お試しということで付き合ってみない?

二髪ハル

プロローグ

 

 寒い2月18日。俺、久遠くどう 永吉えいきちはコタツを取り出しゲームをしていた。

「……寒っ」

 外は風が強く吹いていてそこし出ただけでも寒い。部屋の中も外ほどじゃあないが冷えている。

「じいちゃんにコタツあって良かったわ……」

 このアパートは俺の祖父。じいちゃんが部屋を一つ貸してくれた。

 意外と学校からこのアパートから近いから住まないか? ってじいちゃんから電話があって去年になってしまうが5月のゴールデンウィークの時からずっと住んでいる。

 そしてもう1人同じ時期に俺と同じく住む親戚が……。

「永吉ー! コタツ、私も入れて!」

 その従妹の星場ほしば 木葉このはが現れた。

 そのままこっちの方に近づいてきた。

「木葉。じいちゃんにコタツくれなかったのか?」

「貰ってるよ〜でも1人だと寂しいから付き合ってよ」

「はいはい……」

 そのまま木葉が足を突っ込んできて、木葉の足がアイスみたいにヒンヤリとしていた。

「……冷たっ」

「そう? 部屋にいたんだけど……それにしてもあったか」

 ぐったりと木葉が溶けてしまい机の上に顔を乗せていた。

 彼女とは同じ歳で誕生日とかも同じ9月18日生まれなのだが、1時間ぐらいに俺が先に生まれたらしい大人たちがお酒を飲みながら何度も言っていたから覚えている。

「それで永吉は何してるの?」

「見ての通りゾンビを倒すゲーム。見るのが嫌だったら変えるぞ」

 小さい頃に木葉が怯えてしまい眠れなくなってしまったのは今でも覚えている。

「じゃあ変えてくれる? もし、良かったら一緒にゲームしよ」

「あいよ。それでなんのゲーム?」

「いつもの家とか作るやつ。今回は装備強化したいから付き合って」

「はいよ」

 木葉の希望のソフトに変えてゲームを開始いた。

「……そういえば木材がない」

 自分用の家を建てようとしたんだが木材が足りなく前回の時に終了しちゃったんだよな。

「あげる。あげる」

 木葉のキャラクターがこっちに来て木材をポンポン投げてきた。

「サンキュー」

「うい」

「ダイヤモンドあげようか?」

「頂戴!」

 お返しにダイヤモンドを木葉に渡し、俺は家を組み立て始め数時間が経過した。


「そういえばさバレンタイン終わったね」

「そうだな」

「何個貰ったの?」

「ん? ……4つぐらいかな。木葉のやつを含めてだけど」

「おぉめっちゃモテモテ〜」

「なぁモテるなー」

 クラスメイトから友チョコを貰ったぐらいだけど。

「本命チョコとかってあげたりしないのか?」

「ん? あげたじゃん永吉に」

「マジか、あれが本命だったなんて嬉しいな」

「そうそう、永吉に義理チョコあげたからチョコの味がする本命なチョコ」

「難易度高くないか?」

「ねぇ、私も今言っててないわーと思った」

「まあ、マジの話。好きな人とかっていないのか?」

 木葉も1年ぐらい経つから好きな人とか……。

「いないいない。恋愛は経験したいけど知らないととかだとなんか怖いし嫌かな。今はこうやって永吉とゲームしてる方が楽しいし」

「……そっか」

「なに? 永吉って私のこと好きだったりするの?」

「いや全然」

「真顔じゃん……」

 木葉がこっちの方をじっと見ていたが俺ってそんなに真顔だったか?

「……でもまあ永吉と付き合うならいいかもね。ずっと昔から知ってるから変な気を使わなくて住むし」

「あぁ……」

 まあ、仮に付き合うとしたら俺も木葉とかな……。

 知らない女性と付き合ってもなんか上手くいく想像が思いつかない。

「そうだな。木葉だったらなんか気を使わなくていいかもしれないな」

「……おぉ、意外」

「そうか?」

「うん。付き合ってくれるって言ってくれるのが意外だった。……だったらお試しということで付き合ってみない?」

「……え?」

 付き合うって言われて思わず操作が狂ってしまいずっと壁に体当たりしていた。

「え? 付き合うってマジ?」

「本当だよ。だから……お試しということで付き合ってみない?」

「……はい」

 俺はその場で返事していた。

「……ありがとう。今日はこの辺で帰るね」

 木葉が急いでゲームを終了して玄関の方に向かっていた。

「え、あぁまた……」

「うん」

 お互い手を振り木葉が玄関から飛び出して行ってしまった。

 すると数分後隣の部屋から声が聞こえてきた。


「「彼氏が出来たーーー! 彼氏! 永吉が彼氏だ! やったー!」」


「おっおぉ……」

 隣の大声でビックリしてしまうが不思議と気持ちがあった。

「……彼女か」

 改めて考えると俺も木葉と同じで恋人が出来て嬉し……。

 こうしてお試しだけど彼女が出来ました。

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