第15話 生涯の愛
「心労かろうる病や。今はもうすっかり弱ってしもうて
「待って
「ううん、ほんと。お父様、ずっと心臓が悪かったの。きっとそのせい。ううん、違う。私のせいよね」
二人の様子を無視して淑枝は続ける。
「そしてあの村の半分は藤峯一族の力で食わしてもろうちゅうようなものや。ここで藤峯の会社が潰れるようなことがありゃあ、村のみんなも食い扶持を失くし路頭に迷う。その意味がお嬢さんにはお分かりやか。お嬢さんの縁談はお嬢さんだけのものじゃないのや」
力なく頷く
「だめだ
「お嬢さんが帰らんともっと多うの人が苦労する」
淑枝は娘をひと睨みした。
「わかりました。私、帰ります」
「
凪沙は叫んだ。血の気が引く思いだった。自分も
「いいのかそれで…… いいのかそれでっ!」
「うん、いいの。もう仕方がないの。今までありがとう。ごめんね凪沙ちゃん」
「ただし条件があります」
「条件? なんやか」
「この家出は全て私一人の意思でしたことです。私の計画を知った凪沙ちゃんはそんな私に同情してお節介にもしつこく付きまとってきただけです」
「なんだって……」
唖然とする凪沙。淑枝は眉間にしわを寄せる。
「げにそれでえいがかえ。おまさん一人で全部罪を被ろうというがかえ」
「あいた朝一番の飛行機を取りましょう。ここじゃあひやい。うちの取ったホテルに一緒に泊まらんか」
「はい」
静かに頷く
「
「ごめんなさい…… ごめんなさい……」
「こんなことって……」
愕然としてへたり込む凪沙に
鼻をすすりながら
「準備に十分ほどください。それと凪沙ちゃんにお別れを言う時間も」
「この吹雪の中外で待っていろ言うがかえ」
「ごめんなさいお願いします。あとは言う通りにしますから」
淑枝は不承不承外に出た。
淑枝がいなくなると
「やめて、行くなんて言うな」
「ごめん、私家族は裏切れなかった。あと村の人も」
「じゃあわたしは裏切れるんだ」
凪沙の涙声に
「そんなこと言わないで。愛してる。愛してるの凪沙っ。愛してる愛してる愛してるっ!」
「じゃあここに残ってよっ」
「それはもうできないの。ごめんなさい」
「許さない……」
「えっ」
「わたし絶対許さない。
「……うん」
「え?」
「私今凪沙に絶対に、一生かけても許されないようなことしてる。だから一生許さないで。でも私は一生愛し続ける。どこの誰と無理矢理結婚させられようとも私凪沙だけをいつまでもいつまでも愛し続ける」
「そんな、ずるいよ……」
◆次回 第16話 生贄(Sacrifice)
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