第7話 初めての対人戦


「では、始めまようか」


カニスが戦闘態勢に入り、俺も構えがわからないので、適当に構える。


「独特な構え、隙が全く見えない…!?」


え、そうなの?これ隙見えないのか…?


両者が互いを睨み続けて12秒後、

先に動いたのは


ザッ!!


「フンッ!」


副団長、カニスであった。


真正面からの攻撃…!だがラザノフと比べたらカメのようなものだ!これを避けて、


スバッ!


「これを守らずともかわすとは、!ではこれはどうかな!!」


また単純に振り下ろすだけ、何度でも避けてやる、今度は躱した後に横から突く!


ブォン!


今ッ!


ガギギギギギッ!


「成る程、素晴らしい立ち回り。だがまだ読める範囲だ。まだまだ!」


キンッ!キンッ!


互いの距離が近くなったことで躱すことは難しい、近接戦では相手の重心を傾けて体勢を崩す!!


グラッ


「おぉッ?」


ピッッ


「「「おぉっ!!!」」」



周りで鍛錬していた騎士達が動きを止め、この一戦を見守るようになった。

レオンは確かにカニスの体勢を崩した筈だが、カニスはそれにも反応し咄嗟に首を横に傾けた。


「今のはかなり危なかった。予想以上だよ、レオン殿」


仕留めたと思っていた。これが騎士団を率いる者、間違いなくLevelは50近い。

副団長でこのレベルなら団長の強さはどんな者なのだろうか。ガルタナ王国だからといって侮っていた。


「ここまで熱い戦いをしてくれているんだ。とっておきを見せよう。」


とっておき…?

剣の周りに青いオーラが…!


「魔剣・ヘルファイアさ。VI等級魔法『スカイ業火インフェルノ』と鋼鉄の剣を合わせたんだ。さぁ第2ラウンドと行こう!」


ギリリリリ!!


ジューッ


俺の剣が溶けて…!?


「さっきみたいにまともに受け続けたら剣が溶けてしまうよ?」


ブォン!


避けるしかないのか?!


「躱しても無駄だよ!!」


「なにッ!?」


剣を振った瞬間に青い炎がこちらに斬撃と一緒に飛んで…、、


ジューッ


「ぐっ、、」


熱すぎる、、VI等級の攻撃魔法はもろにくらったら上位の回復魔法でも回復が難しくなる。避けても、受けてもダメ。

どうするか…


「考える隙は与えないよ!!」


とりあえずある程度の間合いを取りながら考えてるか。


ボオッ!ボオッ!


「はぁ…はぁ…」


そうか、!VI魔法の維持にはかなりの魔力が必要になる。このまま距離を取っておけばいずれ元に戻るだろう。


「まだまだ…!」


ボオッ!ボオッ!ボオッ!


「これじゃキリがないな…この一撃を出すと1日中響くからしたくなかったんだけどね」


まだ奥の手を秘めていたのか。

次はなにが、、、


劫焔クレスニク威撃クラッシュ!!!」


炎がもっと蒼く、大きくなってる!?

こんなのどうやって防げばいいんだ…?


カニスの放った一撃は修練場のどこから見ても明らかに強大なもので、このままいけばレオンを包み、軽傷ではすまないだろう。


「レオン様!!」


「ヘルム!来るな!」


もう目の前にッ!!




ボォオオオオオオオオ!!!!



「な、なぁ、カニス副団長の対戦相手大丈夫なのか?死んでないか?」


「怖いこと言うなよ…でも、俺だったら即死だろうな。」


「でもさ、最後アイツ怯えることなく突っ込んで行ったぞ?」


「そんなわけないだろ、あんな巨大な炎に突っ込むバカがどこにいるんだよ」


初めは興味本位で2人の前で観戦していた騎士達は先程の興奮していた状態とは打って変わって冷や汗をかき、レオンを心配し出していた。



「少々やりすぎたか、おい誰か、彼に回復魔法をかけてくれ。1人じゃ難しいだろうから数人でな。……おーい、どうした。急いで回復を、、!!」


キーーーーン!カラン、カラン、、


カニスが振り向いた時には遅く、炎の中から突如として出てきたレオンの剣技により剣が遠くへ飛ばされてしまった。

そしてそのままカニスの首に、、、


ピッ



「ふぅ、俺の勝ちだな。」


「まさかあの技を持ってしても倒すことができなかったとは、惨敗だな…」


「「「「おぉぉぉぉー!!!!」」」」


先程まで暗い空気で静かだった修練場はこの決着に大きく沸いた。冒険者を除いたら王国ナンバー2の男を倒したのだ。


「どうして劫焔の威撃を喰らいながらも動けていたんだ?」


「ずっと居続けてもただ焼かれるだけだし、ヤケクソで『極・速度上昇』を使ってなるべく早めに出なきゃって思ってたらなんか出てた。」


極・素早さ上昇は素早さに20pt振ったら獲得できるスキルで、素早さを30%UPさせることが可能になる。


「ははっ、今までずっと思考を凝らしたような戦法だったのに最後は“ヤケクソ”…か。僕にはそれが足らなかったのかもな。」


「でもほんとに僅かな差でしたよ、その力があればラザノフも恐らくは」


「あぁ、その話から始まったのか笑試合を楽しみ過ぎてすっかり抜けていたよ」


脳筋すぎない!?戦い中も俺が攻めなかったと言うより相手が攻めに徹しすぎてたし、、


「でもほんとに不思議だ。貶してるわけでも無いが、これと言って凄い武器も持ってないし、卓越した技術があるわけでもない。それなのに君は僕の予想を遥かに超えてきたんだ」


まぁ最初がモブスタートだったからステータス+ゲームの知識で今までどうにかしてたしな。今回の未知の相手との対人戦はかなり今後の参考になる。


「なんだこの黒く焦げたような色の床は、、カニス、前も言ったけど試し撃ちはどっかの海でやれと、、おや、客人か?」


騎士団に女もいたんだな。さっきからずっと筋骨隆々の男しか見てなかったから安心した。綺麗な赤い髪と檸檬色の眼、かなり顔も整っているし、ヒロイン級なのでは?成人している俺と身長もあまり変わらないしスタイルもいい。


「フレイア団長、すいません。この男は例のダンジョンコアの停止の犯人でして」


その言い方だと俺めっちゃ悪者にならないか?あと団長!?この女の人が?!

いや別に男女差別したいわけじゃ無いんだが、副団長でさえあんなに苦戦したんだぞ?

この人がカニスより強いとは思えないが…


ギロッ


ほら睨んできてるよ?!早く変な誤解を解いてくれ!!


「魔王軍の特攻隊長、ラザノフとやらを討伐してくれた者なんですよ。」


「…なるほど?詳しく聞かせてもらおうか」


「それはカクカクシカジカ………でして」






「だいたい理解した。で、お前らはここでなにをしていたんだ?」


「試合です」


「なぜだ」


俺が聞きたい


「力比べです」


最初の爽やかイケメンという印象を返してくれ


「はぁ…カニスよ、なんでも力で物事の真偽を決めようとするな。そんなんじゃ団員のみんなもついていきづらくなるだろう」


静かに数人が頷く


「反省します……」


「とりあえず客間にでも行くとしよう、レオンだと言ったか?私も少し話したいことがあったんだ。」


「話したいこと…?」


「ついてこい、カニスがいると話がややこしくなるからここにいろ」


「はい…」








–応接室–



「単刀直入に聞く、レオン、お前は何者なんだ?」


「…何者と言われましても」


「D級冒険者に昇格したのもつい最近。カニスに勝利する強さを持っているのならA級にいてもおかしく無い。更には魔王軍の一般兵ならまだしも隊長クラスの討伐をしている。これでもまだ一般人とでも言い張るつもりか」


やりすぎたな完全に…カニスにラザノフのことを言及したのも間違いだし勝ってしまったのも間違いだとは…そうだ。なんか意味深なこと言おう。


「実はですね、俺は極秘でガルタナ王国を侵入して裏から守っているんですよ」


「…?もう少し具体的に頼む」


「俺はある団体の長で、王国のある人から頼まれてあらゆる敵対者から王国を守っているのです。」


「…」ジーッ


流石にぶっ飛んだ話すぎたか…?


「くくくっ、くはははは!」


絶対ヤバいやつだと思われてるー!


「あは、あははは」


「まさかこんな所でお会いできるとは、初めまして、フレイア=グウェン=アイラです。教祖様」


…?えっと、この世界では○○様とか敬称を形を変えて呼ぶのが流行ってるのかな?


「教祖様が創られた、“無血革命連合”の1人で4年前からこの地で団長を務めさせていただいております。」


なんか知らん設定ボンボン出してくるな…

無血革命連合?何その厨二チックな名前は。

でも好都合だ。このままいい感じに話を進めて捕まらない方向性に持っていこう。


「あぁ、君の噂はよく耳に入るよ。素晴らしい腕前だということもな。」


「はっ!まだ会長の残した功績の足元にも及びませんが、日々教祖様のために毎朝祈り、善い行いをした者を救い、着実に信者を増やしております故、これからも精進してまいります。」


新手の宗教か何かなのか?なんかこの人が心配になってきたぞ…?


「感謝する。お前の素晴らしい功績には何か褒美をやらないとな」


「我が騎士団も既に副団長のカニス以外は信者です。教祖様に会えたこと自体がご褒美でしょう。」


「あ、あぁ。そうか。あとひとつ聞きたいことがあるのだが、」


「はい?なんでしょうか。」


「私が無血革命連合を創設したのは間違いないのだが、私を崇拝しろというのは誰が言い出したんだ?」


「教祖様のお告げを聴いた方がおりますよね?その人が無血革命連合に入ったらその者は如何なる支配も受けない自由な存在となる代わりに、尊いお方である教祖様に心も体も捧げられる覚悟でいろと、、なので皆教祖様の事を自分よりも大切だと考え、日々生活しています。」


あぁ、かなり重症だ。頭の方が。


「ですので私がこのような機会を頂けるとは思いもよりませんでした。既に教祖様のお神子を産む準備は済んでおります。私の体を自由に」


「ちょっと待て!一旦その甲冑を脱ぐような素振りを止めてくれ」


「はい?」


なにさも当然かのように脱ごうとしているんだこいつは…ヤバい宗教にどっぷりハマってるな…でも今更教祖じゃありませんなんて言えないし…


「私は忙しい身でな、それはまたの機会にしてくれ。」


「あっ、、すいませんでした!教祖様の都合も考えずに勝手な行動を…これは死んで詫びるしか」


「よい!落ち着け」


「はい…教祖様はこのあとなにをされるのですか?」


「あぁ、まずは王国内で名を挙げて国民を信者に誘い、大国にしようと考えている。」


「これが教祖様の英知…今この場にいるだけで私の人生に一片の悔いもありません」


「では、私はこの辺で。」


「待っていただけませんか!名を挙げるのだとしたら私が冒険者ギルドに教祖様の冒険者としての階級をS、いやXにすることを直談判しましょうか?」


権力を間違った方向に使ってる!?


「それをしてなにを得るというのだ」


「え…?はっ!また私の勝手な判断で教祖様の考えを遮断してしまいました。つまりは教祖様はコツコツと信頼を積み上げて国民との仲を深め、皆に認められながら地位を上げるという計画をお考えなのですね!」


「え、あ、うん。その通りだ」


「どこまで心が清らかで、逞しく、聡明そうめいなお方なのでしょう…」


このあと中々抜け出せなく1時間ほど謎の話をされた。









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執筆するのが楽しすぎて気づいたら4.4K書いてありました。読んでる最中に目が疲れてきましたら是非何回かに分けてみてください!(遅い)

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