第2話 

 ◇ 昼の出来事



 昼の校舎裏。


 モーリスはある男と会っていた。

 同じ学園に通うモーリスの1学年上の従妹フレデリック・ガブリエルと。

 モーリスの父親の弟の息子だ。



 「どうしたんだ、モーリス? こんなところに呼び出して」


 フレデリックはモーリスにひけを取らない優秀な男だ。父親が貿易業を営む大富豪。


 頭脳明晰でスポーツ万能、しかし、モーリスと大きく違うとこは周りの人間すべてを自分の駒だと思っているところだ。

 ガブリエル家の力を使い、学園でも度々問題を起こす問題児。その度に莫大な裏金でもみ消してきた。



 「フレデリック……正直に答えてくれないか? 叔父さん……君の父上は敵国となにか取引をしていないか?」

 「……なんだモーリス? 何が言いたい?」

 フレデリックは胸ポケットから煙草を取り出し火をつける。

 


 「昨夜、一族の資産状況を確認していたんだ。その時気づいたのだが、叔父さんの貿易業の数字がおかしい。怪しい取引先と巨額のやり取りが隠されているようだ」

 「……それで?」

 「調べたらわかったよ。取引先は今、この国と冷戦中の敵国だ」

 「……」


 この国は今は冷戦中だ。一見、平和な国は現在非常に不安定な状態だった。



 「もし、叔父さんが敵国と怪しい取引でもしているなら見逃すことはできない。」

 モーリスはフレデリックを睨みつける。


 「……なんだよ? 怪しい取引ってのは?」

 フレデリックは大きく煙をふかす。


 「……僕が思うに……武器の輸出だろう……」

 「なるほどね……」


 フレデリックは煙草を捨て、靴底で踏みつぶす。


 「さすがだよ、モーリス」

 「まさか……本当に?」


 「ああ、ウチは武器の密輸をやっている」

 「どうしてそんなことを……許されないことだぞ?」


 「お前には分かんねぇだろうな。ガブリエル家は今はお前の親父、そして次はお前の時代になるだろう? ウチには……俺にはチャンスが来ねぇんだよ! 一回リセットしねぇといけねぇんだ」


 「なんてこと言うんだ! この国がどうなってもいいのか? お前たちの密輸する武器でこの国が滅ぼされるかもしれなんだぞ!」

 「ふふ……こっちとしてはその方が都合がいいんだよ……もう周りの国とは密約済みだ」


 「キサマ……」

 「モーリス、本当にお前は賢い男だな。誰も気づかなかった密輸をたった一人で暴くとは……このことはお前以外、誰か知ってるのか?」


 「……まだ僕だけだ……だが、もう終わりだ。お前たち責任を取らなくてはいけない」

 「そうか……お前だけか……ふふっ」


 フレデリックはモーリスに詰め寄る。



 「な、なんだ……うっ!」


 モーリスの胸にナイフが突き刺さる。


 「う……フレデリック……キサマ……」

 モーリスは倒れた。


 「……甘いんだよお前らは……ガブリエル家は俺たちのもんだ!」


 ◇

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