朝にウ○コを出す方法 〜お菓子工場アルテミス〜

ぢんぞう

第1話「就職」

 トントン。

 トントントン……

「すいません。あの、もう出そうで……」

 力なくトイレのドアを叩く。


 誰が入っているんだ?

 すぐに出てくれないかな……


 トイレのドアを叩くとすぐに水を流す音がして、ドアが開いた。

埴安はにやす、急ぎか!? ハッハッハー、急げ、急げ!!」

「は、はい。あ、ありがとうございます……」

 急いでトイレに入る埴安。


 助かった。

 便器に座り安堵する埴安。


 トイレに入っていたのが蜂須賀はちすかさんで助かった。

 もう限界だったもんな……

 トイレの中の洗面台にあるゴミ箱の袋を出してしょうかと思ったよ。

 しかし、なんで、この工場は男性のトイレの大用の個室がひとつしかないんだ?

 急な便意があって、今みたいに人が入っていたら困るじゃないか。大用の個室は二つは欲しいな。

 意地の悪い黒川が入っていたら、絶対にすぐには出てこなかっただろうな……


 俺の腹は弱い〜

 もっと丈夫なお腹にならないものだろうか……


 埴安はにやす あきら、18歳。

 高校を卒業して、お菓子工場アルテミスに就職したばかりである。

 悩みは、お腹が弱くて仕事中にトイレに行くこと。そして、この工場には男性用のトイレの個室がひとつしかないことだった。



   『朝にウ○コを出す方法』

   〜お菓子工場アルテミス〜



 この物語は、お菓子工場に就職した埴安が仙術に伝わる導引どういんと言う技を学び、自分の弱いお腹を改善して、自宅で毎朝ウ○コを出すことに成功するお話しである。



 ❃



 高校3年生。

 埴安は就職活動をしていた。

 工業高校の電気科だったので、先生の推薦で電力会社を受けた。

 今までの経験上、絶対に合格すると担任の先生は言ってくれたが、結果は不合格。クラスから三名受験して埴安だけ落ちた。


 次は、大手電機メーカーを受けることになっていたが、就職試験の直前に大手電機メーカーが、今年は新入社員の採用をしないことになったと知らせてきて、就職試験自体が無くなった。


 高校卒業まで、あとわずか。

 焦る埴安。必死に求人情報を見るが、ハローワークの求人票の見方もよくわからない。

 だいたい、いままで働いたこともないのに仕事を選べと言われても、何を基準に選んだらいいのかもわからなかった。


 どうしよう!?

 アルバイトで暮らすか?

 コンビニの店員とか?

 しかし、正社員の方がいいな……


あきら、これどう? 家から近いよ」

 自宅のパソコンで求人票を見ていた母親が明に求人票を見せる。


「お菓子工場?」

「そう。ここのお菓子、美味しいのよ!」

「お菓子って、俺がお菓子を作るの?」

「いいじゃない。作りなさいよ」

「俺は、お菓子なんて作ったことないよ……」

「これ、これ。よく見て、機械設備の保守点検て書いてあるじゃない! あんた電気科でしょ。いいんじゃない?」

「機械設備の保守点検ね……」


 結局、自分で仕事を決められない僕は、母親の薦めるお菓子工場に応募した。

 結果、合格。

 

 なんとか高校卒業までには就職は決まった。

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