第39話 パーティーの後始末

 アキラが領主の屋敷から出る。

 ラインとヴィーを始めとする冒険者たちも同じように屋敷を出てくる。


「さてさて、私は、主のもとに戻って後始末の算段をしますわ。

 元気でね、アキラくん。」

 そう言い残し、ラインは蜃気楼のように消える。

 それぞれの冒険者もお互いの健闘を祈念し、三々五々別れて行った。


「じゃ、アキラさん。

 私もこれで失礼するよ。」

「ヴィーさんは、これからもソロで活動するのですか?」

「ええ、こちらのほうが、都合がいいので。

 …それでは。」

 ヴィーも去って行った。


 アキラが最期までその姿を見つめていると、領主の館から出てくるクロウとトマス。

「使節の役目、ご苦労さまでした。」

 三人はサムアップを交わし街道に出る。


「それで、話はまとまりそうですか?」

「万事抜かり無しですよ。」

 屋台で買った串焼きを頬張りながら話をしているアキラとクロウ。


 領主の奥さんや娘さんを助ける際に、姉妹の力を借りていたのも奏効したらしく、領主館にアキラが突入する頃には、女性も四人揃ってかしましく話すまでになっていた。

「明日にでもレベッカが遊びに行くみたいですよ。

 領主様は不満そうでしたけどね。」

「まぁ、神隠しの実態も程なく解るでしょうし、領主にとっても良い話になると思いますよ。」

「御意。」

 更に歩いている所で、不意にアキラがトマスに質問する。

「ところで、今回のパーティーって、何でハインケル卿が絡んできたんです。」

「「彼の趣味です。」」

 二人が同じ解答を述べる。

「はぁ…。」

「まぁ、いいじゃないですか…ね。」

 消化不良気味のアキラを宥めすかすトマス。

 三人は和気あいあいと街道を進んでいった。


 ◇ ◇ ◇


「こんばんは、ライラお姉様、シイラお姉様♪」

「あら、レベッカ、いらっしゃい。

 お母様はお元気かしら。」

「ええ、お母様も、お姉様たちにお会いしたかったみたい。」

「じゃ、今度はお茶会に呼ばれようかしら。」

 レベッカを親しみを持って迎え入れるライラとシイラ姉妹。


「今日はお父様の命を受けてやって来ました。

 ヨロシクオネガイシマス。」

 レベッカの慣れない挨拶に苦笑する姉妹。

「まぁまぁ、硬い話は、明日に回して、今日はゆっくり語り合いましょう。」

「はいっ!お姉様。」

 飛び跳ねながらレベッカが姉妹のもとに駆け寄っていく。


「あ・な・た。

 今後は、もう少し私にも相談して下さいね。」

「いやぁ~、そんなこと言ってもなぁ…。」

「そんなことぉ~?」

「ああ、すまない、すまない。

 今度は、ちゃんと相談するっ!

 するっ!」

 奥様のお叱りを受け、すっかり縮こまっている領主。


 領主と奥方の向かいには、苦笑いのラインとリッケルトが控えている。

 まぁ、ラインはガイコツなんで、苦笑いなど出来ないはずなのだが。


 さておき、妾としてやって来た悪魔を討伐した事で、報奨されることになったリッケルト。

「さて、リッケルト殿、報酬は何を望まれるか?」

「出来ますれば、亜人・獣人と人種が共生できる地域を設けて頂きたい。」

「それは、ライラ・シイラ姉妹の居城とその周辺では不満だろうか?」

「出来ますれば、もう少し広げて頂ければ、幸いです。」

「解った。

 もとより姉妹には頑張ってもらいたかったので、喜んで受け入れよう。」

「恐悦至極。」

 ラインとリッケルトは揃って頭を下げ、領主の前を退くのだが、退室の際にメイド長に声をかけるライン。


「これを、領主様夫妻のお茶に混ぜて下さい。」

「これは?」

 ピンクの液体が入った透明のビンをメイド長に渡すライン。

「はい、夫婦仲を円満にする秘薬です。

 お茶の時など、紅茶ポットに二適ほど入れてお出し下さい。

 …どうにも、夫婦仲がよろしくないようなので。」

 クスクスと笑い合ってしまう、メイド長とライン。


「やり過ぎると中毒を起こすので、程々にお願いしますね。

 それと、跡取りが二、三人増えてしまうかも知れませんが…。」

 会話の途中で、急に悪い顔になるメイド長とライン。


「それは、他の人でも使えますの?」

「メイド長でも、使って頂けますよ。

 意中の人と既成事実を作る小道具として…。」

 クスクスから、グヘヘと笑い声が変わっているメイド長とラインだった。

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