プロローグ④


「ーー仮に」



ひとときの静寂が場を支配した。

だが、それはすぐに解除される。



「仮に転生をしたとして、俺はその世界で何をすればいい?」


『一言で言うなら調和を。詳細は直接感じた方がよかろう。口頭で何かを言っても主は信用しないであろうからな』



調和。


荒み切った欲望が支配する世界で、俺がやれる事は多くないはず。


一人の正義感溢れる人間が赴いた所で何かが変わるとは到底思えない。

・・・思えないが、絶対的な者がわざわざいち人間に声をかけたという事だけは不可思議意外なにものでもない。


無き答えをこの状況で探すというのは酷なモノもある。

ならば、答えは自ずと出ていたのかもしれない。

しかも、コイツらきっと、いや絶対に引きさがらない。

説得の余地が無いのなら、もうどうにでもなれ精神で行くとしよう。



「早くしろ」


『今の我から授けられる物は決して多くはないが、欲するモノを申してみよ。助力しよう』



転生ものありがちの加護(ギフト)というやつか。

ある程度、環境を有利に進める為に必要な能力や技術、知識。

物語の中であればどんな力でも捩じ伏せられる圧倒的な力を得られたりするのだろうが、神はおそらく弱っている。


言葉からも、雰囲気からも、厳格を維持するのだけで精一杯のように思える。


大いなる力には期待出来ない。


ならば、何を得るか?



『早いて悪いが、次世界に降り立つまでにそれなりの時間を有する。それまでに考えておいてくれ。それと旅の共としてアズを連れていくといい』


『へ?』

「いらん」



得られる力については少し考えなくてはならない。

強すぎる力は身を滅ぼしかけない。かといって、努力や気合でどうにかなる半端な力は自分でどうにかなりかねん。


神のおふざけが一瞬聞こえた気がするが、それについては問答無用でNOだ。



『何かと役に立つ。それでは健闘を祈る』


『い、いや神様なにを』


「いらないと言って』



問答無用で身体中が不思議な感覚で満たされて行く。


全てを言い終える前に神は強行に及び、慌てふためくアズリューリュの喚き声が頭の中に木霊していることに苛立ちを覚えた事を皮切りに意識が無くなった。


まったく。


ぶっ飛んだ事に巻き込まれたものだ。


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