは、二刀を駆使して刃を受け止めるが、次の攻撃が直ちに襲い掛かる。片方の忍者刀でなんとか凌ぎ、そして、第3撃は、シノブの左脇腹を貫いた。第4撃は、右肩から胸にかけて深く突き刺さり、第5撃目は、胸から下腹部に至る傷を負わせた...。


「きゃあ!」


 シノブは、強力な連続切りをまともに受けて、後方に倒れ込んでしまった。アマーシャのスキル"五光斬"は、なかなか強力な能力のようだ。


「そこまで!」


 俺は即座に試合を中止した。シノブは深刻な怪我を負っていたが、戦姫としての特性から、ここで死亡したり、重傷を負ったりしても、次に現れるときには完全に回復するため、まずは心配はない。


「シノブさん!大丈夫ですか!?」


 アマーシャは、直ぐにシノブの元に駆け寄り、シノブをそっと抱き起こす。


「やられたわ。最後の攻撃は、見事でしたよ。私は、大丈夫…。また、御館様にお呼び頂けた際には、元気になっていますから…。」


「シノブ、ご苦労さま!ゆっくり休んでね!送還!」


Shun!


シノブは、光の粒となってスマホに帰って行った…。


「ヒビキ君!シノブさんは?」


「大丈夫!俺の戦姫は、こちらでやられてもちゃんと復活するから。」


 俺は、涙目になっているアマーシャを気遣い、笑顔で答えた。


「そ、そうなんだね?良かった!シノブさん強いからつい思い切りやってしまったよ~!どうしようかと思ったわ!」


「あはは。アマーシャの必死な顔良かったよ。」


「あっ、コラー!ヒビキ君!酷いよ!本当に心配したんだから!」


「団長!イチャイチャ?」


「あっ、エルル。違う違う。」


 アマーシャとシノブの模擬戦は、アマーシャが勝利して終了した。後で改めてシノブにお礼を言っておこう…。


―――― to be continued ――――

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